講演情報

[15-O-P108-02]ICT機器の導入および活用~業務の効率化、職員の負担軽減を目指して~

*羽賀 陽子1、森 悦子1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設グリーンビラ安江)
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人口減少の中、介護職は限られた人数で専門性の高い介護サービスを提供しなければならない。その一つとして介護現場におけるICT化が進められている。令和3年から7つの機器およびシステムを導入、使用前後を比較し、業務がどのように変化したか検証した。ICT機器導入後、業務の効率化が図れ、職員の負担軽減につなげることができたため報告した。
【はじめに】
人口減少の中、介護職は限られた人数で専門性の高い介護サービスを提供しなければならない。その一つとして介護現場におけるICT化が進められている。介護現場にICT機器を導入することで、業務効率を高められれば、職員の負担軽減につながり、質の高い介護サービスの提供が可能となる。当施設では、令和3年から7つのICT機器を導入。使用前後を比較し、業務効率がどのように変化したのか検証した。
【導入した機器及びシステム、導入前後の比較】
(1)全ベッドにベッド内臓型離床センサー(R3.3月)導入前は、マットセンサーのみ、56床に対し15台と数も限られていた。転倒リスクがある利用者を選定して設置していたが、センサー不足が生じていた。在庫数の管理も必要であった。導入後、全ベッドに離床センサーがあるため、必要な利用者全員に使用でき、起き上がり、端座位、離床と設定があるため、利用者に合わせた使用ができるようになった。在庫管理も不要。リスク管理がしやすくなり、優先順位もつけやすくなった。
(2)眠りスキャン(R3.3月3台、R6.3月12台)導入前は、2時間毎に利用者全員を訪室し巡視を行っていた。導入後、画面確認で睡眠や覚醒を把握できるため、巡視回数が減少。不要な訪室による負担を軽減、リスクのある利用者を優先することができた。看取りの利用者にも使用することで、心拍・呼吸が把握でき、アラート設定で状態を早期に知ることができるため、安心感もつくることができた。
(3)職員1人1台の携帯端末(R4.2月)導入前は、各階職員4~5人に対し、ナースコールが鳴るPHSが1~2台しかなかった。PHSを持っている人のみコール対応をしていたため、対応が遅れることがしばしばあった。導入後、職員全員が1人1台の携帯端末を所持、ナースコール連動しており全員で対応可能となった。
(4)見守りカメラ(R4.2月)導入前は、離床センサーがなったらすべて居室まで訪室し対応していた。導入後は、画像上で利用者の行動把握ができるため、訪室したほうがいい状態かを判断し対応できるようになった。不要な訪室による負担を軽減、リスクのある利用者を優先することができた。
(5)インカム(R4.2月)導入前は、用事がある職員を大声で呼んだり、いろいろな階に連絡して人を探すなど時間を要していた。導入後は、インカムで直接用事を伝えることができる。急変時の応援要請も容易となった。
(6)SLACK(チャットツール)(R4.2月)導入前は、各階で電話連絡した際に、不在で電話がつながらなかった場合、事務所に折り返しがあっても誰がかけたか分からず、いろいろな部署、階に確認する必要があった。議事録は各階に紙で回覧しサインを集めていた。職員への必要な伝達事項は、手書きの申し送りノート、口頭、メモで渡していた。アンケート類もすべて紙で実施し集計に時間を要していた。導入後、チャット項目に「電話連絡」を作成、誰が誰にかけたのか事務所が把握でき、すぐに担当者に取り次ぐことができるようになった。そのほか、項目に「総合業務連絡」「各階業務連絡」「議事録」「利用者ごと」「アンケート類」なども作成。携帯端末でいつでもどこでも閲覧でき、正確な情報をスムーズに伝達、共有できるようになった。アンケート集計も容易となった。
(7)HitomeQコネクト(R6.3月)利用者家族はLINEから、施設はWebから、連絡・面会などのコミュニケーションがとれる総合アプリ。導入前は、面会はすべて電話予約、家族連絡は電話対応。不在で電話が繋がらなかったり、折り返し電話のタイミングで担当者が受けられなかったり、コロナ渦で施設の感染対策ルールを頻繁に変更したため、その都度利用者家族一人一人に電話をかけて伝えるなど、かなりの時間を要していた。導入後、パソコン上で、面会予約、家族への一斉連絡、個別連絡、グループ分け連絡、文書送付が可能となった。電話対応時間の大幅な削減、業務の中断も解消できた。内容が残るためメモをとる必要がなく正確な情報が伝達できるようになった。
【考察】
(1)(2)(3)(4)の導入後、利用者の状態把握が容易となり、優先順位の明確化、統一ができるようになった。(5)(6)(7)の導入後、連絡・伝達・情報共有がスムーズになり、より効率的な業務が行えるようになった。そして、業務の効率化が図れ、職員の身体的、心理的負担軽減につなげることができた。これにより生まれた時間で、より利用者に向き合う時間を増やし、介護力を向上していきたい。