講演情報

[15-O-P108-03]多職種で効率よく情報を共有したい!~申し送り機能を活用して~

*島津 健太1、安田 恵理1 (1. 愛知県 老人保健施設 ヴィラかわな)
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当施設では以前から電子カルテを導入しているが、現場では個々の入所者のカルテを確認する時間が十分に取れないため申し送りは口頭で行われていた。その場合、情報が均一化されず、更には全スタッフへ周知する時間の確保が難しいことが問題となっていた。今回、新たに電子カルテの申し送り機能を使用し、記録方法を統一化することで全スタッフに短時間で同じように情報が共有出来るようになった取り組みについて報告する。
「はじめに」
まず当施設は名古屋市内にある病院併設で36床の超強化型施設となっており、在宅復帰にも力を入れているため回転率は常に10%前後を維持しています。病院併設ということもあり、医療依存度の比較的高い入所者も多く最新の情報を共有していくことが課題となっていました。

「目的」
介護現場における申し送りとは、業務を次の担当者に引き継ぐため、必要な情報を共有することです。スタッフ間によって情報内容に差があると、医療事故や介護事故が発生するリスクが高まったり、利用者・家族からの信頼性が低下したりする恐れがあります。確実な申し送りにより施設として一貫性のあるサービスを提供する目的として今回、申し送り機能を使用する事になりました。
当施設では看護師リーダーが情報を収集し、多職種が時間に集まり口頭での申し送りを続けていました。口頭での申し送りでのメリットはその場にいるスタッフ間ですぐに情報共有ができ、不明な点があれば、その場で質問を解消できたりします。
デメリットとしては、申し送りのために、リーダーは事前に要点をまとめておく必要性があり、申し送るスタッフのスキルや情報伝達能力の差によって必要な情報が埋もれてしまう可能性がありました。また申し送りに時間がかかり、業務に支障や遅延が発生することや、伝えるべき情報が申し送り切れないこと、勤務時間がさまざまなため、聞くことが出来るスタッフと、聞くことが出来ないスタッフで情報の把握に差が出てしまうことなどが問題となっていました。
このデメリットを解消するために申し送りや情報収集をスムーズに行えるよう、多職種間で一括に情報共有できる方法を考えました。

「方法」
電子カルテ内に各スタッフが申し送りたいことを記録する際、全職種ともタイトルを「申し送り」とし、一括出力機能(ワード検索:申し送り)を使用することで、多職種が個々の入所者情報について共有したい情報をまとめて出力することが出来る機能を使用しました。出力後は紙に印刷し、3フロアー毎に申し送りファイルを作成し印刷したものをファイリングすることで、どの職種のスタッフも時間や場所を問わず自由に閲覧出来る方法を取りました。
さらにこのシステムを使用するにあたり申し送りで伝えるべき内容というものを施設全体で見直すことになりました。
申し送りの際に意見・憶測といった個人的感情を辞め、伝える目的を明確にすること、5W1Hを意識して漏れの無い情報を整理し発信するように統一しました
。スタッフの文章力の差を埋めるため、テンプレートとしてSOAP方式による記録入力を開始しました。
SOAPの特徴として単に情報のみを記録していくのではなく、対象者の問題点を抽出し「S:主観的情報 O:客観的情報 A:評価 P:計画」の4つの項目にそって記載していく点にあります。SOAPを用いる事で、対象者の抱える問題点や、治療、介護を展開していくプロセスが明確となり、チームにおける情報共有もスムーズに行えるのではないかと考えました。

「結果」
結果として短時間で利用者の情報を正確・簡潔にすべてのスタッフに同じように情報の共有が出来るようになりました。その日にあった内容だけでなく、長期的な視点を持った情報の共有や、さかのぼった情報も必要性のある物だけがピックアップされ、スタッフが休んでいた間に起こった経緯や過程などを確認することが可能となりました。
また口頭での申し送りに有した時間が15分程度半減しました。
さらに以前では職員によって主観的な感想が多く含まれており、公的文書という観点からも不適切な部分が多くありましたが、SOAP方式を取り入れた事で情報にバラつきがなくなり情報共有の効率化を図る事ができました。今までは書く内容が頭に浮かんでいても文章にするのが苦手な職員は一定数いましたが、記録方法を統一することによって介護記録に苦手意識のある職員が減少しました。
申し送りファイルを活用し情報収集を行うことや、記録の統一化によって多くのスタッフが業務の効率化を実感することができ残業の削減にも繋がりました。

「考察」
生産性向上推進加算により介護現場でもICT化が必要になる時代になってきております。ICTを活用し、情報がデジタル管理されることで情報やデータ連携も促進され、ヒューマンエラーの削減や利用者に対するケアの質も向上できます。今後も定期的な介護記録の勉強会や、記録をする場所に例文を添えておく等の工夫で、少しでも介護記録への苦手意識を減らす取り組みを行い、多職種間で協議していきたいと思います。
ICTを上手く活用していくためには、最新を取り入れながらも施設や現場に合わせて活用方法を検討していく必要があると感じました。