講演情報

[15-O-P108-04]モニタリングから生産性向上への取り組み

*井上 尭之1、山本 圭剛1 (1. 奈良県 医療法人鴻池会介護老人保健施設 鴻池荘 サテライト蜻蛉)
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モニタリングに対する知識不足や多職種と情報共有する機会が少なかった為、厚生労働省の生産性向上のガイドラインに沿ってチームケアの質の向上として終礼時に課題の振返りや記録による多職種との情報共有の効率化、モニタリングついての学習などを行い人材育成の取り組みを行った。結果、モニタリングを理解し情報共有、人材育成する機会が増え生産性向上に繋がった結果を報告する。
はじめに】
当施設はサテライト型小規模介護老人保健施設であり、全29床のユニットケア施設である。厚生労働省(1)における生産性向上の推進に基づいて、当施設は取り組みを行っている。取り組む意義としてチームケアの質向上、情報共有の効率化、人材育成であると述べられている。この3点に着目し、業務改善を通してPDCAサイクルの手順に基づき対策を実施した。
【課題】
チームケアに対する課題として担当CWが利用者の状態に応じてケアプランの変更や追加が行われておらずケアプランに対するモニタリングが出来ていない。担当CWが毎月モニタリングする事となっているが、モニタリングの入力が20件中6件である。
情報共有の課題として、介護間での話し合いや利用者の状態変化や能力低下時に実施出来ていないケアプランに対する見直しが多職種と話し合いする機会が少なく専門職による意見を基にケアプランの変更が不十分である。
人材育成の課題としてモニタリングを理解や知識不足がある。モニタリングの記載内容がケアプランに対するモニタリングでない。
モニタリングについての知識不足のムリ、本人の状態や能力に応じたサービス提供が出来ていないムダ、職員によってモニタリグンの記載内容のムラの課題が挙げられた。
【目標設定】
モニタリングを理解し必要な知識と技術を向上し毎月のモニタリングを担当CW全員が出来るようになる。担当CWが多職種と情報共有を行いケアプランの見直しが行える。
【原因究明】
フィッシュボーンチャート分析ツールを使い、職員間でモニタリング件数を基に意見を出しあった。結果知識、時間、システム、相談連携の4つの要因に分類された。分類した中から、システム、相談連携、知識不足〈人材育成〉の要因が重要なものと話合い決定し、そこから3つの対策を考えた。
【対策・実施】
〈システム〉月一回のユニットミーティング時に評価中や見直しを行ったケアプランについて話し合い記録に残す。モニタリングの入力が出来ているかのチェックは職員2人1組となりチェックシートを作成しお互いが入力できているか確認する。チェックシートを詰所へ掲示と評価中のケアプランをホワイトボードへ記載し情報共有の仕方を工夫する。モニタリングの入力後はユニットリーダーに確認を依頼する。
〈相談連携〉職員間でケアプランの実施状況やその日の利用者の様子に応じて関わったケアについて毎日の終礼時に時間を設けて話し合いを行う。また、利用者の状態に応じたケアプラン変更、見直しが必要な場合はユニットリーダーから多職種が終礼に参加出来るように調整する。
〈知識〉ユニットミーティング時に事例を通して経過記録やモニタリングについて学習する場や終礼時にケアプラン実施を振り返りと経過記録の入力についてユニットリーダーから指導する。
【結果】
〈システム〉月一回のユニットミーティング時に話し合いを行った結果、ケアプランについて経過記録を残す事が出来るようになり、それを基にモニタリングを入力出来るようになった。2人1組となりチェックシートを活用し見える化となりモニタリングの入力の定着化に繋がり担当CWが毎月のモニタリングを全員出来るようになった。
〈相談連携〉ユニットミーティング時や終礼時に介護間や多職種と話し合いする機会が増えた結果、ケアプランついての情報共有が円滑になり利用の状態に応じたケアプランの変更や見直しを出来るようになった。ミーティングでの意見交換が増え、利用者の日課に楽しみとして音楽鑑賞や食器洗いの役割等のケアプランが変更、追加された。
〈知識〉ユニットリーダーよりモニタリングについて学習する場を設けた結果、職員がモニタリングの必要性を理解し、知識を習得する事ができ、ケアプランの質が向上し日々からモニタリング内容が目標に対する内容に変化した。利用者の状態に応じたケアプランの変更や追加ができるようになった。また、モニタリング内容がケアプランについて入力できるようになった。
以上の事をチームで取り組んだ結果、モニタリングのムリ、ムダ、ムラが改善され業務改善に繋がり意見が出やすい職場環境になった。
【考察】
 厚生労働省(1)における業務の改善活動の取組みを行う事で「チームケアの質の向上」「情報共有の効率化」「人材育成」の意義を高める事で生産性向上に繋がると述べられている。
 今回の取組みでは、チームケアとして利用者のケアプランの変更や追加が出来ていないという課題があったが、チームとして話し合いや意見が出やすい環境作りをした結果、ケアプランについての経過記録が増え、モニタリングが全員入力出来るようになった。このことがチームケアの質向上に繋がったと考える。
情報共有として介護間や多職種とケアプランや利用者の状態について話し合う機会が少ないという課題があったが終礼時に時間を設けて話し合いを行う事で介護間や多職種と話し合いする機会が増えた。その事で、ケアプランの変更や見直し意見交換が増え情報共有の効率化に繋がったと考える。
モニタリングについて理解や知識不足の課題があったが、ユニットリーダーからのOJTを活用した指導を続ける中でケアプランについて経過記録を基にモニタリング出来るようになり、職員の知識と技術が向上した。
現在も更に理解を深める事が出来るように継続と改善を行っている。

参考資料
(1)厚生労働省老健局 令和5年 生産性向上セミナーより「介護現場における生産性向上について」