講演情報

[15-O-P108-05]「回診式リハ会議」リハマネ加算全例取得に向けて

*寺内 景1 (1. 栃木県 介護老人保健施設やすらぎの里八州苑)
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リハマネ加算を算定する上で、医師が直接かかわる事例を増やしていくことは重要である。一方で、要件となるリハ会議の負担は大きく、定員が増えるほど顕著となる。そこでわれわれは、医師を含めた施設スタッフが利用者のもとへ行く「回診方式」のリハ会議を行った。その結果、リハ会議自体に必要な時間を大きく短縮することができた。現在は全例に医師が直接説明することによる加算の算定が可能となり、有効な取り組みと考えた。
【はじめに】
 リハビリテーションマネジメント(以下、リハマネ)加算は、2015年の介護報酬改定時にIとIIに分けられ他職種共同のリハビリ会議と医師の説明が評価されることとなった。2018年の改定では、同加算はI、II、III、IVに細分化され医師がリハビリ内容の説明を行う従来の加算IIがそれぞれII、III、IVに分けられた。さらに2021年の改定では、加算Iは廃止され、医師が間接的に説明に関与する加算Aと、直接説明を行う加算Bの2つに大まかに二分された。そして、今回の2024年の改定においては、医師の説明については基本区分から分かれ、加算(イ)、(ロ)、(ハ)の所定単位数に対して医師が直接説明を行えば270単位が加わることとなった。
 この10年弱の改定の歴史の中で、経営状況を改善させるために医師が直接説明を行う加算を算定する事業所は徐々に増加してきていると思われるが、直近の調査でも半数以上が算定できていない。リハマネ加算を算定するにあたって不可欠なリハ会議は、利用者及び家族、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアマネ、介護職及び看護師等がリハビリに関する情報の共有や支援方針の協議を行う場であるが、実際の現場では全員が参加して情報共有することは不可能に近い。現実的には限られたスタッフで会議を行うこととなるが、それでも毎回医師が参加し、リハ計画書の説明・同意をする時間を設けるのは容易ではない。これは通所リハの利用者が増加するほど困難となり、すべての老健が抱える問題ではないだろうか。そこで、当施設では従来のそれぞれのスタッフが会議室に集まって行う方式でなく、医師を中心とした回診方式のリハ会議を今年度より導入した。取り組みの内容に考察を加え報告する。

【方法】
 1)リハ会議に出席する利用者とケアマネ(1日6-8件程度)は、会議開始時間前に機能訓練室などの大きなスペースに待機する。
 2)医師を含む会議に参加する施設側のメンバーは会議開始時間に集合し、それぞれの利用者のもとを回って3-5分程度のスタンディングミーティング形式(利用者および家族は着座)で会議を行う。

【結果】
 1日6-8件程度を前提とすると、従来の形式での会議で1時間半~2時間ほどかかっていたところ、回診方式であれば30-40分程度で終了することができた。また、あらかじめある程度時間を決めることで議論に集中することができ、方針も明確となることが多かった。加えて、機能訓練室などを利用して会議を行ったため実際の利用者の動作などの確認もその場で確認することができた。

【考察】
 リハマネ加算は、通所リハビリ事業所の経営状況を大きく左右する重要な加算であると同時に、算定に必須となるリハ会議が大きな負担となってくる。当施設においても、従前の方式におけるリハ会議では1件に対して30分以上かかってしまうこともあり、最終的に数時間という大きな時間を費やしていた。スタッフの負担となるだけでなく、待機する利用者の負担も大きく不満につながっていた。加えて、会議時間が長くなることで内容も不明瞭となり生産的な会議でなくなってしまうこともしばしばみられた。また、医師が現場に来ることができない場合はICTを用いた会議を行う場合もあったが、準備の煩雑さに加えお互いの時間をそろえなくてはならないというハードルが大きく、負担の軽減には全く寄与していなかった。結果として全例に対してリハ会議を行うことは物理的に難しく、対象を絞って行わざるを得なかった。
 今回の「回診式」のリハ会議では、会議時間の大きな短縮だけでなくスタッフから能動的に動くことで利用者の出入りの時間が無く全体の時間圧縮に大きく寄与していた。また、方針が迅速かつ明確に決まることが多いだけでなく、出席するケアマネも待機時間が少なく、特に他事業所から出席する場合に出席しやすいという声が多く寄せられた。当施設は定員80名と比較的おおきな規模の通所リハビリ事業所であるが、現在は全例に医師が直接説明するリハ会議を行うことができている。
 しかしながら、まったく課題が無いわけではない。特に「会話」自体が会議の主目的となっていた利用者は、あらかじめ会議の時間が短めに設定されていることで「物足りない」と感じ不満を訴えるものもいた。この問題に対しては、この回診式リハ会議を開始後に解決すべく事前に利用者からの訴えを別のスタッフが収集するという方法で、一定の解決が得られている。一方で、この「事前情報の収集」という負担がスタッフに新たに発生するという問題は抱えている。さらに留意すべきは、大きなスペースで代わる代わる利用者と話しをするため、個人情報が漏洩しないよう心掛ける必要があるということである。また、従来型の会議同様に、利用者の体調不良や医師の緊急の用事などで会議がキャンセルとなった場合の再調整は困難であることは変わりがない。件数が多くなった現在、会議に出席するメンバーのスケジュールを改めて調整することができるスタッフはごくわずかである。
 上述のような課題は残されているものの、リハマネ加算は通所リハビリ事業所の根幹を形成する重要な加算であり、今後も修正を重ねながら今回の取り組みを継続していく予定である。近年、年度を重ねるごとに老健の経営状況がひっ迫しており、当該加算だけでなく新たに新設された加算についても取得率を上げていくよう努力していきたい。