講演情報

[15-O-P109-02]入浴開始時刻を早めるための取り組み利用者の送迎車中での待機時間を無くそう

*伊藤 高江1 (1. 愛知県 社会医療法人大雄会老人保健施設アウン)
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送迎車が施設到着後、利用者が降車するまでに待機時間が生じている点に着目し、施設到着後は時間のロス無く入浴できることを目的に、業務改善に取り組んだ件について報告する。1か所で行っていた降車を2か所で行うことにした結果、利用者の車中での待機時間、浴室での待機時間が短縮でき、利用者の活動時間を増やすことに繋がった。
【はじめに】
 当施設の通所リハビリでは午前に入浴とリハビリを提供する日課となっている。全利用者が午前中に入浴するが、送迎業務に時間を要し、なかなか入浴業務に入れないという現状があった。この現状は利用者の不満となり、入浴後の活動にも影響を及ぼしていた。このとこから、少しでも入浴開始時刻を早められないだろうかという思いから、朝の送迎業務において調査したところ、送迎車が施設に到着し、利用者が降車するまでの間に待機時間が生じていることが分かった。時に待機中の車中の利用者からは、「まだ降りれんのか」「風呂が遅くなる」といった不満の声があったが、スタッフは「仕方がない」「こんなもんだろう」と漫然としていた。同時期に人員配置の見直しによるスタッフの削減もあり、毎日のように日課が慌ただしくなっており、これではいけないと危機感を感じ、部署のスタッフに改善を提案した。
 送迎車が施設到着後、利用者が降車するまでに待機時間が生じている点に着目し、施設到着後は時間のロス無く入浴できることを目的に、業務改善に取り組んだ結果をここに報告する。
【背景】
 当施設は、愛知県一宮市にある老人保健施設併設の通所リハビリである。利用者定員85名、月曜日から土曜日まで、40名から65名の方が利用されている。送迎車はマイクロバスを含め8台を保有しており、利用者人数に応じて稼働している。
 利用者は、施設内2か所のデイケア棟(以下、デイ棟)、本館内デイルームで過ごすことができる。
 送迎車の施設到着時は、1か所に2台までの降車場所で降車をしている。そのため、8台の送迎車が次々と到着し、降車を待つ送迎車が約3台待機している状態であった。
 今回、送迎車が施設の敷地内に入ってから利用者が降り始めるまでの時間の調査では、1日3台の車内待機が生じ、1台平均7分、最長で約10分間であった。
 送迎スタッフは利用者の降車介助を含めた送迎業務を終わらせてから入浴業務に入るため、送迎業務がスムーズいかないことにより、次の入浴業務に入るまでに時間を要し、入浴開始時刻が遅れ、利用者の不満、入浴後の活動にも影響を及ぼしていた。
【要因】
 ハード面:送迎車の降車場所が1か所である
 ソフト面:スタッフの認識の甘さによる利用者の車中待機の常態化
【方法】
  利用者が安全にスムーズに降車できるよう、降車場所を2か所にした。
(場所)従来の降車場所であるデイ棟に加え、老健の正面玄関(以下、正面玄関)も降車場所とした。雨の日の対策として、ドライバーが軒下にスムーズに停車できるよう、テープを貼って目印とした。
(スタッフ)到着された利用者を受け入れるための待機スタッフ3名をデイ棟と正面玄関のそれぞれに配置し、送迎車に同乗していたスタッフと共に、到着した利用者の降車介助を行うこととした。利用者降車後は、それぞれの降車場所に近いフロアへ利用者を案内することとした。
 ドライバーにも降車方法、対策開始日時等を伝え、協力を得た。
 事務課にも出入り業者の車の停車位置や面会者の出入りへの配慮等、正面玄関を降車場所にした弊害、リスクにも対応した。
(送迎表)毎日スタッフが送迎時に使用している「送迎表」には車の名称の前に印を付け、降車場所を分かり易くした。
 送迎表の印をもとに、車椅子等、必要な福祉用具を事前に準備することとした。
(利用者)2か所で降車する旨とその理由を説明し、協力を得た。
【結果・効果】
                    対策前       対策後
 車中待機時間(1日3台の1台平均) :  平均7分   →  平均2分 

 対策実施により、降車を待つ送迎車が列を成すことは無くなり、利用者の車中での待機時間は短縮できた。が、早く到着した送迎車のスタッフが入浴は開始しており、利用者が降車後、施設内に入ってから入浴開始するまでの時間は変わらなかった。
 しかし、降車時の車内待機時間が短縮できたことは、遅く到着した送迎車のスタッフが、その後の入浴介助に早く入れることになり、その結果、利用者の施設到着後の時間のロスの軽減となった。
 利用者の反応としては、「お風呂に近い場所で降りられて嬉しい」「今までの部屋に着かないと落ち着かない」利用者もあった。利用者の環境変化による不安への対応が不十分であった。
 今回の取り組みの無形効果としては、日々の業務を漫然と行っていたスタッフの意識変化があった。運転スタッフ、送迎介助スタッフ、待機スタッフ、ケアリーダー、入浴担当スタッフなど、それぞれの役割から意見を出し合うことができ、協力し合う風土ができた。
【考察】
 今回の取り組みでは、施設到着後の利用者の降車が安全にスムーズになった事で、降車介助を終えたスタッフが早く入浴業務に入ることができ、入浴の早い段階での人手が増えた。入浴開始時刻に目を向けた取り組みだったが、車中での待機時間が減少したことにより、浴室での待機時間が減少し、入浴のスムーズな稼働に繋がり、結果的には、利用者の活動時間を増やすことに繋がった。
 利用者から不満の声が聞かれなくなったことは、いい結果となったが、環境の変化による不安への対応、配慮に欠けていたことは課題である。
 また、日々漫然と業務をしている中で、利用者ファーストの視点で、業務改善に取り組むことは、スタッフのやりがいにもつながると考える。
【まとめ】
 この度、現状から危機感を感じ、入浴開始時刻を早める目的で待機時間の短縮に取り組んだ。部署のスタッフがそれぞれの役割から意見を出し合い、改善に向けて取り組むことができた。
 今後も、利用者の充実した活動に向けて、利用者ファーストでスタッフ間で積極的に業務改善を行い、より良いサービスを提供していきたい。