講演情報
[15-O-P109-07]情報共有システムの内製化とその効果デジタル改善を通じた生産性の向上
*芋生 雅也1、後藤 善之1、阿南 英治2 (1. 大分県 介護老人保健施設 ヴァル・ド・グラスくじゅう、2. 社会医療法人社団 大久保病院、3. 社会医療法人社団 大久保病院)
デジタル技術を業務改善や新サービスの創出に活用する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が、医療介護分野でも多様な課題を改善する手段として注目されつつある。当法人では20年前から医療介護情報のデジタル化を進めると共に、基幹システムを補完するシステムの内製化を進めてきた。この20年間を振り返りつつ、内製化のメリット、デメリットについて考察し、生産性の向上を目標としたこれからの展望を述べる。
【はじめに】
昨今、デジタル技術を業務改善や新サービスの創出に活用する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が様々な分野、企業、サービスで進んでいる。医療介護分野でも人員不足、業務効率化、サービスの質の向上、ワークライフバランスといった多様な課題を改善する手段として注目され、令和6年度介護報酬改定では「生産性の向上」というキーワードが掲げられた。医療介護情報を扱うデジタルシステムはレセプトやオーダリング、電子カルテシステムが約20年ほど前から普及し、現在では多くの介護施設でもデジタル化された患者・入所者情報をもとに様々なサービスを展開し、医療介護の質の改善に貢献している。その反面、既存メーカーのシステムは画一的かつ保守的で日々変化し新たな機能を欲する現場とのシステム運用ギャップが課題として存在している。それらを補うため表計算ソフト等を活用した柔軟ではあるが非効率かつセキュリティ的に脆弱な運用体制は多くの施設にとって悩みの種であると推測する。おりしも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による急速な社会変化により、医療介護現場も新たな職務遂行、サービス提供を模索しなければならなくなった2020年初頭。急激に変化し続ける制度やルール、増え続ける情報のもと、従来の手法では適応しきれなくなった現場を支える為、スピード感と効率性、安全性を兼ね備えた情報管理・共有の仕組みの構築が急務とされた。
【システム内製化】
当施設は母体となる大久保病院の電子カルテシステムと連携する介護記録システムを日々活用している。20年前からそれを補完する仕組みとして「ファイルメーカー」というシステム開発ツールを用いて独自の情報共有システムの開発・運用を継続している。現在は、医療介護系グループ「UnitDr(入所・通所サービス業務支援、生理検査レポート、手術管理台帳、主治医意見書作成支援、褥瘡写真管理等の約30のアプリ)」と、業務系グループ「MyHome(職員研修システムまなび、オンライン面会予約管理、物品購入管理、稟議書管理、コロナ・インフルエンザワクチン接種予約管理、職員健康チェックシート、職員健診予約管理、業務連絡掲示板等の約40のアプリ)」が稼働中である。
【「職員健康チェックシート」について】
コロナ禍においては職員の検温と健康状態の把握が必要となり、その情報収集と管理方法を模索した。当初の紙媒体での運用は、記録忘れ、管理者がタイムリーな情報を把握しにくい、情報の一元管理や可視化が困難などの理由によりデジタルシステムでの運用を望む声が多く聞かれた。感染対策委員会や医療介護現場の意見を取り入れながらシステムの内製化を進めたことで、リアルタイムの情報収集、自動グラフ化による可視化、職員の入力負担減や情報の一元管理に役立てることができた。また患者・入所者の体温状況マップも内製化し、病棟での感染状況の把握、クラスタ解除シミレーション等に効果をもたらした。
【まとめ】
デジタルシステムの内製化は昨今のDXに後押しされる形で様々な分野、企業で急速に浸透しつつある。医療介護分野ではシステム導入や開発・保守を外部メーカーに大きく依存する状態が見受けられるが、社会におけるデジタル化のニーズを考慮すれば今後、医療介護分野においても内製化は遅かれ早かれ進んでいくものと予測される。当法人では20年前から医療介護情報のデジタル化を進めると共に、基幹システムを補完するシステムの内製化を進めてきた。この20年間を振り返りつつ、内製化がもたらすメリット、デメリットについて考察し、これからの展望を述べる。
昨今、デジタル技術を業務改善や新サービスの創出に活用する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が様々な分野、企業、サービスで進んでいる。医療介護分野でも人員不足、業務効率化、サービスの質の向上、ワークライフバランスといった多様な課題を改善する手段として注目され、令和6年度介護報酬改定では「生産性の向上」というキーワードが掲げられた。医療介護情報を扱うデジタルシステムはレセプトやオーダリング、電子カルテシステムが約20年ほど前から普及し、現在では多くの介護施設でもデジタル化された患者・入所者情報をもとに様々なサービスを展開し、医療介護の質の改善に貢献している。その反面、既存メーカーのシステムは画一的かつ保守的で日々変化し新たな機能を欲する現場とのシステム運用ギャップが課題として存在している。それらを補うため表計算ソフト等を活用した柔軟ではあるが非効率かつセキュリティ的に脆弱な運用体制は多くの施設にとって悩みの種であると推測する。おりしも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による急速な社会変化により、医療介護現場も新たな職務遂行、サービス提供を模索しなければならなくなった2020年初頭。急激に変化し続ける制度やルール、増え続ける情報のもと、従来の手法では適応しきれなくなった現場を支える為、スピード感と効率性、安全性を兼ね備えた情報管理・共有の仕組みの構築が急務とされた。
【システム内製化】
当施設は母体となる大久保病院の電子カルテシステムと連携する介護記録システムを日々活用している。20年前からそれを補完する仕組みとして「ファイルメーカー」というシステム開発ツールを用いて独自の情報共有システムの開発・運用を継続している。現在は、医療介護系グループ「UnitDr(入所・通所サービス業務支援、生理検査レポート、手術管理台帳、主治医意見書作成支援、褥瘡写真管理等の約30のアプリ)」と、業務系グループ「MyHome(職員研修システムまなび、オンライン面会予約管理、物品購入管理、稟議書管理、コロナ・インフルエンザワクチン接種予約管理、職員健康チェックシート、職員健診予約管理、業務連絡掲示板等の約40のアプリ)」が稼働中である。
【「職員健康チェックシート」について】
コロナ禍においては職員の検温と健康状態の把握が必要となり、その情報収集と管理方法を模索した。当初の紙媒体での運用は、記録忘れ、管理者がタイムリーな情報を把握しにくい、情報の一元管理や可視化が困難などの理由によりデジタルシステムでの運用を望む声が多く聞かれた。感染対策委員会や医療介護現場の意見を取り入れながらシステムの内製化を進めたことで、リアルタイムの情報収集、自動グラフ化による可視化、職員の入力負担減や情報の一元管理に役立てることができた。また患者・入所者の体温状況マップも内製化し、病棟での感染状況の把握、クラスタ解除シミレーション等に効果をもたらした。
【まとめ】
デジタルシステムの内製化は昨今のDXに後押しされる形で様々な分野、企業で急速に浸透しつつある。医療介護分野ではシステム導入や開発・保守を外部メーカーに大きく依存する状態が見受けられるが、社会におけるデジタル化のニーズを考慮すれば今後、医療介護分野においても内製化は遅かれ早かれ進んでいくものと予測される。当法人では20年前から医療介護情報のデジタル化を進めると共に、基幹システムを補完するシステムの内製化を進めてきた。この20年間を振り返りつつ、内製化がもたらすメリット、デメリットについて考察し、これからの展望を述べる。