講演情報

[15-O-F001-04]利用者の余暇時間の充実 笑顔溢れる生活へ

*舩橋 純哉1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設あいかわ)
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「余暇時間」を活気なく過ごされている利用者を見受けたため、余暇時間を充実させ施設生活を楽しく過ごしてもらえるよう取り組んだので報告する。利用者にアンケートを行い、カラオケの回数増加、将棋。オセロなどのゲームと書籍の充実、利用者による野菜作り、花育てなど利用者自身でやりたいことを選択できるように環境を整えた。その結果、笑顔が増え満足を得ることができた。また、利用者同士の交流も増えQOL向上に繋がった。
「はじめに」 
 介護老人保健施設あいかわは岐阜県不破郡垂井町にあり、入所定員70名、通所定員40名の施設です。療養棟は2階44名、3階26名の利用者を定数としている。2階は、医療依存度が高い方、認知症が強く自身で行動する方、意思決定が困難な方、介護度が高く見守りが必要な方が多い。3階は、認知症が軽い方や年相応の方、安全には配慮が必要だがADLはほぼ自立している方が多く入所されている。今回の取り組みは3階の利用者を対象に行った。
「目的」
 職員が提供するレクリエーションや月1回行っているあいかわカフェの時間には笑顔が見られ楽しまれている。しかし、それらの時間以外は、ホールでぼんやりテレビを観ていたり傾眠されていたりと、活気なく過ごされているのをよく見かける。職員に利用者の様子を聞いてみると「利用者が『何もする事がなくて暇だ』と言っていた」、「3階の人はADL・認知レベルがよいのに他者との交流が少ない」などの意見が聞かれた。また、利用者に「余暇を楽しく過ごせているか?」などのアンケートを取ったところ、大半が「楽しく過ごせていない」との回答だった。この結果から、利用者・職員目線からも施設の生活に満足できていないことがわかった。そこで、余暇の時間を充実させ、施設生活を楽しく過ごしてもらえるよう環境を整える必要があると考え、今回の取り組みを行った。
「方法」
1)利用者に「余暇に何をしたいか」アンケートを実施。次のような意見が挙がった。
(1)カラオケがもっとしたい、歌が上手くなりたい。
(2)将棋やオセロがしたい。
(3)もっと色々な本が読みたい。
(4)野菜や花を育てたい。
2)アンケート結果を受け、利用者の要望に沿って取り組みを行った。
(1)月0~1回と不定期で行なわれていたカラオケを、隔週土曜日に行うこととした。月2回以上のカラオケが確保されとても喜ばれている。
(2)将棋・オセロ・トランプを購入し用意した。職員が居なくても利用者が自ら準備して楽しんでいる姿を見かける。また、職員が自宅で使用しなくなったピアノを寄付し設置したことで、時折、利用者が弾かれている姿を見かけるようになった。
(3)職員に本の寄付を募り、施設からも週刊誌を毎月2冊購入して、本の種類と冊数を増やした。また、車椅子の方には本が取りにくい位置にあったため、取り出しやすい高さの本棚を用意した。使用されていない施設備品を活用し車椅子使用者・歩行者のどちらにも取り出しやすいものとなった。
(4)利用者と野菜を栽培し、プランターで花を育てた。小松菜と二十日大根の種蒔きから収穫までを行った。畑仕事に詳しい方がおり、種の蒔き方や水を与える量など細かく職員に指導してくださり、久しぶりの土いじりをとても楽しんで行っていた。収穫時には少し小さい二十日大根に歓声と笑いが起きた。現在も継続して野菜栽培を行っており、ミニトマト・インゲン豆を育てている。また、季節の花を植えた。冬にはパンジー、ビオラ、葉牡丹など、現在は、ペチュニア、ひまわり、アサガオなどを育てている。積極的に水やり・草取りをされ、収穫を楽しみに待たれている。
3)職員からの意見として、「皆が集まるホールに食席以外のテーブル・椅子がなく、落ち着いて会話するスペースがないため利用者同士の交流が少ないのではないか?」という意見が挙げられた。そこで、ホールの奥の方に会話スペースを用意し、外の景色が眺められるようにソファーを設置した。緑豊かな外の景色を眺めながら利用者同士で楽しそうに会話をされている。
「結果」
 取り組み後、再び、「余暇を楽しく過ごせているか?」アンケートを実施したところ、「余暇を楽しめている」との回答が取り組み前より倍増し、「毎日が楽しくなった」、「久しぶりに畑仕事ができて楽しかった」などの声が聞かれた。また、カラオケや将棋・オセロ・トランプといった遊びやゲームを通じて以前よりも利用者同士の交流も増えている。利用者の希望に沿った対策ができたことで、利用者に笑顔が増え満足を得ることができた。さらにQOLの向上にも繋がる結果となった。
「考察」
 職員は、レクリエーションを様々な工夫をして提供してきたが、余暇時間の過ごし方や環境にまでは配慮が行き届いていなかったことに気付かされた。今回の取り組みを通じて、利用者の想いに寄り添い、利用者中心の介護に立ち返るきっかけとなった。
 今後の課題として、ホールのレイアウトを変更したが、あまり使用されることはなく自席で過ごされる方が多くいた。会話スペースに季節感のある装飾などをし、興味を持って自然に楽しめる場となるように工夫をしていく。余暇の過ごし方は自由である。これからも利用者が何を求めているのかアンケートを実施し、余暇時間の過ごし方を自身で選択できるような環境に整えていく。また、実現可能なことは積極的に実施し、「施設での生活が楽しい」という声が今より1人でも増えるように職員間で協力し取り組んでいく。