講演情報
[15-O-F001-05]集団体操を通した利用者の状態向上に向けた取り組み
*阪上 弘晃1、玉城 裕子1 (1. 兵庫県 介護老人保健施設ウエルハウス清和台、2. 介護老人保健施設ウエルハウス清和台)
集団体操を行う事でコミュニケーションを取る機会が増え、意欲向上し食欲の改善が見られたので報告する。昼食前に集団体操と嚥下体操を実施し昼食の自力摂取状況や食事量観察を行う。結果、食事への関心を持つ方が増えた事と体操を楽しみに待つ方が増えた。人とのコミュニケーションを取る事で意欲向上が得られ、また嚥下体操を行う事で唾液が分泌され嚥下しやすい状態が出来、自力摂取 量が増えた事に繋がったと考えられる。
【はじめに】
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う感染対策により、利用者に十分な活動を提供する事が難しくなった。その影響で意欲低下、食欲の低下が目立つようになった。しかし、新型コロナウイルス感染症は、5類感染症となり当施設でも徐々に行事やレクリエーションが行えるようになった。マスク着用や換気など感染対策を行いつつ、以前のように昼食前に 集団体操と嚥下体操を行う事にした。その結果、利用者と職員が一緒になって体操を行う事でコミュニケーションを取る機会が増え、意欲向上し食欲の改善が見られたので報告する。
【研究目的】
口腔周辺の運動や感覚機能を促し安全に食事を楽しめるようになり、人とのコミュニケーションを取る事で意欲向上のきっかけを得られるようになることを目的とする。
【研究方法】
対象者はA氏 88歳 女性 介護度5 B氏 82歳 女性 介護度3
1)対象者A氏、B氏は、様子観察やコミュニケーションを取りやすいよう職員の近くで実施する。
2)利用者の状態を見守るだけではなく、利用者が体操を楽しめるように、利用者の表情を見て職員も笑顔を絶やさず声を掛けながら速い動きではなくゆっくりとリズムに合わせて行う。
3)昼食前に研究対象の利用者や他利用者と、『うめぼしのうた元気体操』のDVDと『嚥下体操』のDVDを一緒に実施する。
(うめぼしのうた元気体操)
「うめぼしのうた」に合わせて、特別養護老人ホーム翔裕園の職員が創作した元気体操。
(嚥下体操DVD)
「深呼吸」「首の体操」「肩の体操」「上体の運動」「口の体操」「舌の体操」「息を強く吐く運動」「発声練習」
4)体操終了後水分摂取を行ってもらい、口の中を潤して嚥下がしやすい状態にする。
5)対象者A氏、B氏の表情、自ら進んで体操を行っているか、昼食の自力摂取状況や食事量観察を行う。
【結果】
A氏はコロナ感染後、ADLが低下し活気がなくなり表情も乏しくなっていた。車椅子に乗車する耐久性も低くほぼベッド上での生活であった。食事に対する関心もなくなり摂取量も減少していき、食事形態も極小刻みからムース色、ゼリー食へ変更になった。取り組み前は食事直前に起きて車椅子に乗っていたが、体操を始めるようになり食事30分から40分前に車椅子へ移りロビーで過ごせるようになった。体操を皆で行うようになってから、表情に変化が見られ明るくなり、自身で体を動かし体操を行えるようになった。他利用者とも話されてる姿をよく見かけるようになった。「これ美味しいなぁ。」などの発言も見られるようになった。取り組み前は自力では0から1割摂取だったが、取り組み後は5割ほど自力摂取出来るようになった。
B氏は他者との関わりが全くなくいつも1人で過ごされており、活動性も低く食事が配膳されても食べようともせず食に関心が持てなくなっていた。しかし体操を始めるようになると、職員の声掛けがなくても、体を動かしたり、特に嚥下体操を積極的に行っていた。食事はいつも職員が声掛けを行い、器を手渡ししていたが、摂取せずすぐトレイに器を置いていた。しかし体操を始めるようになってからは、器の中を全部摂取してからトレイに置くようになった。
A氏からは笑顔で「体操楽しいよ。」、B氏からは言葉はないが「楽しいですか?」の問いかけに笑顔で頷かれていた。他利用者からは「体動かせて気持ちがいい。」などの声が聞かれ、参加人数も、始めた頃は15名ほどだったが、集団体操が定着してくると28名ほどになっていき、声掛けを行わなくても時間になったらロビーに来てくれる利用者も増えた。 うめぼしのうた元気体操は、リズムにのりやすく楽しい曲調のため高齢者にも取り入れやすく自然と笑みもこぼれていた。また促しが必要な利用者も何人かいたが、毎日体操を行い促しを行う事で、最初は無表情だった利用者も表情が柔らかくなり自ら体操を行うようになった。
【考察】
集団体操を行い人とのコミュニケーションを取る事で意欲向上のきっかけも得られたと考える。また嚥下体操を行う事で、唾液が分泌され嚥下しやすい状態ができ自力摂取量が増えた事に繋がったと考えられる。
また言語聴覚士からは「B氏は生活場面中の自発性は乏しくても、食事前にうめぼしのうた元気体操や嚥下体操などで声を出す、身体を動かすという機会があることが、身体・嚥下能力の維持に好影響を与えているかもしれない。」「精神耐久性の面でなかなか離床機会を発展させていくことが難しい方でも、11時台の体操参加は快の刺激となり、そのことが昼食は離床して食べる、という生活リズムの構築に繋がっているのでは。」との声を聞く事が出来た。
筋肉は運動するほど機能の維持と向上になり、特に口腔周辺の筋肉は食事や表情、発言の改善にも繋がっていったのではと考える。そして食事前に楽しく取り込むことで、高齢者に多い誤嚥を防ぐ効果も期待できるのではないかと考える。
【おわりに】
今後も継続して食事前の集団体操と嚥下体操を行っていき食べるための体操だけではなく、他利用者と一緒に行うことで利用者同士がコミュニケーションを持てるようになればと考える。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う感染対策により、利用者に十分な活動を提供する事が難しくなった。その影響で意欲低下、食欲の低下が目立つようになった。しかし、新型コロナウイルス感染症は、5類感染症となり当施設でも徐々に行事やレクリエーションが行えるようになった。マスク着用や換気など感染対策を行いつつ、以前のように昼食前に 集団体操と嚥下体操を行う事にした。その結果、利用者と職員が一緒になって体操を行う事でコミュニケーションを取る機会が増え、意欲向上し食欲の改善が見られたので報告する。
【研究目的】
口腔周辺の運動や感覚機能を促し安全に食事を楽しめるようになり、人とのコミュニケーションを取る事で意欲向上のきっかけを得られるようになることを目的とする。
【研究方法】
対象者はA氏 88歳 女性 介護度5 B氏 82歳 女性 介護度3
1)対象者A氏、B氏は、様子観察やコミュニケーションを取りやすいよう職員の近くで実施する。
2)利用者の状態を見守るだけではなく、利用者が体操を楽しめるように、利用者の表情を見て職員も笑顔を絶やさず声を掛けながら速い動きではなくゆっくりとリズムに合わせて行う。
3)昼食前に研究対象の利用者や他利用者と、『うめぼしのうた元気体操』のDVDと『嚥下体操』のDVDを一緒に実施する。
(うめぼしのうた元気体操)
「うめぼしのうた」に合わせて、特別養護老人ホーム翔裕園の職員が創作した元気体操。
(嚥下体操DVD)
「深呼吸」「首の体操」「肩の体操」「上体の運動」「口の体操」「舌の体操」「息を強く吐く運動」「発声練習」
4)体操終了後水分摂取を行ってもらい、口の中を潤して嚥下がしやすい状態にする。
5)対象者A氏、B氏の表情、自ら進んで体操を行っているか、昼食の自力摂取状況や食事量観察を行う。
【結果】
A氏はコロナ感染後、ADLが低下し活気がなくなり表情も乏しくなっていた。車椅子に乗車する耐久性も低くほぼベッド上での生活であった。食事に対する関心もなくなり摂取量も減少していき、食事形態も極小刻みからムース色、ゼリー食へ変更になった。取り組み前は食事直前に起きて車椅子に乗っていたが、体操を始めるようになり食事30分から40分前に車椅子へ移りロビーで過ごせるようになった。体操を皆で行うようになってから、表情に変化が見られ明るくなり、自身で体を動かし体操を行えるようになった。他利用者とも話されてる姿をよく見かけるようになった。「これ美味しいなぁ。」などの発言も見られるようになった。取り組み前は自力では0から1割摂取だったが、取り組み後は5割ほど自力摂取出来るようになった。
B氏は他者との関わりが全くなくいつも1人で過ごされており、活動性も低く食事が配膳されても食べようともせず食に関心が持てなくなっていた。しかし体操を始めるようになると、職員の声掛けがなくても、体を動かしたり、特に嚥下体操を積極的に行っていた。食事はいつも職員が声掛けを行い、器を手渡ししていたが、摂取せずすぐトレイに器を置いていた。しかし体操を始めるようになってからは、器の中を全部摂取してからトレイに置くようになった。
A氏からは笑顔で「体操楽しいよ。」、B氏からは言葉はないが「楽しいですか?」の問いかけに笑顔で頷かれていた。他利用者からは「体動かせて気持ちがいい。」などの声が聞かれ、参加人数も、始めた頃は15名ほどだったが、集団体操が定着してくると28名ほどになっていき、声掛けを行わなくても時間になったらロビーに来てくれる利用者も増えた。 うめぼしのうた元気体操は、リズムにのりやすく楽しい曲調のため高齢者にも取り入れやすく自然と笑みもこぼれていた。また促しが必要な利用者も何人かいたが、毎日体操を行い促しを行う事で、最初は無表情だった利用者も表情が柔らかくなり自ら体操を行うようになった。
【考察】
集団体操を行い人とのコミュニケーションを取る事で意欲向上のきっかけも得られたと考える。また嚥下体操を行う事で、唾液が分泌され嚥下しやすい状態ができ自力摂取量が増えた事に繋がったと考えられる。
また言語聴覚士からは「B氏は生活場面中の自発性は乏しくても、食事前にうめぼしのうた元気体操や嚥下体操などで声を出す、身体を動かすという機会があることが、身体・嚥下能力の維持に好影響を与えているかもしれない。」「精神耐久性の面でなかなか離床機会を発展させていくことが難しい方でも、11時台の体操参加は快の刺激となり、そのことが昼食は離床して食べる、という生活リズムの構築に繋がっているのでは。」との声を聞く事が出来た。
筋肉は運動するほど機能の維持と向上になり、特に口腔周辺の筋肉は食事や表情、発言の改善にも繋がっていったのではと考える。そして食事前に楽しく取り込むことで、高齢者に多い誤嚥を防ぐ効果も期待できるのではないかと考える。
【おわりに】
今後も継続して食事前の集団体操と嚥下体操を行っていき食べるための体操だけではなく、他利用者と一緒に行うことで利用者同士がコミュニケーションを持てるようになればと考える。