講演情報

[15-O-F001-06]どんなあなたもレクリエーションへおいでよ

*北村 美穂1、杉阪 尚美1、西濱 美和1、岡井 智雅1 (1. 大阪府 介護老人保健施設パークヒルズ田原苑)
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褥瘡により寝たきり状態となっている方に対し、レク参加により他者との交流が持てる様にポジショニングやケアの統一を多職種協働で行った。その結果、褥瘡悪化なく離床しレクに参加することができた。
【はじめに】
介護老人保健施設でのレクリエーション(以下レク)とは単なる娯楽や余暇ではなく集団生活の中で利用者様1人1人が喜び、楽しむ事が出来る、「喜楽」である。今回、褥瘡を繰り返し発症するためにベッド上で寝たきり状態となっている方に対し、レク参加により楽しみのある生活を送れる様に多職種協働で取り組みを行ったので報告する。
【事例紹介】
A氏、80代、女性、要介護5。疾患名:アルツハイマー型認知症、糖尿病。障害高齢者の日常生活自立度:C2、認知症高齢者の日常生活自立度:IV。四肢・体幹拘縮強く両臀部、背部に褥瘡瘢痕あり。認知症の進行に伴い意思疎通困難で日常生活全般に重介助が必要。離床を促すためにリクライニング車椅子(以下車椅子)へ移行を試みるも褥瘡を繰り返し発症されるため終日ベッド上生活となっており、交流の機会が減少している。以前好きだったレクを通じて生活の中で楽しみを感じて頂くために取り組みを開始した。
<取り組み内容>
介護・看護・リハ職が共同して以下の取り組みを実施。
1.車椅子座位時の座圧を体圧測定器(SRソフトビジョン)を使用して測定し、圧の少ないポジションや角度を検討
2.レク実施時間の14時~16時に離床を行い、終了後に臀部・背部の状態を観察
3.離床前にオムツ交換を行い、車椅子座位姿勢や座り直しの方法を掲示し、周知徹底を図る
<取り組み経過>
1.車椅子ポジショニング前は臀部の最大圧が177mmh(基準値40mmHg)と高値であり背部の接地面積が少なかったが、ポジショニングにてリクライニング・ティルトの角度調整、臀部と背部にクッション挿入、足台を作成した結果、臀部の最大圧が72mmHgまで下がり背部の接地面積が増加した。座位1時間後では最大圧が93mmHgまで上昇も除圧後74mmHgへと減少。更に1時間後は79mmHgと座圧の上昇なく経過。
2.2時間の離床では臀部の状態に変化がなかったが4日目より背部の褥瘡痕が悪化。そのため離床時間を1時間に変更し、7日目に改善がみられた。
3.取り組み内容を掲示し、かつ対面で伝達することで職員間でのケアの方法を統一することができた。
【結果】
1時間の離床が可能となり周囲の輪に入りレクに参加できた。レク参加の様子は傾眠なく周囲や他者の声掛けにも視線を送る姿が見られた。統一したケアで臀部・背部の褥瘡悪化を防ぐことができた。
【考察】
認知症高齢者は自分の言葉をうまく伝えられないことがある。A氏も認知症の進行により発語が困難であり、希望や訴えがあっても伝えることができない状態である。生活は人との関わりの中で成立する。施設生活において、集団の輪の中で過ごしたり、職員や他利用者との交流を図ることは生活を送る上で重要な意味を持つと考える。今回、レク参加時も傾眠なく周囲に目線を送ったり、他者の声掛けにも視線を送る姿がみられたことは、A氏にとって“喜楽”に繋がると考える。
【おわりに】
言葉にできない方の些細な表情の変化を汲み取り、ケアに生かしていくことは大切であり、多職種が連携し、レクなど“喜楽”を感じられるような関わりやケアを行っていきたい。