講演情報

[15-O-F002-02]最後まで楽しめる!退屈おさらば貼り絵アート!

*伊藤 洸平1、小林 雄樹1、高橋 光希1、山本 みずほ1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設ハートフル瀬谷)
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毎月所属グループの利用者で協力し、1枚の模造紙に貼り絵を行っている。
実施していく中で、折り紙を、切る、ちぎる、のりで貼る段階までは多くの方が参加できていたが、模造紙へのり付けする際に決まった利用者が行うことが多く、その間活動に参加できない方がいた。
そのため、台紙となる模造紙の分割、作業内容を分けることで初めから最後まで参加を可能とし、大きな達成感を得られるのではないかと思った。
【はじめに】
私の所属する認知症専門フロアでは、45名の利用者に対して、4つのグループに分かれケアを行っており、グループでは利用者数名で協力して完成させる貼り絵のレクリエーションを行っている。
初めに貼り絵に使用する量の折り紙をフロア全体の利用者でちぎり、それを模造紙に貼り付けていく。しかし、いざ貼り付ける時には1枚の模造紙で行う関係上、1つのテーブルでしか貼り付けることができず、毎回決まった利用者ばかりが模造紙への貼り付けを行うことが多かった。その間活動に参加できない利用者からは「やることがなくなってしまいつまらない」という意見が聞かれていた。
上記のような心境を解消するために実施した取り組みについて報告する。

【目的】
活動終盤にやることがなくなってしまい、「つまらない」というネガティブな想いが解消でき、「楽しかった」というポジティブな想いで活動を終えることができる。

【方法】
1、台紙となる模造紙を6つに分割し、複数のテーブルに配置する。
2、折り紙をちぎり、模造紙に貼り付ける。
3、個々に取り組める活動として、絵の型に沿って画用紙を切り取り、ちぎった折り紙を貼る。また、塗り絵用の画用紙に色を塗り、絵の型に沿って画用紙を切り取る。
4、「3」で作成した塗り絵や画用紙を模造紙に貼り付ける。
5、6つに分けていた模造紙を合わせて1つの絵を完成させる。

【結果】
・「やることがあって楽しかった」「やることたくさんだね」といった声が多く聞かれた。一方で、「塗り絵でいいじゃない」「やりたくない」「めんどくさい」といった貼り絵のレクリエーション自体を楽しめていない意見も一部聞かれた。
・活動開始から絵の完成まで参加できた人数は約3倍まで増加した。
・普段、私の所属グループの利用者のみで貼り絵の活動を行うことが多かったが、他グループの利用者も多く参加していた。
・貼り絵が楽しめていなかった方も、塗り絵で活動に参加されており、楽しんで行えた様子であった。

【考察】
終盤まで参加することができる活動内容が増えたことで、退屈することなく「最後までやることがあって楽しかった」という心境の変化が得られたのではないか。「楽しかった」「できた」という成功体験は、レクリエーションに限らず、日常生活への意欲向上に繋げていくことができると思われる。また、様々な活動内容を試していただくことで利用者の新たな一面を知ることができるため、今後行っていくレクリエーションやケアの幅を広げていくことができ、手先を使った細かい作業であるため脳に刺激が入り、認知機能の維持向上も期待できるのではないか。
それまでADLの問題等からこれまで参加できていなかった方も、一人一人に合ったレベルの活動が見つかり、多くの利用者に参加していただくことができたのではないか。
「めんどくさい」「こんなのやりたくない」という意見を抱かせてしまった利用者には無理な参加は勧めず、一部の比較的簡単な活動のみの提供や、一度活動から離れていただくこと、また完成した作品をご覧いただくことで「やってみてもいいかも」という心境の変化を引き出すことができるのではないかと考える。

【結語】
従来の活動が「つまらない」という感想を抱かれていた方に「最後まで楽しかった」というポジティブな心境の変化が起きていたため、活動内容の分割は利用者に終盤まで楽しんでもらうための方法の一つである。
初めに思い描いていた絵柄や、活動と違っていても、関わって作成したことが大切であると、活動中や完成した作品を利用者にご覧いただいた時の表情から感じる。
今後も多くの利用者が楽しめる、やりたくなるような貼り絵アートを考えていきたい。