講演情報

[15-O-F002-04]「食べることは生きること」~クッキングレクで楽しみを創ろう~

*草野 亜由美1 (1. 佐賀県 介護老人保健施設グリーンヒル幸寿園)
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コロナ禍以降現在も当施設では面会や外出への制限が継続している。その中で入所者が楽しみと生きがいをもって生活できるように「たべることは生きること」をテーマに毎月クッキングレクの開催を行った。その中で作ったものを皆で美味しく食べる事が出来ただけでなく、意欲の向上や悲観的な言動の減少などの良い変化があった入所者もいたことから継続した良い効果も期待できるものと考える。
【はじめに】
新型コロナウイルス感染症の位置付けが2類相当から5類に移行し、徐々に元の日常に戻りつつあるが、医療・介護の現場では常に感染リスクへの対応が求められており、現在も当施設では自由な外出・外泊・面会が制限されている。入所者にとって代わり映えのしない単調な生活は、心身のストレスや意欲の減少につながると感じていた。そこで、入所者がいかに楽しみと生きがいをもって生活できるかという点を考え、「食べることは生きること」をテーマにレクリエーションの中でも特に人気のあるクッキングレクを毎月実施し、どのような効果があったか報告する。
【対象者】
幸寿園2階一般病棟
入所者定員40名(短期入所療養介護利用者含む)
平均介護度2.65 
平均年齢 85.73歳 
【対象期間】
2024年4月~現在
【取り組み】
・毎月クッキングレクを計画して、事前に告知し実施する。
・在宅復帰を目指す入所者と材料の買い出し。
・イベント時の写真を撮り、ご家族に渡した。
・インスタグラムやFacebookに投稿し、家族、職員、関係者等に情報発信を行った。
【考察】
クッキングレクを取り組んでいく中で、入所者それぞれが、切る、混ぜる、焼くなどの役割を持ち、料理を完成させることで、達成感を味わっている方もいるようであった。普段のレクリエーションには参加しない方もクッキングレクには積極的に参加され、調理しない方も、目の前で焼ける音や、美味しそうな匂いを嗅ぐことで、食欲がアップされる方もいた。また、在宅復帰を目指す入所者の方と、材料の買い出しを一緒に行ったことで、在宅復帰への意欲も高まった様子もみられた。クッキングレクの様子をインスタグラムやFacebookに投稿し、家族、職員、関係者等に情報発信を行った。入所されている家族へ、近況報告も兼ねて、笑顔で楽しまれている様子の写真を渡すなどし、入所中の様子をより身近に感じてもらい喜んでいただくことができた。今回のクッキングレクを通じて、普段は関わりの少ない入所者同士が協力して料理を作る場面もみられ、新たな交流の機会ともなった。在宅復帰を目指している入所者の方の一人に、以前は全く他者との交流もなく、居室内に閉じこもっていることが多かった入所者が、一度クッキングレクに参加したことをきっかけに、自分から外に出ることが増え、歩行訓練を自主的に行うようになったりし意慾の向上がみられた。また悲観的な言動が聞かれる事が以前はあったが、ほとんど聞かれなくなり声掛けに対しての笑顔も増えていった。クッキングレクがその時の、おいしい楽しいだけではなく、その後も継続して良い影響があったのではないかと思った。今回の取り組みを通して入所者が楽しみと生きがいをもって生活できるという当初の目的を一定程度達成できた。またクッキングレクをきっかけに意慾の向上などの継続した様々な良い影響も期待できるのではないかと考える。
【まとめ】
今回の取り組みの中で入所者から、お好み焼きを作った会で「今まで食べた中で一番おいしかったよ」という言葉が聞かれた。それは、その場の空間や行動により、自分で作って料理を食べることは「楽しくておいしい」という事を感じてもらえたのだと考える。そして継続した効果として意慾の向上などの良い影響も期待できる様であった。また、家族にもその様子を伝えることで、喜んでいただけ、安心していただけたようだ。私は「食べることは生きること」と以前から考えていた。ただ単に食事をするという事だけではなく、みんなで一緒に作って食べるという楽しみがあることは、生きがいに繋がることだと思う。今後もこの取り組みを継続、進化させていき入所者がより楽しみと生きがいを持って生活出来る施設を目指して行きたいと思う。