講演情報

[15-O-F003-04]レクリエーションの活性化による介護職員の意識調査

*日諸 佑子1 (1. 秋田県 独立行政法人地域医療機能推進機構 秋田病院附属介護老人保健施設)
PDFダウンロードPDFダウンロード
レクリエーションの活性化による介護職員の意識調査を目的とし、五感に着目したレクリエーションを実施したところ、利用者の満足感の向上により介護職員のレクリエーションに対する意識に変化がみられたため報告する。レクリエーションの目的を共有し、利用者の五感を刺激した効果を介護職員にアンケート調査した。結果、利用者の表情・言動・行動に変化が見られ、利用者の反応は介護職員のやりがいとなり意識変化につながった。
【はじめに】
当施設では利用者の生活の質向上を目的に、委員会が主体となりレクリエーション(以下レクとする)を企画・実施している。2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響により、施設外でのレクや地域交流の機会が制限されたが、季節行事として七夕祭りやクリスマス会、豆まき会等を、感染対策を講じながら提供してきた。2023年から新型コロナウイルス感染症が5類へ移行し行動制限が緩和されたことにより、委員会メンバーから「コロナ禍の影響で見せたり聞かせたりするレクが多かったが、肌で感じたり香りを楽しんだりできる内容を提供したい。」とレクの活性化を望む声が聞かれた。そこで委員会メンバーを中心に、より五感に着目した利用者参加型のレクを実施した結果、利用者の満足感の向上により介護職員のレクに対する意識に変化がみられたため報告する。
【目的】
レクリエーションの活性化による介護職員の意識変化を明らかにする
【方法】
対象:当施設に所属する介護職員28名
期間:令和5年5月~10月
方法:季節行事の食事場面において、利用者の反応を引き出す五感の内容を委員会が検討し、介護職員に事前に提示した計画書で目的を周知し実施する。レク当日は、テーブルに焼きそばとデザート3種類をセッティングしビュッフェ形式で提供し、希望者にノンアルコールビールを提供する。五感の刺激は、1.視覚:ホットプレートを使用した調理場面、料理を目で見て選ぶ。2.嗅覚:調理中の料理の匂いをうちわで扇ぎ会場に香りを立たせ匂いを嗅ぐ。3.味覚:料理を舌で味わい、ノンアルコールビールで喉越しを味わう。4.聴覚:目の前で実施している調理音を耳で聞く。5.触覚:出来立ての食事の温かさ・飲み物の冷たさを手や口で感じるとする。介護職員は、調理中の匂いと料理の味について利用者に声をかけることや、食べ物や飲み物の温かさや冷たさを伝えながら手渡すなど五感を刺激する関わりを統一する。
データ収集・分析方法:レクに参加した介護職員に対してレク実践時の利用者の反応(発語・表情・動作)により、レクに対する意識変化についてアンケート調査を実施し、得たデータを分析する。
【倫理的配慮】
実施したアンケートは個人が特定されないよう配慮し、集計後は速やかに破棄する。当院倫理委員会から承認を得た。
【結果】
介護職員に実施したアンケートからは、利用者の新たな一面を知ることができたこと、レクの目的を共有することで意図的な関りができ、利用者の反応を引き出せたこと、利用者の生き生きとした姿から行事の手ごたえを感じたこと、毎日のレクも充実する必要性を感じたなど言葉が聞かれた。利用者がデザートを選べるよう料理の前に誘導し見てもらうと、迷いながら手を伸ばす動作が見られた。「昔ホテル行ったのを思い出した。」と自ら介護職員に話し、過去を回想する言葉が聞かれた。介護職員がノンアルコールビールの冷たさを伝えながら利用者の持つコップに注ぐと、「冷たい。まさか飲めると思わなかった。」と驚きの表情をし、満足げに飲む姿があった。また、利用者の目の前で調理し、うちわで扇ぐと「いい匂いがする。」「いい音がしてきた。」「熱々できたてだ。」と五感に反応した言葉が聞かれた。更にお代わりを求める姿や、日頃自発的に食べようとすることが少ない利用者が箸を持ち、自ら手を伸ばす姿も見られた。明らかに利用者は、普段の食事提供と比較して、発語が増え、表情が豊かになり、自発的行動が見られた。
【考察】
利用者の発語の増加や豊かな表情への変化、自発的な行動は介護職員の仕事の満足感とやりがいにつながり、レクに対する意識の変化が見られた。介護福祉士は利用者がその人らしく生活できるよう支援する役割がある。生活の楽しみ、生きがいの支援のために、介護福祉士が知り得ている利用者のニーズを活用し、目的を持ちレクを実施したい。そして利用者の生活の質の向上につなげたい。今回介護職員は、五感に着目したレクの目的を共有し実施した。古市は「身体機能、知的機能が低下していく高齢者に対してレクリエーションを実施し、五感を活用することで残存機能の維持・向上が期待できる。」と述べていることから、五感を刺激したレクは、利用者が香りや味から過去に体験した出来事や嗜好品を思い出し、回想するきっかけとなった。また、目の前の動きや普段聞き慣れない好意的な音は、脳を活性化させ自発的な動作を導き出していた。五感を刺激したレクの実施は、利用者にとって「楽しさ」「充実感」「満足感」といった精神的安定につながったと考える。
【まとめ】
目的を共有しながら実施したレクは、介護職員の満足感とやりがいにつながり、レクに対する意識が変化した。そして利用者の満足感の向上につながった。