講演情報

[15-O-F004-01]余暇時間の有効利用と満足の向上への取組み~余暇時間って最高!~

*清水 大輔1、小峰 嘉苗1 (1. 東京都 介護老人保健施設メディケア梅の園)
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先般、コロナ禍における利用者数への影響は我々デイケアにおいても例外ではなく、キャンセルの増加、稼働数の低下が目立つようになった。提供しているサービス内容もその要因の一つと考えた。利用者にアンケートを実施し結果を基に余暇時間の活用が満足の向上に繋がると考え改善・対策を行った。対策後、一部のレクリエーションの満足感に変化がみられた。本発表では、取り組んだ事例紹介と今後の課題を報告する。
【背景】大規模デイケアにおいて一日の利用者数の減少と利用時間の短縮を希望する利用者が増えた。その原因調査と検証の結果、余暇時間の過ごし方を見直すことが満足感の向上となり、利用数の増加につながると考え改善に取り組んだ。本発表では検討した内容と取組んだ内容について報告する。
【調査期間】2023年3月~9月
【対象】2023年3月~9月までデイケアを利用している利用者。3月138名、4月216名、9月188名、延べ542名。
【倫理的配慮】利用者に調査の趣旨、匿名性の保持、収集したデータは研究目的以外では用いないこと、調査の協力は任意であることを説明し、同意を得た上で行う。
【調査方法】調査は主にアンケートを実施。得られたデータは各項目について単純集計を行い、利用者の満足とデイケアの各援助との関連を分析。2023年3月に配置留意方法によるデイケアのプログラムについて調査を実施し現状把握と分析。3月の調査結果より問題点を抽出し対策を立案。4月に3月の対策についての評価と分析のため、デイケアの基本的なサービであるリハビリ、入浴、食事について4段階の満足度調査とリハビリ、入浴、食事以外のレクリエーション、訓練等で楽しみにしているサービスについて調査を実施。9月に再評価調査を実施。
【結果】4月の調査結果から、「大変満足・満足」の回答はリハビリ83%、入浴94%、食事73%だった。「やや不満・不満」の回答はリハビリ17%、入浴6%、食事27%だった。9月の調査結果ではリハビリ90%、入浴92%、食事83%だった。「やや不満・不満」の回答はリハビリ10%、入浴8%、食事17%だった。楽しみにしているプログラムの調査(複数回答可)では、4月の結果、集団体操29%、行事16%、ボードレク29%、ゲームレク10%、プリントレク6%、作業活動7%だった。9月の結果では、集団体操34%、行事16%、ボードレク64%、ゲームレク14%、プリントレク13%、作業活動9%だった。4月アンケート結果から「待ち時間が暇」・「楽しくない」との意見があった。この待ち時間が原因で「早く帰りたい」・「来たくない」という利用者が増加したのではないかと考えた。この結果により、リハビリと集団体操というプログラムに対して内容の見直しを行った。リハビリでは理学療法士の監修による頭から足まで、座位、立位の個々のレベルに合わせてできるストレッチや18種類の筋力運動を取り揃えた自主訓練コーナーを設置、自由に自主運動が行える環境を整えた。集団体操では実施する間隔を隔週から毎日へ変更し、週ごとに上肢と下肢に分けた。また、使用する錘を300グラム、500グラム、1キログラムとし身体機能に合わせて使用するようにした。新たな取り組みとしてホワイトボードを使用し、都道府県の名物や漢字問題、なぞなぞ等のレクリエーション(以下:ボードレク)を開始し、認知機能や活動意欲の低い方を前列に誘導し、集中しやすい環境を整えた。ボードレクに関しては「楽しみにしている」と回答した人数が29%から62%に増加した。
【考察】今回の研究では、職員と利用者で余暇時間に対する認識の相違があることが分かった。職員は余暇時間を個人的にリラックスすることや趣味活動をする等、自由に過ごしていただく時間として捉えていた。しかし利用者にとっては「次のプログラムへのただの待ち時間」、「何もすることがない暇な時間」との認識であった。また、調査から個々に行っているプログラムよりも職員が一緒になって参加するプログラムの方が楽しみとしている利用者が多い結果が得られたことから、満足感を得るためには職員の介入が必要なことも分かった。そして、調査→分析→改善→調査というサイクルを重ねることで、施設環境と提供するサービスの質、職員の意欲が向上したことを実感した。今後は利用者が表出し易い調査を定期的に行い、施設の環境やサービス内容を評データとして開示できれば、利用者やその家族も、納得・安心して利用できるのではないかと考える。集団体操は職員1名で移動のサポートに2名で約30名の利用者が参加し2セット行っている。頭の体操は職員2名で約40名の利用者が参加している。集団体操は34%と頭の体操は64%と人気が高い。また、参加している利用者同士で声を掛け合いながら開始前に座って待っている様子を多く見かけるようになった。これは、集団活動が利用者同士で比較し、励まし合うことで参加意欲が高まった結果と考える。帰宅願望が強く訓練等は全て拒絶していた利用者達も参加意欲が高まった。一例として集団体操や頭の体操に参加するために移動する利用者に付いて行き、そのままスムースに参加する流れが散見される。認知機能低下の利用者に対し当初は警戒気味であった他の利用者が声を掛け、励まし合う場面も見られている。そのことからピアサポートの視点が育まれていると考える。
【終わりに】2024年2月、第18回東京都病院学会の発表では、「多様化する個別のニーズに大規模デイケアではどのようなプログラムの提供を行っていくか」が課題となった。その課題に対し、利用者が本来持っているピアサポートの視点を高めて協力していくことが、参加意欲を高めることに繋がると考えた。そこで、意欲が高められるサービス内容の提供を実現させるために、継続してやりたいこと等の要望と不満に思っていることを把握し、課題を改善するため、2024年7月より4段階の満足度調査を行ない、個々の思いに応えられるよう利用者の満足と稼働数の向上に向け、改善を重ねていく経過を今回報告する。