講演情報

[15-O-F004-05]作業療法的レクによる通所リハの利用者増員計画

*湯出川 岳宏1 (1. 長野県 北信総合病院老人保健施設もえぎ、2. 北信総合病院老人保健施設もえぎ、3. 北信総合病院老人保健施設もえぎ)
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入浴が制限された水曜日の通所リハビリテーションの利用人数を増加させるために、作業療法的側面を持ったレクリエーションである折り紙・絵手紙制作を行ったところ、利用率が増加して利用者数をやや増加させることができた。また、施設外に本レクリエーションの内容などを発信し、通所リハビリテーションへの理解を深められたことも有用であったと考えられた。
はじめに
 当施設は長野県北部の中野市に位置し、果樹栽培やキノコ栽培が盛んで、国立公園である志賀高原を始め豊かな自然に囲まれた農業と観光を中心とした地域にある独立型の超強化型老人保健施設である。当施設の通所リハビリテーションの営業日は月曜日~金曜日となっており、リハビリテーションスタッフを多数配置し、充実した個別リハビリテーションを特徴とする。当施設の通所リハビリテーションでは、介護スタッフの絶対的マンパワー不足から、水曜日のみ入浴できる利用者の人数が制限されている。そのため、利用人数が他の曜日に比べ少ない。そうした経緯や状況をふまえた上で、ただでさえ利用者が減少傾向であるコロナ禍において、利用者増加に向けてできることは何かを考え、取り組んだ活動を報告する。

目的
 入浴が制限されている当施設の水曜日の通所リハビリテーションの利用人数を増加させるために、通所リハビリテーションならではの「作業療法的側面を持ったレクリエーション」を行う事で、利用人数の増加を図れるかの検討を行った。

対象・方法
 当施設の水曜日の利用人数を増加させる目的で、2024年4月にコロナ禍において実施を見合わせていた水曜日のレクリエーション活動を徐々に再開することを計画した。それにあたり、通所リハビリテーションであるからこその「作業療法的側面をもったレクリエーション」として、手作業を伴うものをピックアップし、その中でも以前に好評であった「折り紙」と「絵手紙」に絞り計画した。そして、当施設の水曜日の通所リハビリテーション利用者に対し、「折り紙・絵手紙レクリエーション」を2023年8月、10月、12月に実施した。
 また、取り組み内容を外部発信するために、9月に当施設機関誌に内容を掲示し、10月には中野市ケアマネジャー連絡会に出席してレクリエーションの内容を説明し、通所リハビリテーションへの勧誘を行った。11月には、レクリエーション参加利用者にアンケート調査を行った。

結果
 今回の取り組み期間中に、本レクリエーションの見学希望者が2名あった。11月に行った参加利用者へのアンケートの結果、満足・やや満足した人は81.3(22/27)%であった。本レクリエーション実施後の水曜の1日当たりの平均利用者は、2023年8月~2024年3月では29.6人で、実施前である2022年8月~2023年3月の27.9人と比較してやや増加傾向を示した。

考察
 本レクリエーションの実施後、水曜日の通所リハビリテーションの利用者数はやや増加した。同じ時期における当施設の通所リハビリテーションの水曜日以外の1日当たりの平均利用者数は、2022年8月~2023年3月の38.8名と比較して、2023年8月~2024年3月では36.8名とやや減少している。以上のように、水曜日以外の利用者数が減少傾向にあるのに対して、本レクリエーションを実施した水曜日の利用者数が増加したことは、本レクリエーションの施行が利用者数の増加に有効であったものと推測される。
 更に、増加した利用者数は利用率の増加に伴うものなのか、新規の利用者の増加に伴うものなのか検討した。2023年8月~2024年3月の水曜日の平均利用率は90.6%で、2022年8月~2023年3月の88.2%と比較してやや増加傾向にあった。また2023年8月~2024年3月までの水曜日の新規利用者数は7名(終了利用者は6名)であり、2022年8月~2023年3月までの新規利用者数の13名(終了利用者数は8名)と比較して少なかった。以上の事から、水曜日の利用者数が増加した要因としては、利用率の増加に伴うものの可能性が示唆された。アンケート結果からも本レクリエーションに満足もしくはやや満足した利用者が81.3%であり、本レクリエーションをまた行いたいという思いが利用率の増加につながった可能性も推測される。更に2024年4~6月の水曜日の平均利用率は93.2%となっており、継続して90%以上を維持できている。7月に4回目のレクリエーションを行った。しかしながら、新規の利用者が増加していないことから、施設外へのアピールがまだまだ不足していたと考えられる。
 また、当地では通所リハビリテーションサービスの内容の理解が利用者及びケアマネジャーに完全には浸透しておらず、通所介護との相違が明確になっていない例もあり、今回の取り組み中にケアマネジャー連絡会に向けて当施設の通所リハビリテーションの内容を発信できたことは、新規の利用者は増加しなかったが、有用であったと考える。スタッフとしても「通所リハビリテーションとは何か」を再認識する機会となり、また取り組んだことが結果に結びついたことが自信にも繋がったと考える。今後もこの取り組みを継続して行きたい。

まとめ
 入浴が制限された水曜日の通所リハビリテーションの利用人数を増加させるために、作業療法的側面を持ったレクリエーションである折り紙・絵手紙制作を行ったところ、利用率が増加して利用者数をやや増加させることができた。また、施設外に本レクリエーションの内容などを発信し、通所リハビリテーションへの理解を深められたことも有用であったと考えられた。