講演情報
[15-O-A009-04]在宅復帰する利用者に対する生活リハビリの実践多職種連携で考えた生活リハビリ
*丸尾 理奈1、熊井 裕一1 (1. 兵庫県 介護老人保健施設ウエルハウス川西)
当施設は超強化型施設として在宅復帰を推進している。要介護の高齢者が在宅復帰するために多職種連携が必須である。今回安全な生活援助及び自立への支援を提供するという施設理念に基づき、多職種で検討し、介護職主体の生活リハビリの実践を行った。自宅で必要な動作を、生活リハビリとして実践した。利用者のできることを見極めながら生活の中に取り入れたことで、QOL・日常生活動作の向上がみられたため報告する。
【はじめに】 当施設の利用者には、担当のリハビリテーション(以下リハビリとする)科職員が能力に応じたリハビリを行っており、リハビリの場面では、立位訓練や歩行練習を実施している。今回リハビリに加えて利用者が自宅で生活するにあたって行わなければならない動作を、介護職員が主体の生活リハビリとして取り組んだ。個別の生活リハビリを行う事によってQOL・日常生活動作(以下ADLとする)の維持・向上に繋がるのではないかと考えた。家族や本人の要望で「リハビリを行い少しでも歩行出来るようになってほしい。一人で歩けるようになりたい」という施設内を車椅子で生活している利用者を対象として実践を行った。当施設の理念である安全な生活援助及び自立への支援を提供するという観点から、多職種連携を行い、利用者のできることを見極めながら、生活する上で行う活動をリハビリと捉え、できるだけ自分でできる取り組みをすることで、利用者のADL向上がみられたため報告する。
【研究目的】 在宅復帰に向けて、本人、家族、医師、看護師、介護職員、リハビリ職員、管理栄養士等の多職種連携を行い、対象者に合った生活リハビリを計画することで、自主的に取り組む意欲を引き出し、QOL・ADLの維持、向上を図る。
【研究方法】
1.対象者:A氏70代、女性、要介護1、認知症自立度2a、移動は車椅子、A氏の背景として在宅復帰を希望しているが、今の状態で在宅復帰が可能か本人・家族共に不安な様子であった。ADLは自立しているが、移動は車椅子で行っており、うつ病の既往もあるため、食事や排泄以外はベッドに臥床して過ごしている状態であった。
2.期間:2023年6月~2023年9月
3.方法
1)多職種と話し合い、A氏に合った個別の生活リハビリを検討する
2)生活リハビリ実施時、表情や意欲などの精神面と疼痛の有無・実施の有無を記録できるよう個別リハビリ表を作成する
3)月・水・金のおやつ後、居室から廊下の手すりまで四点杖歩行実施する
4.論理的配慮:今回の介護実践を報告するにあたり、個人が特定できないよう配慮し、得られた情報は本研究以外には使用しないことをA氏の家族に説明し、同意を得た。
【結果】 施設生活では自立しているA氏が在宅復帰する為にはどのようなことが必要なのか、A氏のできる動作の把握と職員間の統一したケアの検討を行った。在宅での生活を想定し、どこに介助が必要なのか、どこまで自身で出来るのかを把握するため、介護職員、看護職員、リハビリ職員、医師、管理栄養士でカンファレンスを行った。歩行能力はあり、リハビリ時は歩行していたが、施設生活では車椅子を使用しており、歩行練習は行なっていない為、歩く機会に恵まれていない状態であった。また疼痛によりリハビリが実施できない日もあった。そこで生活リハビリとして、おやつの時間を利用して四点杖歩行を介護計画に取り入れ、職員間のケアを統一し、最小限の介助量で支援を行うこととした。当初、A氏は職員の見守りのもと、居室から廊下の手すりまでの歩行距離だったが、徐々にフロアまで四点杖歩行で行くことが出来るようになった。生活リハビリ実施期間は多弁、他利用者に笑顔でコミュニケーションをとる等精神面も安定していた。しかしA氏の体調や疼痛の有無によって歩行できない時や、居室から廊下の手すりまでしか歩行できない事もあった。付き添い時は本人のペースを大事にしながら、終了後には「よく頑張りましたね」と承認する声かけを行った。その結果「もうちょっと歩かないとね」「歩けるようになって良かったわ」等の発言もみられるようになった。最終的には見守りは必要だが、居室からフロアまでの移動を四点杖歩行で行えるようになった。
【考察】 A氏は施設生活でADL自立しているが車椅子使用しており、在宅復帰に不安があった。在宅で生活する為の動作を多職種カンファレンスで検討したことで明確にすることが出来た。施設と自宅で必要になる動作の違いを把握し、職員間の統一したケアを続けることで、A氏は杖での歩行距離が増えていき、笑顔や意欲もみられるようになった。実践後はフロアに出てくる時間が増え、職員と会話する機会も増えた。さらに杖歩行による生活リハビリを繰り返すことで、疼痛の訴えがなくなり、在宅復帰に向けた歩行練習が安定して実施でき、精神面の安定もみられるようになった。吉本ら、2011は1)、「多職種連携の内容および家族との協力は、老健の在宅支援機能の有効性・実現性を高めるための基盤として重要な因子といえる」と述べている。今回自宅で日常生活を過ごす上で行う動作を各専門職の視点で意見交換を行い、介護の視点だけではない問題点に気付くことが出来きたことで有効な生活リハビリを実施することができた。日常的に毎日行う動作をできるだけ自分の力で取り組むことができるよう、職員は利用者のできる動作を把握し、最小限の介助量で生活を支援するよう心がけていく事で利用者のADL向上に繋がったと考える。多職種連携を図ることはできたが家族の協力を得ることはできなかったため、在宅復帰を進めるにあたっては今後の課題である。
【結論】 多職種連携で利用者の能力やニーズに沿った適切な介入を行うことで、意欲の向上やADLの向上に繋がった。今後は家族の協力も得ながら、在宅復帰支援に繋げていきたい。
【研究目的】 在宅復帰に向けて、本人、家族、医師、看護師、介護職員、リハビリ職員、管理栄養士等の多職種連携を行い、対象者に合った生活リハビリを計画することで、自主的に取り組む意欲を引き出し、QOL・ADLの維持、向上を図る。
【研究方法】
1.対象者:A氏70代、女性、要介護1、認知症自立度2a、移動は車椅子、A氏の背景として在宅復帰を希望しているが、今の状態で在宅復帰が可能か本人・家族共に不安な様子であった。ADLは自立しているが、移動は車椅子で行っており、うつ病の既往もあるため、食事や排泄以外はベッドに臥床して過ごしている状態であった。
2.期間:2023年6月~2023年9月
3.方法
1)多職種と話し合い、A氏に合った個別の生活リハビリを検討する
2)生活リハビリ実施時、表情や意欲などの精神面と疼痛の有無・実施の有無を記録できるよう個別リハビリ表を作成する
3)月・水・金のおやつ後、居室から廊下の手すりまで四点杖歩行実施する
4.論理的配慮:今回の介護実践を報告するにあたり、個人が特定できないよう配慮し、得られた情報は本研究以外には使用しないことをA氏の家族に説明し、同意を得た。
【結果】 施設生活では自立しているA氏が在宅復帰する為にはどのようなことが必要なのか、A氏のできる動作の把握と職員間の統一したケアの検討を行った。在宅での生活を想定し、どこに介助が必要なのか、どこまで自身で出来るのかを把握するため、介護職員、看護職員、リハビリ職員、医師、管理栄養士でカンファレンスを行った。歩行能力はあり、リハビリ時は歩行していたが、施設生活では車椅子を使用しており、歩行練習は行なっていない為、歩く機会に恵まれていない状態であった。また疼痛によりリハビリが実施できない日もあった。そこで生活リハビリとして、おやつの時間を利用して四点杖歩行を介護計画に取り入れ、職員間のケアを統一し、最小限の介助量で支援を行うこととした。当初、A氏は職員の見守りのもと、居室から廊下の手すりまでの歩行距離だったが、徐々にフロアまで四点杖歩行で行くことが出来るようになった。生活リハビリ実施期間は多弁、他利用者に笑顔でコミュニケーションをとる等精神面も安定していた。しかしA氏の体調や疼痛の有無によって歩行できない時や、居室から廊下の手すりまでしか歩行できない事もあった。付き添い時は本人のペースを大事にしながら、終了後には「よく頑張りましたね」と承認する声かけを行った。その結果「もうちょっと歩かないとね」「歩けるようになって良かったわ」等の発言もみられるようになった。最終的には見守りは必要だが、居室からフロアまでの移動を四点杖歩行で行えるようになった。
【考察】 A氏は施設生活でADL自立しているが車椅子使用しており、在宅復帰に不安があった。在宅で生活する為の動作を多職種カンファレンスで検討したことで明確にすることが出来た。施設と自宅で必要になる動作の違いを把握し、職員間の統一したケアを続けることで、A氏は杖での歩行距離が増えていき、笑顔や意欲もみられるようになった。実践後はフロアに出てくる時間が増え、職員と会話する機会も増えた。さらに杖歩行による生活リハビリを繰り返すことで、疼痛の訴えがなくなり、在宅復帰に向けた歩行練習が安定して実施でき、精神面の安定もみられるようになった。吉本ら、2011は1)、「多職種連携の内容および家族との協力は、老健の在宅支援機能の有効性・実現性を高めるための基盤として重要な因子といえる」と述べている。今回自宅で日常生活を過ごす上で行う動作を各専門職の視点で意見交換を行い、介護の視点だけではない問題点に気付くことが出来きたことで有効な生活リハビリを実施することができた。日常的に毎日行う動作をできるだけ自分の力で取り組むことができるよう、職員は利用者のできる動作を把握し、最小限の介助量で生活を支援するよう心がけていく事で利用者のADL向上に繋がったと考える。多職種連携を図ることはできたが家族の協力を得ることはできなかったため、在宅復帰を進めるにあたっては今後の課題である。
【結論】 多職種連携で利用者の能力やニーズに沿った適切な介入を行うことで、意欲の向上やADLの向上に繋がった。今後は家族の協力も得ながら、在宅復帰支援に繋げていきたい。