講演情報
[15-O-A009-05]思いや言葉に寄り添いながら~オムツ外しへの取り組み~
*西平 賀一1、上江洲 梨香1、新川 清子1、大泉 由佳1、島袋 賢人1、渡邊 ゆかり1 (1. 沖縄県 介護老人保健施設はまゆう)
排泄ケアは、自尊心や羞恥心から介護される側の心理的負担があり尊厳の保持に大きく関わるケアの一つである。自力で立てなくなった事で精神面の落ち込みがみられリハビリに対しても意欲低下していたが、排泄に対する思いを聞き、少しでも前向きになれるよう支援できればと話し合いながら日中の排泄自立、更には夜間の排泄自立へと繋げ、在宅復帰を果たすことが出来た「オムツ外し」への取り組みについて紹介します。
【はじめに】排泄ケアは、自尊心や羞恥心から介護される側の心理的負担があり尊厳の保持に大きく関わるケアの一つであると考える。今回、ご本人の排泄に対する思いや言葉に寄り添いながらオムツ外しに取り組み良い結果が得られたのでここに報告する。
【事例紹介:A様】入所日:令和5年9月/男性80歳/体重67.8kg/生活自立度:B2/認知症自立度:IIb
令和5年7月、自宅で転倒し胸椎圧迫骨折にて入院となった。以前は同施設の通所リハを利用されており、施設内移動は歩行器を使用。排泄もトイレにて自立であった。元々運動が好きで通所利用中も自発的に歩行訓練し他人の世話にならないように努力する性格であった。しかし入院中に両下肢知覚鈍麻にて自力では立てなくなり抱え上げが必要となったことで車椅子生活となる。入所時はメンタル面の落ち込みからリハビリは拒否傾向であった。排泄は尿便意あるが常時オムツ着用。「トイレに一人で行けないのは情けない」「便の処理をしてもらうのは恥ずかしいし、みっともない。赤ちゃんみたいで申し訳ない」との言葉が入所当初から聞かれていた。
【目的】排泄に対する思いを聞き取り心配や不安を一つ一つ解決し、少しでも心理的な負担の軽減を図る。
【経過】立位訓練、下肢筋力向上に伴い移乗動作については介助量の軽減がみられ、本人からもリハビリに対する変化が欲しいとの発言も聞かれるようになった。しかし、排泄に関しては尿便意があるにも係わらず入所時からの発言に変化はなくオムツ着用のままであった。そこで「トイレでの排泄を練習してみませんか?」とご本人へ提案してみたが、転倒の心配や汚染への不安から難色を示していた。その為、どうしたらトイレに行くことが出来るかご本人と相談し、オムツ着用は継続にて1日1回のトイレ誘導から始める。更に介助する職員も1名とし一緒に動作を確認した後、本人からの受け入れがある時のみトイレ使用を提案して実施した。同時に他職員へはトイレ手摺の位置や移乗時の動作確認、着座時の注意点など情報を共有、いつでも介助を開始できるよう準備を行なった。取り組みスタートから2週間は職員からのアプローチでトイレ使用。排便はあるがパット内汚染も見られた(便スケール5~6)。2週間経過後からは、時間や回数、対応する職員等関係なく本人から「トイレに入ってみようかな?」と声をかけて頂く事が増え、パット内汚染も減少した。「家のトイレはもっと環境が整っていないから練習しないと。」と在宅にむけて前向きな発言も増えた。取り組み開始から2か月後にはオムツからリハビリパンツへ移行し汚染もゼロとなった。その後も立位バランスを崩さないように見守りにてパンツ・ズボンの上げ下ろしを練習してもらい5か月目には日中の排泄動作は自立し在宅復帰への意欲が更に強くなっていった。そこで、支援相談員・施設ケアマネージャーも交え、ご家族へ現状を説明しご本人の『在宅復帰』の意思を伝える。ご家族からは「夜間のオムツが解消しない限り在宅は難しい。トイレの介助はできない。」との返答があり新たな課題が出てきた。そこで、自力でオムツを装着できるかご本人と相談した所、自宅では夜間もトイレに行くからとの返答。夜間のオムツ装着練習ではなく、オムツ外しの方向で取り組みを行なった。始めにリハビリパンツにパット装着のみとし吸収量の多いパットの選定を行なった。当初は寝入ってしまい失禁する事もあったが、徐々に夜間の排尿感覚も戻り、パット内への排尿もあるが明け方のトイレ使用も可能となった。最後の課題である入眠前のパット装着も練習を重ね自力で行うことが出来た。
【結果】入所当所は、自力で立てなくなった事や排泄面で他人に世話をかけている事でリハビリに対し意欲の低下がみられたが、オムツ外しをきっかけにご本人と相談し失敗しながらも一つずつ課題を解決していった事で前向きな発言を引き出し、意欲的に取り組み排泄自立へと繋げる事が出来た。
【考察・まとめ】今回の事例は、リハビリ継続による下肢筋力の向上・便の性状コントロールによる失敗の回避・トイレ使用促し・動作確認・課題抽出と解決に向けてのアセスメントを繰り返すなど多職種が連携し、ご本人と共に相談しながら不安要素を一つ一つ取り除き、発言や行動の変化を確認しながら進めた事で在宅復帰への大きな課題である排泄の自立『オムツ外し』へと繋がったと考える。今後も入所者様の思いに寄り添い、少しでも排泄に対する心理的負担の軽減を図り前向きな気持ちになれるよう支援していきたい。
【事例紹介:A様】入所日:令和5年9月/男性80歳/体重67.8kg/生活自立度:B2/認知症自立度:IIb
令和5年7月、自宅で転倒し胸椎圧迫骨折にて入院となった。以前は同施設の通所リハを利用されており、施設内移動は歩行器を使用。排泄もトイレにて自立であった。元々運動が好きで通所利用中も自発的に歩行訓練し他人の世話にならないように努力する性格であった。しかし入院中に両下肢知覚鈍麻にて自力では立てなくなり抱え上げが必要となったことで車椅子生活となる。入所時はメンタル面の落ち込みからリハビリは拒否傾向であった。排泄は尿便意あるが常時オムツ着用。「トイレに一人で行けないのは情けない」「便の処理をしてもらうのは恥ずかしいし、みっともない。赤ちゃんみたいで申し訳ない」との言葉が入所当初から聞かれていた。
【目的】排泄に対する思いを聞き取り心配や不安を一つ一つ解決し、少しでも心理的な負担の軽減を図る。
【経過】立位訓練、下肢筋力向上に伴い移乗動作については介助量の軽減がみられ、本人からもリハビリに対する変化が欲しいとの発言も聞かれるようになった。しかし、排泄に関しては尿便意があるにも係わらず入所時からの発言に変化はなくオムツ着用のままであった。そこで「トイレでの排泄を練習してみませんか?」とご本人へ提案してみたが、転倒の心配や汚染への不安から難色を示していた。その為、どうしたらトイレに行くことが出来るかご本人と相談し、オムツ着用は継続にて1日1回のトイレ誘導から始める。更に介助する職員も1名とし一緒に動作を確認した後、本人からの受け入れがある時のみトイレ使用を提案して実施した。同時に他職員へはトイレ手摺の位置や移乗時の動作確認、着座時の注意点など情報を共有、いつでも介助を開始できるよう準備を行なった。取り組みスタートから2週間は職員からのアプローチでトイレ使用。排便はあるがパット内汚染も見られた(便スケール5~6)。2週間経過後からは、時間や回数、対応する職員等関係なく本人から「トイレに入ってみようかな?」と声をかけて頂く事が増え、パット内汚染も減少した。「家のトイレはもっと環境が整っていないから練習しないと。」と在宅にむけて前向きな発言も増えた。取り組み開始から2か月後にはオムツからリハビリパンツへ移行し汚染もゼロとなった。その後も立位バランスを崩さないように見守りにてパンツ・ズボンの上げ下ろしを練習してもらい5か月目には日中の排泄動作は自立し在宅復帰への意欲が更に強くなっていった。そこで、支援相談員・施設ケアマネージャーも交え、ご家族へ現状を説明しご本人の『在宅復帰』の意思を伝える。ご家族からは「夜間のオムツが解消しない限り在宅は難しい。トイレの介助はできない。」との返答があり新たな課題が出てきた。そこで、自力でオムツを装着できるかご本人と相談した所、自宅では夜間もトイレに行くからとの返答。夜間のオムツ装着練習ではなく、オムツ外しの方向で取り組みを行なった。始めにリハビリパンツにパット装着のみとし吸収量の多いパットの選定を行なった。当初は寝入ってしまい失禁する事もあったが、徐々に夜間の排尿感覚も戻り、パット内への排尿もあるが明け方のトイレ使用も可能となった。最後の課題である入眠前のパット装着も練習を重ね自力で行うことが出来た。
【結果】入所当所は、自力で立てなくなった事や排泄面で他人に世話をかけている事でリハビリに対し意欲の低下がみられたが、オムツ外しをきっかけにご本人と相談し失敗しながらも一つずつ課題を解決していった事で前向きな発言を引き出し、意欲的に取り組み排泄自立へと繋げる事が出来た。
【考察・まとめ】今回の事例は、リハビリ継続による下肢筋力の向上・便の性状コントロールによる失敗の回避・トイレ使用促し・動作確認・課題抽出と解決に向けてのアセスメントを繰り返すなど多職種が連携し、ご本人と共に相談しながら不安要素を一つ一つ取り除き、発言や行動の変化を確認しながら進めた事で在宅復帰への大きな課題である排泄の自立『オムツ外し』へと繋がったと考える。今後も入所者様の思いに寄り添い、少しでも排泄に対する心理的負担の軽減を図り前向きな気持ちになれるよう支援していきたい。