講演情報

[15-O-A009-06]私、家に帰ってもいいのかしら?~自分の気持ちと家族への思いの葛藤~

*稗田 祥太1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設 仙寿なごみ野)
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不安だらけの利用者、家族がどのようにして在宅復帰を果たしたか支援内容を報告する。主訴を分析し、基本動作を評価。「体調の安定」「移乗・移動動作の獲得」「トイレ動作の獲得」「不安軽減」の4点に着目した。一つ一つの課題を丁寧に解決したことで利用者、家族が在宅復帰への自信がついた。「主訴の理解」「具体的な課題の抽出」「課題を確実に解決する」ことが在宅復帰への近道となる。
【はじめに】
 自宅に帰りたい気持ちと自宅に帰る事で家族の負担が増えてしまうと葛藤する利用者。後ろ向きな発言も多く不安を感じていた利用者が、どのようにして在宅復帰を果たすことが出来たか、その支援内容について報告する。

【対象者】
 H様 82歳 要介護3 既往歴:高血圧症 糖尿病 慢性心不全 慢性腎不全
 入居前は長男夫婦と別棟で生活していた。自宅の畳で転倒し腰を打撲。第一腰椎圧迫骨折と診断される。一旦は自宅に戻るが、日中独居となり一人での生活は困難と家族が判断し入院加療となる。家族は、現状の身体機能では在宅生活に不安を感じており、令和4年11月に当施設に入居される。

【在宅復帰への不安点と課題】
本人:今のままでは家族に迷惑をかけてしまう
家族:自宅内を自分で移動でき、トイレが自分でできれば自宅での生活が見通せる
課題:体調の安定、移乗・排泄能力の向上、在宅生活への不安解消が必要

【取り組みと結果】
看護・栄養:基礎疾患多く、下肢疼痛や浮腫対策として内服薬の調整を実施。食事意欲低下がみられたため、食事を無理せず好きなものを摂取出来る食環境を整えた。
結果:基礎疾患の安定、疼痛コントロール、浮腫の軽減に繋がった。
リハビリ:痛みのコントロール、下肢体幹の筋力トレーニング、立ち上がり練習、移乗動作練習を実施。
結果:痛みが軽減し下肢筋力の向上を認め、介助量の減少に繋がった。
介護:つかまり立ちが安定して行える様になった時点から、オムツからリハビリパンツに変更しトイレ誘導を行った。
結果:トイレ動作の回数を重ねる毎に成功体験となり、本人の自信回復となった。
ケアマネ:本人・家族が退居後の生活がイメージできず自宅生活への不安があったため、退居後の具体的なサービス利用について説明する。
結果:デイサービスや訪問リハビリを利用して介護サービス利用に慣れることから始めた。

【考察・まとめ】 
取り組みの結果、本人は自信を取り戻し、家族の不安も解消。お互いが一緒に生活をしたいという思いに変化した。課題を的確に抽出し、一つ一つ丁寧に解決したことが在宅復帰への近道となる。