講演情報

[15-O-G001-02]移乗介助技術の再考 基礎技術の再学習と実践を通して

*木村 江梨花1、岩島 敏彦1、宮地 一希1、林 宣匡1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設ひざし)
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日常生活の様々な場面で欠かせない動作が「移動」である。この動作を助ける「移乗介助」は利用者・職員双方にとって負担の大きな介助である。昨年、移乗介助が原因と考えられる事故が発生した事を機に、理学療法士による勉強会や理学療法士監修の動画視聴を通じて移乗介助を学び直した。結果、事故ゼロと利用者・職員の負担軽減に繋げる事ができ、介助における「基礎」を思い出すきっかけとなった為、ここに報告する。
【はじめに】
 日々のケアにおいて「移乗介助」は欠かせない介助の1つである。利用者の身体状況に合わせた介助方法を提供しているが、その分職員の身体的負担は増大している。昨年、移乗介助が原因と考えられる事故が発生してしまった事を機に、移乗介助を基礎から学び直し利用者・職員のどちらも安心安全で負担の少ない移乗介助が出来る事を目標に活動を行なった。

【期間と方法】
令和 5 年 7 月~現在進行中
1.アンケート調査 1 回目
2.理学療法士による勉強会の開催と理学療法士監修による利用者別の移乗介助動画の視聴
3.2の内容を踏まえて移乗介助の実践
4.アンケート調査 2 回目

【結果】
 1 回目のアンケートでは、全体の 8 割以上の職員が移乗介助時に負担を感じていると回答があった。勉強会の開催や利用者別の動画を視聴した後、そのポイントを意識しながら移乗介助を実践した。
 2 回目のアンケートでは、全ての職員から今回の取り組みを通して「学びがあった」と回答が多く、「多少負担に感じるが以前より軽減された」との回答が全体の 8割の職員からあった。2 名での移乗介助が必要な利用者については、スライディングボードを活用することで負担軽減が図れたとの意見が多く得られた。

【考察】
 勉強会や動画視聴を通して、移乗介助の基礎であるボディメカニクスの 8 原則を意識する事と、福祉用具を活用する事で活動前より身体的負担の軽減に繋げる事ができた。また介助者本位ではなく、利用者に声をかけながら動きを引き出し、ケア後にねぎらいの言葉をかける事で利用者のやる気を引き出す事もできた。
 移乗介助が苦手な職員に対しては、動画を何度も見返すことで移乗介助技術の習得に努め、職員同士で実際の移乗介助の様子を確認し合いアドバイスを受けることで自身が苦手としている箇所を把握でき、助言指導を意識した介助が行えるようになった。
 また、活動の中でできないポイント等の新たな発見ができ、それを解消する為の検討が行えた事で、現状より良いケアができないか考える環境ができた。

【まとめ】
 今回の活動を通して、いかに自分達が移乗介助の基礎を忘れてケアを行なってきていたかを痛感させられた。移乗介助に負担を感じると思っていても、そこから解決に向けて動き出せていなかった事も実感した。「無理なケアは職員だけでなく利用者にも大きな影響を及ぼすから早急に改善しないといけない」という全職員が同じ危機感を持って活動ができた事が自分達のケアを見直す良いきっかけになったと思う。
 ひと昔前は移乗介助に限らず様々なケア方法が自分で先輩達のケアを見聞きして学習していたのが、現在は動画や様々なツールの普及で反復学習が行いやすくなりケア方法の統一がしやすくなったとも感じた。
 また、今回の活動を通して利用者の移乗介助に対する不安感が軽減された事で、利用者と職員双方から安心の笑顔や言葉を聞く事ができたのはなによりの収穫となった。これからもケアの基礎をおろそかにする事がないよう活動していきたい。