講演情報
[15-O-G001-03]統一したケアに向けて移乗ケアの統一による満足度の向上
*光田 竜司1、加藤 万結1 (1. 愛知県 介護老人保健施設 グレイスフル春日井)
施設の特徴から利用者様の入退所が多くあり、その都度、利用者様に合ったケアを提供していく必要がある。そんな中で、大部分のケア方法についての統一は図れているが、細かいケアが違うとフロア中で疑問点が挙がり、利用者様からも戸惑いの声を聞かれることがあった。利用者様のお声に寄り添えるよう、又リハビリ職員と連携を取りやすいことから、移乗ケアの細かい部分を統一できるよう標準化することを目指し取り組みを開始した。
老健グレイスフル春日井では、老健という施設の特徴から利用者様の入退所が多くあり、その都度ケアの方法について新規入所の利用者様に合ったものを提供していく必要がある。そんな中で、大部分のケア方法についての統一は図れているが、細かいケアが違うとフロアの中で疑問点が挙がった。又、利用者様から「あの人とあの人ではケアの順序が違う」というつぶやきを聞かれることがあったことから、利用者様は安全・安心なサービスを受けて頂いているのか?というという疑問点も挙がった。そんな利用者様のお声に少しでも寄り添えるよう、又、老健の強みでもあるリハビリ職員と近い距離にあり、連携を取りやすい環境であることから、今回は移乗ケアの細かい部分を統一できるよう標準化することをテーマにした。まず現状把握として、利用者様満足度調査を行った。この調査は移乗ケアの頻度が多い5名を対象とした。一つ目の調査として、対象者5名の方に対して、移乗ケアについて満足はしていますか?とお聞きし、三つの中の選択肢から選んで頂くアンケートを実施した。その結果は、満足とお答えになった方0名、普通とお答えになった方3名、不満足とお答えになった方2名であった。又、不満足とお答えになった方2名にどういうところが不満足ですか?とお聞きすると、車椅子の位置や介助者の足の位置がそれぞれ違っていた、靴を脱がせて貰うタイミングが違ったなどが挙げられた。2つ目の調査では、リハビリ職員が作成した5項目の移乗時ポイントを元に、職員10名の移乗ケアを状況確認した。その結果、全てできている職員が6名、1項目以上できていない職員が4名という結果になった。以上の調査の結果から目標設定を二つ設定した。一つ目は利用者様満足度を、不満足40%から0%を目標にする。二つ目に5項目の移乗時ポイントの全てができている職員を60%から100%にすることを目標にした。この目標を達成するために、不満足の要因を職員面、環境面、方法面から特性要因図(魚の骨)を元に解析を行った。まず特性として、一つ目に利用者様の満足度が上がらないこと。二つ目にケアの標準化ができていないことが挙げられる。そしてそれぞれの特性の要因を様々な角度で考えた際に、重点要因として二つの事柄を考えた。一つ目は個別の方法を覚えきれないこと。二つ目にケアの方法が伝わりづらいこと。この二つの重点要因を解決するために、それぞれの対策を考え、実施した。まず重点要因一つ目の個別の方法を覚えきれないことに対しての対策として、それぞれの利用者様の居室担当職員に移乗手順書を作成して頂き、居室のすぐ見える位置に保管するようにした。そうすることで、車椅子からベッド、ベッドから車椅子に移乗する際に、移乗手順書を確認することで統一したケアが行えると考えた。二つ目の重点要因のケアの方法が伝わりづらいことに対しての対策として、それぞれの利用者様の移乗を行っているところを動画に撮り、フロア職員で共有するようにした。今までは、伝言板(PC内情報共有ツール)や口頭で話し合うのみであったが、その場にいなくとも動画という形で見ることで統一したケアが行えると考えた。以上の対策を行っていき、効果の確認として、再度、対象利用者様5名に、現在の移乗ケアについて満足していますか?とお聞きし、アンケートを実施した。すると、満足とお答えになった方が2名、普通とお答えになった方が3名、不満足とお答えになった方が0名という結果になった。又、再度、5項目の移乗時ポイントを元にフロア職員10名の移乗ケアを確認すると、10名の職員全員が全てできているという結果になった。この結果から、最初に設定した、利用者様満足度の中で、不満足の方を0%にすること、5項目の移乗時ポイントを全てできている職員を100%にすること、という二つの目標を達成することができた。目標を達成することができたが、この活動内容を今後も定着させていくために、5W1Hを元に二つの歯止めを考えた。一つ目は、ケアを統一するために、移乗ケアに変更が生じた際は、居室担当職員が、リハビリ職員と一緒に確認しながら、移乗手順書の更新を行い、フロアへ伝達するようにする。二つ目は、新規入所の方に関しては、担当職員が移乗ケアの方法を動画に撮り、伝言板で発信することで、ケアを統一できるようにする。最後に、まとめとして、利用者様に安全・安心にサービスを受けて頂きたいということから移乗ケアの統一化に着目して取り組みを開始し、移乗に関して、安心して介助を受けて頂けることに成功した。しかし、まだ60%の方が普通とお答えされており、今後はその方々も満足して頂けるような内容のものを提供していきたいと考えている。又、今回は移乗ケアのみに絞って対策を進めていったが、その他のケアについても同様なことが考えられるので、その点についても今後考えていき、すべてのケアに満足して頂けるようなサービス提供に努めていきたいと考えている。