講演情報
[15-O-G001-04]持ち上げない移乗介助を目指して~福祉用具導入のあり方を考える~
*大川 和也1、山口 幸平1 (1. 新潟県 介護老人保健施設楽山苑)
目的:ボードを使用する事で、職員・利用者双方が安全で安楽な移乗介助を学び、毎日実践出来る。方法:全介護職員にスライディングボードの研修を実施し、試験合格者から、実際に使用し、研究後、分析・評価する。結果・考察:スライディングボード使用前は不安や一部使用に否定的意見も聞かれたが、研究後は今後も使用したい92・3%見られ、スライディングボードに対する理解、職員の意識の変化・意欲向上が見られた。
<はじめに> 当苑では研修会等で福祉用具について学んでいるが、移乗介助は職員が利用者の体を抱えたり持ち上げながら行っており、実際に使用する機会がないのが現状であった。そこで今回初めてスライディングボード(以下、ボード)を導入し、安全に使用できるようリハビリ専門職による移乗支援の介入とボードを取り入れた介助指導を行った。環境調整や使用法を検討する中で、ボードを使用する準備の手間より人力で行う方が容易と考えている職員もある中、アンケート調査を実施し職員及び利用者の負担軽減と意識変化が見られたので報告する。<研究研究目的> ボードを使用する事で、職員・利用者双方が安全で安楽な移乗介助を学び、職員が毎日実践できる。<研究方法>1. 期間 2023.3.7~2023.7.312. 対象 ・療養棟介護職員(13名) ・研究の趣旨を説明し、本人及び家族より同意を得られた利用者3名(A.B.C様)とする。A様 要介護度5 男性82歳 長身 標準体型 自力での寝返り困難で、右下肢伸びて拘縮している。B様 要介護度5 男性80歳 長身 標準体型 自力で動くことが少なく、動かされることに対して、防御的になり拒否的。C様 要介護度5 認知症自立度4 障害自立度B2 女性93歳 小柄 痩せ型 自力で寝返り困難で立位不可。<研究の流れ>1ボードの使用方法をリハビリ職員より研究メンバーへ伝達。研修を行い、技術の統一を図る。 3/7~3/31 2 研究メンバーより職員へ順次研修を実施。 チェック表を用いながら、チェック項目に沿って評価・採点を、実施。 4/5~5/23 環境整備後職員にアンケート用紙を配布し、身体状態と介護業務に対する負担、ボードに関する意見を調査する。4/20~4/284最終試験をリハビリ職員と研究メンバーとで、チェック表を用いて実施。 4/24~5/15対象者居室内にボードを設置し、試験合格者よりボードを使用し移乗介助を開始する。 5/1~7/316研究期間後のアンケート用紙を配布し、ボード使用後の身体的変化と使用しての意見・感想を調査する。 6/10~6/18<分析方法> 調査期間の結果から実施率・実施時間・実施項目を集計し、アンケート回答と併せて評価する。<倫理的配慮> この研究の移乗介助の方法を対象者と家族に口頭で説明。また介助時の写真撮影の協力、院内外研究発表のために使用することを説明し同意を得た。<アンケート結果> 事前のアンケート 各項目で多くみられた回答 ・身体に痛みを感じる76.9%・痛みの部位(腰) 61.5%・介護業務で負担を感じる84.6%・負担を感じる介護業務 移乗 76.9%・ボードを使用して身体の痛みの軽減を期待する。92.3% 特に身体では腰 業務では移乗介助に負担を感じている回答が多かったが、ボードの使用にて、負担軽減に期待する回答多く見られた。 研究期間後のアンケート ・身体に痛みを感じる76.9%・痛みの部位 腰61.5%・以前からの痛み84.6%・ボードを使用した後痛みに変化なし69.2%・ボードを使用して移乗介助の負担が減った61.5%・ボードを今後も使用したい92.3%<研究結果 考察>今回、スライディングボードを取り入れる取り組みで、対象の利用者様の拒否なく実施する事が出来た。事前の調査から身体の痛みの軽減を期待する一方、ボードついて知らない職員が多く、不安な面や使用に否定的な意見も聞かれていましたが、実施していく上で「慣れるとやりやすい」や移乗介助時に2人で行っている介助も安全に1人で行う事が出来るようになったと意見も聞かれるようになり、調査後のアンケートでも、今後も使用を続けたい92・3%見られるようになった。実際には身体に痛みを感じるに関しては、研究前と後の調査では変化がなかったが、ボードを使用しての移乗介助の負担が減ったと答えた方が(61・5%)約6割の結果が見られ、限られた期間の為、今後継続して行くことにより改善へ期待が出来ると思われる。研修を通し、ボードに対し職員全体で取り組みを行い、ボードに対する理解が高まり、意識の変化、意欲向上に繋がった。長期的に継続する事により、職員の移乗介助の負担軽減に期待できるのではないかと思われる。