講演情報

[15-O-G001-05]福祉用具の活用~腰痛予防に向けた取り組み~

*宮内 崇1、佐藤 亜希美1、北澤 信野1、依田 孝弘1、畠山 奈緒1 (1. 長野県 介護老人保健施設 安寿苑)
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職員の腰痛予防を目的に、福祉用具の活用に取り組んだ活動を報告する。5階フロア職員を対象に福祉用具活用の使用前と後に身体的負担をアンケート調査した。結果、「楽になった」67%、「変わらない」33%の結果となった。調査期間は短期間であったが、効果の有効性を感じ、今回の取り組みをきっかけに用具の活用を標準化し長期的に活用することで、利用者様の身体的な負担軽減と職員の腰痛改善に繋がるよう取り組みたい。
【経緯】
 介護老人保健施設は介護度・医療依存度の高い利用者様も多く、移乗や入浴介助等、介護者の身体的負担も大きく、慢性的な腰痛に悩まされる職員も多い。
 また離職の要因の一つにもなっており、法人内でも勉強会で腰痛予防の取り組みを行っている。今回、安寿苑では職員の腰痛予防の一つとして福祉用具の活用に目を向け、取り組む事とした。

【現状】
 安寿苑には福祉用具としてスライディングシート、トランスファーボード、入浴リフトがある。しかし施設内で活用が出来ていない現状がある。

【調査対象及び方法】
 安寿苑職員5階フロア(暖・絆)・6階フロア(輝・響)の4グループで構成。
 身体介助が多い5階フロアを調査対象とした。
1.アンケート調査:社内ツールを活用し、5階フロア職員(16名)にアンケートを実施。
 1)基本情報:職業形態/年齢/性別/継続年数。
 2)腰痛や痛みの現状調査:腰痛有無/腰痛歴/腰痛が生じる動作/痛みの度合い
   腰痛タイプ/その他痛みのある箇所/対処方法
2.福祉用具について:施設内の福祉用具についての認識/使用有無/使用しない理由
  福祉用具使用の調査期間:1.スライディングシート:3月4日~24日(21日間
              2.入浴リフト:3月11日~24日(14日間

【使用前アンケート結果】
・腰痛あり:76% 主に腰痛を生じる動作は、中腰を伴う介助全般。
・福祉用具がある事を把握しているが、使用方法が分からない、使わない方が楽で早い、面倒などの理由から実際に使用している職員は12%程度であった。

【使用方法の周知・状況】
・福祉用具使用の定着に向け、グループで対象者を数名選定した。
・スライディングシートの使用方法は動画研修を行い、スライディングシートを対象者の居室に設置。(職員が居室へ訪室した際に物品が職員の見える場所に置く。
・施設内の朝・夕方の申し送りで使用を促した。
・入浴リフトの使用マニュアルを作成し、選定した利用者様を対象に使用した。

【使用後アンケート結果】
スライディングシート使用・「簡単」と感じた職員が69%であった。
・体全体ではなく一部敷くだけで動かす事ができ、扱い易いと感じた。
・夜間の体位交換時の睡眠の妨げの軽減に繋がったり、皮膚が脆弱の方はケガの予防にもなると感じた。
・楽に体位交換が出来たが、腰の負担は変わらなかった。まだ慣れないとの感想もあった。
入浴リフトの使用
・「簡単」50%、「普通」50%の結果となった。
・慣れてしまえば腰の負担軽減に繋がると思う。
・継続して使用出来る環境を整えていく必要があると思う。
・利用者様の恐怖心もあり確認が必要だと感じた、体が緊張して突っ張ってしまう方には使用が難しい事が分かった。
調査期間後の腰への負担は「楽になった」67%、「変わらない」33%という結果であった。
スライディングシート・リフトとも体への負担は少なかったが、中腰姿勢を伴うため腰痛自体は大きく変わらない方もいた。

【今後について】
・今回の活動で福祉用具の適切な使用方法と理解に繋がった。
・調査及び使用期間が限られ、職員の長期的な腰痛の改善には、継続して検証し使用していくことが今後の目標である。
・使用を継続するために、スライディングシートは介助が必要な方の居室に置き、いつでも使用出来るようにする。
・福祉用具の使用に不安を感じた利用者様には、使用前の声がけと説明を繰り返し行い使用することで職員・利用者様ともに慣れていただく。
・入浴リフトは、グループ会議や委員会で、利用者様・職員の身体的負担軽減を目的に安全に使用出来る利用者様を選定し、使用の定着を図る。
・施設全体で長期的に福祉用具を活用し、職員の腰痛予防となるよう、継続して取り組みたい。