講演情報
[15-O-Z001-06]稼働率アップへのアプローチできないからできるへの意識改革
*古屋 力斗1、鴫山 峰大1 (1. 愛知県 医療法人桂名会名東老人保健施設)
超強化型老健として運営を行っていたが、安定したベッド稼働率は維持できておらず経営状況は不安定であった。また、現場職員の意識は低く、個別性を尊重した利用者主体のケアとはほど遠いケアが提供されていた。そこで、運営の在り方、現場の改善に取り組んだ結果、稼働率95%以上を維持した施設運営が可能となった。5年の月日をかけ、様々なアプローチを行った結果、目覚ましい変貌を遂げた施設の姿をまとめ、ここに報告する。
背景
当施設は平成31年3月1日から超強化型老健として運営を行ってきた。ベッド稼働率は80%前後を推移していたが、在宅復帰率を維持することが最優先であったため、相談員ですら、稼働率を意識することはなかった。また、認知症の周辺症状が目立つ方、介護量の多い方、医療依存度の高い方、家族対応が難しい方の受け入れ意識は低く、職員目線での判断がなされていた。退所に関しても、「老健の対象ではない」「当所の施設には合わない」等もっともらしい理由をつけ、退所をすすめてしまうケースが多発した。現場から、満床に程遠い人数でも「入所者が多い」「人数が多くて対応できない」との否定的な声が上がり、受け入れを左右することがあった。このように現場職員の意識は低く、実際の業務においても、不適切な言葉がけ、ケアが慢性的に提供されていた。
この施設の状態に対して、疑問を持ち、改善しようと努力してきた職員はいたが、そうでない職員が圧倒的に多く、小さな改善すらままならず、悔しい気持ちを持ちながら業務をこなすか、やめていくかの選択を強いられていた。そんな中、大きく人事が変わり、様々な改善活動やアプローチを行える環境が作られた。これにより、徐々に職員の意識が変わり、安定した施設運営につながったため、その過程をここに報告する。
取り組みと結果
最初に、健全で安定した施設運営を目的とした方針と数値目標の設定を行った。数値の達成に向け、営業活動を強化。簡素化した空床案内を毎週、病院及び居宅事業所にFAX。定期的な訪問営業を行った。また、新規問い合わせは可能な限り受け入れられるように意識を変えた。こうした地道な行動が、問い合わせ件数が格段に増加したと考えられる。以前の在宅復帰率に固執し、退所先や退所人数を調整するのではなく、ベッド回転率や稼働率を意識した入退所調整にシフトさせた。結果、まだまだ不十分ではあるが、稼働率95%の維持につながっていると考えられる。
自宅に戻られた利用者に関しては、ご家族や居宅ケアマネとの連携を図りながら、通所やショートステイだけではなく、定期的な施設入所、時期的な施設入所を提案。家族のレスパイトや、短期集中リハビリ実施によるADL改善、維持に努め、在宅生活を継続できるよう支援。
開かれた老健を目指し、地域貢献活動の一環として認知症カフェ、予防サロン、買い物送迎サービス、オムツの宅配、販売(当所利用者に限る)、ランチ提供を実施。施設を知っていただくことが、将来の利用者確保及び職員確保につながると信じ、仕組みづくりを行っている。
大きな問題であった職員の意識低下に関しては、接遇の見直しを行い、最低限丁寧語を使用することを徹底した。作業的であった入浴介助をマンツーマンで行うように改革。衣類を選ぶところから、フロアに戻るまでを一人の職員が援助するようにした。分業制の意識は、個別性へと変化した。また、入浴回数、週2回の制限をなくし、利用者のニーズに沿える体制つくりに着手した。介護士がフロアで行う生活リハビリを実施、職員がより個々の利用者に寄り添える仕組みを導入した。これにより、リハビリはリハビリ職員が行うものという意識が変化した。
まとめ
現場職員の意識は確実に利用者主体に移行し、前向きに業務に取り組む職員が増加した。多職種間での情報共有、意見交換も盛んになり、施設全体が受け入れを前向きにとらえられるように変化していった。できないことを掲げていた職員は減り、できることを考えられる施設へ変化した結果、稼働率が15%増加したと考えられる。
今はもう数値を意識しない相談員、ケアマネ、主任はいない。まだまだ、数値管理が思うようには進んでないこと、ロスベッドを減らしていけないこと、丁寧語が徹底していないことなど問題はたくさん残っている。
5年という月日は要したが、着実に前進している私たちであれば、この問題もいつかクリアになると信じ、一歩ずつ進み、いつか「名古屋で一番の老健になる」を達成したいと考え、ここに報告した。
当施設は平成31年3月1日から超強化型老健として運営を行ってきた。ベッド稼働率は80%前後を推移していたが、在宅復帰率を維持することが最優先であったため、相談員ですら、稼働率を意識することはなかった。また、認知症の周辺症状が目立つ方、介護量の多い方、医療依存度の高い方、家族対応が難しい方の受け入れ意識は低く、職員目線での判断がなされていた。退所に関しても、「老健の対象ではない」「当所の施設には合わない」等もっともらしい理由をつけ、退所をすすめてしまうケースが多発した。現場から、満床に程遠い人数でも「入所者が多い」「人数が多くて対応できない」との否定的な声が上がり、受け入れを左右することがあった。このように現場職員の意識は低く、実際の業務においても、不適切な言葉がけ、ケアが慢性的に提供されていた。
この施設の状態に対して、疑問を持ち、改善しようと努力してきた職員はいたが、そうでない職員が圧倒的に多く、小さな改善すらままならず、悔しい気持ちを持ちながら業務をこなすか、やめていくかの選択を強いられていた。そんな中、大きく人事が変わり、様々な改善活動やアプローチを行える環境が作られた。これにより、徐々に職員の意識が変わり、安定した施設運営につながったため、その過程をここに報告する。
取り組みと結果
最初に、健全で安定した施設運営を目的とした方針と数値目標の設定を行った。数値の達成に向け、営業活動を強化。簡素化した空床案内を毎週、病院及び居宅事業所にFAX。定期的な訪問営業を行った。また、新規問い合わせは可能な限り受け入れられるように意識を変えた。こうした地道な行動が、問い合わせ件数が格段に増加したと考えられる。以前の在宅復帰率に固執し、退所先や退所人数を調整するのではなく、ベッド回転率や稼働率を意識した入退所調整にシフトさせた。結果、まだまだ不十分ではあるが、稼働率95%の維持につながっていると考えられる。
自宅に戻られた利用者に関しては、ご家族や居宅ケアマネとの連携を図りながら、通所やショートステイだけではなく、定期的な施設入所、時期的な施設入所を提案。家族のレスパイトや、短期集中リハビリ実施によるADL改善、維持に努め、在宅生活を継続できるよう支援。
開かれた老健を目指し、地域貢献活動の一環として認知症カフェ、予防サロン、買い物送迎サービス、オムツの宅配、販売(当所利用者に限る)、ランチ提供を実施。施設を知っていただくことが、将来の利用者確保及び職員確保につながると信じ、仕組みづくりを行っている。
大きな問題であった職員の意識低下に関しては、接遇の見直しを行い、最低限丁寧語を使用することを徹底した。作業的であった入浴介助をマンツーマンで行うように改革。衣類を選ぶところから、フロアに戻るまでを一人の職員が援助するようにした。分業制の意識は、個別性へと変化した。また、入浴回数、週2回の制限をなくし、利用者のニーズに沿える体制つくりに着手した。介護士がフロアで行う生活リハビリを実施、職員がより個々の利用者に寄り添える仕組みを導入した。これにより、リハビリはリハビリ職員が行うものという意識が変化した。
まとめ
現場職員の意識は確実に利用者主体に移行し、前向きに業務に取り組む職員が増加した。多職種間での情報共有、意見交換も盛んになり、施設全体が受け入れを前向きにとらえられるように変化していった。できないことを掲げていた職員は減り、できることを考えられる施設へ変化した結果、稼働率が15%増加したと考えられる。
今はもう数値を意識しない相談員、ケアマネ、主任はいない。まだまだ、数値管理が思うようには進んでないこと、ロスベッドを減らしていけないこと、丁寧語が徹底していないことなど問題はたくさん残っている。
5年という月日は要したが、着実に前進している私たちであれば、この問題もいつかクリアになると信じ、一歩ずつ進み、いつか「名古屋で一番の老健になる」を達成したいと考え、ここに報告した。