講演情報
[15-O-Z002-01]これからの介護老人保健施設の在り方の再考全老健大会における自身の発表演題の変遷より
*椿野 由佳1 (1. 兵庫県 介護老人保健施設ウエルハウス西宮)
2009年の全老健新潟大会における発表から15年、筆者はほぼ毎年発表をする機会を得た。その演題から見える老健の動きや向かうべき方向を振り返るとともに再考したことを報告する。
【はじめに】
2009年の全老健新潟大会での発表から15年、筆者はほぼ毎年発表をする機会を得た。その演題から見える老健の動きや向かうべき方向を振り返るとともに再考したことを報告する。
【発表演題・概要】
2009年新潟大会
「認知症短期集中リハビリテーション(以下、認短リハ)を開始して」~当施設の取組み~
2008年の介護報酬改定で加算算定が認められた認短リハであったが、その効果判定や人員配置などが難しく当初は全国で3%程度の取得率であった。現在では多くの老健で算定され、今年度の改定では、在宅での生活課題に焦点が当てられ在宅訪問が加算増収に必須となった。その背景には認知症患者の受け入れを積極的に実施してきた老健の取組みに対して、評価されただけでなく質の向上を更に求められていることがある。
2010年岡山大会
「あなたならどこから始めますか?」~リスクマネジャーの奮闘記~
2009年に創設された全老健リスクマネジャー資格を取得し、老健における多岐にわたるリスクに対してリスクマネジャーとして施設での取組みを発表、翌年には東日本大震災が起こり、日常から施設・地域を含めた防災意識の必要性をあらかじめ強化できたことは大きかった。
2012年沖縄大会
震災により岩手大会が中止となり、発表予定していた演題と合わせて2題の発表を行った。
1.「短期集中リハ終了後の関わりを考える」~活動量の低下を防ぐために~
短期集中リハの算定が始まって5年、短期集中リハ期間を終了した利用者の活動量低下の課題について報告した。実際に意識的に関わらないと廃用まではいかずとも活動量が低下していることが多かった。当時短期集中終了後は週2回のリハビリ(以下、リハ)、うち1回は集団でも可能であったため、戦略的な多職種連携による生活リハが改めて求められた。
2.「もっともっと近づこう!きっと近づけるはず!」~リハと療養棟の連携を妨げるもの~
連携の現状について課題抽出し、他職種にアンケートを実施した。その中でケアにおいて共通言語が交わされていないこと、またセラピスト(以下、Th)個人の対応力の差が指摘された。当時短期集中リハ取得のためThが増員されたが、介護保険域に慣れないThが多く、病院で使用されることの多いリハ専門用語がより壁を高くしている現状も見えた。療養棟スタッフは利用者の24時間を明らかにThよりも把握しており、実際に在宅での多くの課題についても、Thが把握できていない現状を知ることができた。当時この壁を低くするため、Thが夜勤体験をし、療養棟との新たな連携方法を開拓した。
2015年横浜大会
「地域包括ケアシステムの中でリハ職に求められるもの」~居宅ケアマネに伝えたいこと~
前年度に発表した地域ケア会議に続き、老健が地域包括ケアシステムに果たす役割だけでなく、居宅ケアマネに情報を効率的かつ効果的に提供することがその後の利用者の在宅継続に大きく影響することがわかった。一方的な情報提供でなく、双方向での交流を行っていくための課題があがり、これらは2024年改定の退院時共同加算にもつながっている。
2016年大阪大会
「医療と介護をつなぐリハビリテーション連携」~回復期セラピストの実地研修を受入れて~
大会テーマである「咲かせよう医療と介護の大輪の花」にちなみ医療と介護の連携について当法人が実施している病院Thの老健研修について発表した。病院退院時カンファレンスにて、退院後の在宅サービスが提案されるが、Thのほとんどが老健や介護保険領域について知らないことが多く、サービス提供側の専門職が専門知識を得る必要性に課題を投げかけた。
2017年愛媛大会
「すべてがリハビリ、24時間をトータルに考える!」~利用者が自主的に動くしくみ作り~
通所サービスが乱立し、通所リハビリとの差別化を図るため、多職種での生活リハにThがどうマネジメントしていくかを強く問われ始めた。受け身のリハから、生活行為向上マネジメントに見られるような能動的な自立支援に向けて、通所リハビリでの取組みを発表した。利用者自身での血圧測定や配茶などを実施し、当初はサービスが悪くなったという利用者の声も聞かれたが、Thによる個別リハからリハビリテーションマネジメント(以下、リハマネジメント)の概念を施設内多職種にも浸透できる機会となった。
2018年埼玉大会
「在宅復帰から在宅継続を見据えたかかわり」~本人のやりたい想いを多職種で支える・つなげる~
リハマネジメントを形にするため、通所だけでなく入所者における能動的な目標達成に取り組んだ。ただ家に帰りたいから、家に帰って何をしたいのか具体的な目標立案を利用者や家族とともに共有し、超強化型施設として在宅復帰をされる方の目標確認を早期から実施し、在宅生活に繋げやすくした。
【まとめ】
以上のことから、この15年間の老健の動向は、特養待ちと言われ続けた時代から在宅復帰超強化型施設としてそのベクトルが大きく動いた。演題は時代を映す鏡として様々な課題を浮き彫りにしており、私自身も大会参加、発表で自身や自身の施設の方向性を振り返る機会として活用できた。この間大阪大会、兵庫大会では実行委員としても参加し、その熱気を内側から発信する貴重な経験もできた。改めて発表を振り返ると、老健が求められてきた役割に多くの老健が丁寧に対応してきたことを再認識できるが、求められる課題が多く多岐に渡っており、また日本の高齢化の速度も相まって多難となっている。その大きな要因の一つとして人材不足もあるため、今後はDX化の情報をしっかりと取り入れ、新たな老健での働き方に焦点を当て利用者満足に繋げていきたい。
以下、3大会は演題のみ、発表内容は省略する。
2014年岩手大会
「地域ケア会議に出よう」
2019年別府大分大会
「100歳が在宅生活を継続するということ」
2023年宮城大会
「回復期リハビリ病棟と協働して行うリハビリ継続支援」
2009年の全老健新潟大会での発表から15年、筆者はほぼ毎年発表をする機会を得た。その演題から見える老健の動きや向かうべき方向を振り返るとともに再考したことを報告する。
【発表演題・概要】
2009年新潟大会
「認知症短期集中リハビリテーション(以下、認短リハ)を開始して」~当施設の取組み~
2008年の介護報酬改定で加算算定が認められた認短リハであったが、その効果判定や人員配置などが難しく当初は全国で3%程度の取得率であった。現在では多くの老健で算定され、今年度の改定では、在宅での生活課題に焦点が当てられ在宅訪問が加算増収に必須となった。その背景には認知症患者の受け入れを積極的に実施してきた老健の取組みに対して、評価されただけでなく質の向上を更に求められていることがある。
2010年岡山大会
「あなたならどこから始めますか?」~リスクマネジャーの奮闘記~
2009年に創設された全老健リスクマネジャー資格を取得し、老健における多岐にわたるリスクに対してリスクマネジャーとして施設での取組みを発表、翌年には東日本大震災が起こり、日常から施設・地域を含めた防災意識の必要性をあらかじめ強化できたことは大きかった。
2012年沖縄大会
震災により岩手大会が中止となり、発表予定していた演題と合わせて2題の発表を行った。
1.「短期集中リハ終了後の関わりを考える」~活動量の低下を防ぐために~
短期集中リハの算定が始まって5年、短期集中リハ期間を終了した利用者の活動量低下の課題について報告した。実際に意識的に関わらないと廃用まではいかずとも活動量が低下していることが多かった。当時短期集中終了後は週2回のリハビリ(以下、リハ)、うち1回は集団でも可能であったため、戦略的な多職種連携による生活リハが改めて求められた。
2.「もっともっと近づこう!きっと近づけるはず!」~リハと療養棟の連携を妨げるもの~
連携の現状について課題抽出し、他職種にアンケートを実施した。その中でケアにおいて共通言語が交わされていないこと、またセラピスト(以下、Th)個人の対応力の差が指摘された。当時短期集中リハ取得のためThが増員されたが、介護保険域に慣れないThが多く、病院で使用されることの多いリハ専門用語がより壁を高くしている現状も見えた。療養棟スタッフは利用者の24時間を明らかにThよりも把握しており、実際に在宅での多くの課題についても、Thが把握できていない現状を知ることができた。当時この壁を低くするため、Thが夜勤体験をし、療養棟との新たな連携方法を開拓した。
2015年横浜大会
「地域包括ケアシステムの中でリハ職に求められるもの」~居宅ケアマネに伝えたいこと~
前年度に発表した地域ケア会議に続き、老健が地域包括ケアシステムに果たす役割だけでなく、居宅ケアマネに情報を効率的かつ効果的に提供することがその後の利用者の在宅継続に大きく影響することがわかった。一方的な情報提供でなく、双方向での交流を行っていくための課題があがり、これらは2024年改定の退院時共同加算にもつながっている。
2016年大阪大会
「医療と介護をつなぐリハビリテーション連携」~回復期セラピストの実地研修を受入れて~
大会テーマである「咲かせよう医療と介護の大輪の花」にちなみ医療と介護の連携について当法人が実施している病院Thの老健研修について発表した。病院退院時カンファレンスにて、退院後の在宅サービスが提案されるが、Thのほとんどが老健や介護保険領域について知らないことが多く、サービス提供側の専門職が専門知識を得る必要性に課題を投げかけた。
2017年愛媛大会
「すべてがリハビリ、24時間をトータルに考える!」~利用者が自主的に動くしくみ作り~
通所サービスが乱立し、通所リハビリとの差別化を図るため、多職種での生活リハにThがどうマネジメントしていくかを強く問われ始めた。受け身のリハから、生活行為向上マネジメントに見られるような能動的な自立支援に向けて、通所リハビリでの取組みを発表した。利用者自身での血圧測定や配茶などを実施し、当初はサービスが悪くなったという利用者の声も聞かれたが、Thによる個別リハからリハビリテーションマネジメント(以下、リハマネジメント)の概念を施設内多職種にも浸透できる機会となった。
2018年埼玉大会
「在宅復帰から在宅継続を見据えたかかわり」~本人のやりたい想いを多職種で支える・つなげる~
リハマネジメントを形にするため、通所だけでなく入所者における能動的な目標達成に取り組んだ。ただ家に帰りたいから、家に帰って何をしたいのか具体的な目標立案を利用者や家族とともに共有し、超強化型施設として在宅復帰をされる方の目標確認を早期から実施し、在宅生活に繋げやすくした。
【まとめ】
以上のことから、この15年間の老健の動向は、特養待ちと言われ続けた時代から在宅復帰超強化型施設としてそのベクトルが大きく動いた。演題は時代を映す鏡として様々な課題を浮き彫りにしており、私自身も大会参加、発表で自身や自身の施設の方向性を振り返る機会として活用できた。この間大阪大会、兵庫大会では実行委員としても参加し、その熱気を内側から発信する貴重な経験もできた。改めて発表を振り返ると、老健が求められてきた役割に多くの老健が丁寧に対応してきたことを再認識できるが、求められる課題が多く多岐に渡っており、また日本の高齢化の速度も相まって多難となっている。その大きな要因の一つとして人材不足もあるため、今後はDX化の情報をしっかりと取り入れ、新たな老健での働き方に焦点を当て利用者満足に繋げていきたい。
以下、3大会は演題のみ、発表内容は省略する。
2014年岩手大会
「地域ケア会議に出よう」
2019年別府大分大会
「100歳が在宅生活を継続するということ」
2023年宮城大会
「回復期リハビリ病棟と協働して行うリハビリ継続支援」