講演情報
[15-O-Z002-05]当施設における障がいに対する理解度向上の取り組み通所利用者と職員へのアンケートによる前後比較
*仮谷 妃呂子1、高木 潤1、西岡 博之1 (1. 三重県 介護老人保健施設みずほの里)
通所建物内で障がい者の就労継続支援事業を開設し,通所利用者と職員の障がいに対する理解度向上を目的に,講話や啓発ポスターの掲示などの取り組みを行いアンケート調査で前後比較を行った.その結果,通所利用者では一部に優位差を認め,職員においては障がいに対する理解は優位に向上した.事業開始後まだ日が浅く,今後互いの理解を深める共生社会の構築を目指し取り組みを継続していきたい.
【はじめに】
令和6年度の報酬改定は医療,介護,障害福祉のトリプル改定で,各サービスの連携がさらに促進される内容となった.今回,当法人は障害福祉の就労継続支援事業(A型,B型)を通所リハビリテーション(以下,通所)の建物内で開設することとなり,通所利用者と職員に対し障がいの理解度向上を目的に,講話や啓発ポスターの掲示などの取り組みを行い,アンケート調査で前後比較を行ったので以下に報告する.
【対象と方法】
通所利用者133-139名と職員65-69名を対象とし,障がいや共生社会に関する講話(利用者2回,職員3回)と文書配布,通所建物内に啓発ポスターの掲示の取り組みを行った.取り組み期間は3~5月で,その前後の2月と6月に内閣府の共生社会アンケートを基に作成したアンケート調査を行い比較した.
アンケート内容は1)共生社会という言葉を知っていますか2)共生社会の考え方についてどう思いますか3)社会において差別や偏見はあると思いますか4)あなた自身において差別や偏見はあると思いますか5)障がいに関するイメージなど自由に書いてくださいとし,各設問において4~5段階評価とした.
【結果】
取り組み前アンケートは通所利用者139名職員65名,取り組み後は利用者133名職員69名が回答した.通所利用者では1)~4)の設問において取り組み後に肯定的な意見が増加し,2項分布の検定でみると一部に有意差を認め,職員では設問1)と3)において取り組み後に肯定的な意見が増加し,統計上で有意差を認めた(危険率α=0.05).障がいに関するイメージの自由記述で利用者からは「自分も障がい者,誰もが差別なく生活できたらと思う」「頑張っている人は応援したい」など,職員からは「身近に障がい者がおり,障がい者もそうでない人も基本的に同じで変わらない」「みんなが生きやすくなれば良い」といった肯定的な意見が前後を通して多かった.
【考察】
今回の取り組みにより,通所利用者と職員において障がいに対する理解度が充分に向上したとは言い難い結果となった.その要因としては,就労継続支援事業の開設が当初の予定より1か月遅延してしまい取り組み期間が短くなってしまったこと,そして事業を開始後まだ日が浅く障害福祉の利用者と通所利用者や職員との交流も充分でないことが考えられた.しかし,就労継続支援事業の利用者がまだ3名と少ないにもかかわらず,当通所と他就労継続支援事業を併用していた利用者が当事業所の併用へと切り替えた事例を経験し,利用者にとってなじみのある環境と職員で切れ目なく支援できることの強みを感じた.また,今後の展望として,就労意欲があるが一般就労は難しい通所利用者の卒業先としても活用できることを期待し,双方の利用者の交流の場を作りながら,互いの理解を深めていく共生社会の構築を目指していきたい.
令和6年度の報酬改定は医療,介護,障害福祉のトリプル改定で,各サービスの連携がさらに促進される内容となった.今回,当法人は障害福祉の就労継続支援事業(A型,B型)を通所リハビリテーション(以下,通所)の建物内で開設することとなり,通所利用者と職員に対し障がいの理解度向上を目的に,講話や啓発ポスターの掲示などの取り組みを行い,アンケート調査で前後比較を行ったので以下に報告する.
【対象と方法】
通所利用者133-139名と職員65-69名を対象とし,障がいや共生社会に関する講話(利用者2回,職員3回)と文書配布,通所建物内に啓発ポスターの掲示の取り組みを行った.取り組み期間は3~5月で,その前後の2月と6月に内閣府の共生社会アンケートを基に作成したアンケート調査を行い比較した.
アンケート内容は1)共生社会という言葉を知っていますか2)共生社会の考え方についてどう思いますか3)社会において差別や偏見はあると思いますか4)あなた自身において差別や偏見はあると思いますか5)障がいに関するイメージなど自由に書いてくださいとし,各設問において4~5段階評価とした.
【結果】
取り組み前アンケートは通所利用者139名職員65名,取り組み後は利用者133名職員69名が回答した.通所利用者では1)~4)の設問において取り組み後に肯定的な意見が増加し,2項分布の検定でみると一部に有意差を認め,職員では設問1)と3)において取り組み後に肯定的な意見が増加し,統計上で有意差を認めた(危険率α=0.05).障がいに関するイメージの自由記述で利用者からは「自分も障がい者,誰もが差別なく生活できたらと思う」「頑張っている人は応援したい」など,職員からは「身近に障がい者がおり,障がい者もそうでない人も基本的に同じで変わらない」「みんなが生きやすくなれば良い」といった肯定的な意見が前後を通して多かった.
【考察】
今回の取り組みにより,通所利用者と職員において障がいに対する理解度が充分に向上したとは言い難い結果となった.その要因としては,就労継続支援事業の開設が当初の予定より1か月遅延してしまい取り組み期間が短くなってしまったこと,そして事業を開始後まだ日が浅く障害福祉の利用者と通所利用者や職員との交流も充分でないことが考えられた.しかし,就労継続支援事業の利用者がまだ3名と少ないにもかかわらず,当通所と他就労継続支援事業を併用していた利用者が当事業所の併用へと切り替えた事例を経験し,利用者にとってなじみのある環境と職員で切れ目なく支援できることの強みを感じた.また,今後の展望として,就労意欲があるが一般就労は難しい通所利用者の卒業先としても活用できることを期待し,双方の利用者の交流の場を作りながら,互いの理解を深めていく共生社会の構築を目指していきたい.