講演情報
[15-O-A010-03]起立性低血圧を乗り越えて~もう一度釣りに行きたい~
*千頭 俊也1、土本 典子1、平下 英延1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設ひざし)
起立性低血圧症による意識消失によってベッド上生活を余儀なくされ、意欲低下が見られたご利用者が、ICT機器を活用し多職種での連携をしながらケア方法の統一を図った所、車椅子での生活に移行する事が出来た。また釣りに行きたいとご本人の意欲も向上した為目標を在宅復帰に変更。段階的にレベルアップを図り家族とも連携を取りながら支援を続けた結果、杖歩行が出来るまでに回復し在宅復帰に繋がった事例を報告する。
<始めに>
起立性低血圧によって自宅で寝たきりの生活を余儀なくされた要介助者に対し、当施設入所後に多職種共同のもと自立支援の取り組みを提供したところ、症状の軽減及びADLの向上を認め在宅復帰されるまでに回復し、退所後にはご本人の念願であった魚釣りに行く事が出来るまで回復した事例について報告する。
<対象者・入所前経過>
Y様 男性 81歳 要介護度4
平成30年10月にパーキンソン病発症。令和4年3月に発作性心房細動や起立性低血圧により意識消失を認め緊急搬送されるも入院には至らず自宅療養となる。
その後、介護保険を申請され要介護4の認定を受け、在宅サービスを利用。意識消失や眩暈などの恐れから24時間ベッド上での生活(ギャッジアップ最大30度)をされるようになった。
本人のリハビリをして再び歩けるようになりたいという強い希望から、令和4年9月老健入所の運びとなる。
<入所時の状況>
排泄・移動・入浴:全介助、食事:自己摂取可、着脱:一部介助、HDS-R 20点
手足は動かせるが眩暈や意識消失の恐れがあり生活全般に見守り・介助が必要な状態。
<目標>
本人の希望: 「足に力が付くと嬉しい。再び歩けるようになって釣りに行きたい」
家族の希望: 「少しでも足に力がついてほしい」
「起立性低血圧が改善し座位姿勢を保てるようになってほしい」
目標: 体調の把握と改善(低血圧の改善、食事摂取量の安定、嘔吐の低減)
安定した座位姿勢を保てるようになる
<目標に向けた支援>
・入所前訪問指導実施。
・記録ソフトシステムを活用しバイタル値、食事摂取量、体調不良の有無、生活状況等を細かに記録し、多職種で情報の共有を実施。
・食事摂取量の安定と増加を目指し、管理栄養士と共同し、本人が自己摂取しやすい食べ物の提供及び食事台に角度をつけて大きくギャッジアップしなくとも自己摂取ができるように環境調整を実施。
・見守り器機を使用し睡眠状態を把握。不眠時にスタッフによる声かけや汗拭き、クーリング、空調の調整を細やかに実施。
・理学療法士にてギャッジアップ負荷テストを提供し、気分不快が生じないギャッジアップ角度の把握や座位姿勢訓練等を提供。
<経過>
【令和4年10月~令和5年1月】
●収縮期血圧値(一日2回測定)、100mmHg以下の日数
・10月→全日、11月→全日、12月→15日、1月→0日
●食事摂取量平均
・10月→3割程度、11月以降→全量摂取
●嘔吐回数
・10月→3回、11月→1回、12月→0回、以降嘔吐なし
●座位姿勢のリハビリ(11月より開始)
・11月→5~15分で気分不快あり
・12月→感染症対策にて一時中断
・ 1月→15~20分の座位が可能となる
・ 2月→30分ほどの座位保持が可能となる
車いすにて食堂へ移動し座位にて食事摂取が可能となる。
●令和5年2月に入所時目標を達成。
<目標の再設定及び支援実施>
入所時目標を達成した事から、Y様の希望であった在宅復帰が現実的となる。
本人・家族・多職種にて目標の再設定を行う。
目標:自宅に帰る。趣味であった魚釣りに行く。
・令和5年3月 平行棒内での立ち上がり訓練、歩行訓練開始。
入浴前の収縮期血圧値が100mmHg以上でシャワー浴からリフト浴可となる。
昼食時の離床及び本人希望時にトイレでの排泄介助開始。
4月 平行棒内歩行訓練6往復を3セット実施。
5月 夕食後までの離床時間の拡大。歩行器歩行訓練開始、90m歩行可能。
6月 杖歩行訓練開始、60m歩行可能。
7月 自宅にてサービス担当者会議開催。
8月 一日を通して自分のペースで離床、臥床ができるようになる。
トイレへの移動時に歩行器歩行を開始、排泄動作が自立。
9月 平行棒内歩行安定、歩行器歩行安定。
施設内での歩行器歩行時に見守り不要対応となる。
10月 屋外T字杖歩行が付き添いレベルで連続10分間可能となる。
退所前訪問指導実施。
(結果)
・令和5年11月5日 在宅復帰
・退所時ADL 食事:自立、排せつ:自立、移動:自立、着脱:自立、入浴:一部介助
HDS-R 25点
<考察・まとめ>
多職種共同で日々のバイタルチェックによる体調管理・食事摂取状況・生活状況を細やかに記録し情報共有をしながら変化に応じた目標の再設定・支援の提供を行った事により、起立性低血圧による意識消失が無くなり体調の安定、ADLの改善に繋がった。また、ご本人のモチベーションの維持とご家族の在宅復帰に対する不安軽減の支援を実施したことにより在宅復帰に繋がったと考える。
起立性低血圧によって自宅で寝たきりの生活を余儀なくされた要介助者に対し、当施設入所後に多職種共同のもと自立支援の取り組みを提供したところ、症状の軽減及びADLの向上を認め在宅復帰されるまでに回復し、退所後にはご本人の念願であった魚釣りに行く事が出来るまで回復した事例について報告する。
<対象者・入所前経過>
Y様 男性 81歳 要介護度4
平成30年10月にパーキンソン病発症。令和4年3月に発作性心房細動や起立性低血圧により意識消失を認め緊急搬送されるも入院には至らず自宅療養となる。
その後、介護保険を申請され要介護4の認定を受け、在宅サービスを利用。意識消失や眩暈などの恐れから24時間ベッド上での生活(ギャッジアップ最大30度)をされるようになった。
本人のリハビリをして再び歩けるようになりたいという強い希望から、令和4年9月老健入所の運びとなる。
<入所時の状況>
排泄・移動・入浴:全介助、食事:自己摂取可、着脱:一部介助、HDS-R 20点
手足は動かせるが眩暈や意識消失の恐れがあり生活全般に見守り・介助が必要な状態。
<目標>
本人の希望: 「足に力が付くと嬉しい。再び歩けるようになって釣りに行きたい」
家族の希望: 「少しでも足に力がついてほしい」
「起立性低血圧が改善し座位姿勢を保てるようになってほしい」
目標: 体調の把握と改善(低血圧の改善、食事摂取量の安定、嘔吐の低減)
安定した座位姿勢を保てるようになる
<目標に向けた支援>
・入所前訪問指導実施。
・記録ソフトシステムを活用しバイタル値、食事摂取量、体調不良の有無、生活状況等を細かに記録し、多職種で情報の共有を実施。
・食事摂取量の安定と増加を目指し、管理栄養士と共同し、本人が自己摂取しやすい食べ物の提供及び食事台に角度をつけて大きくギャッジアップしなくとも自己摂取ができるように環境調整を実施。
・見守り器機を使用し睡眠状態を把握。不眠時にスタッフによる声かけや汗拭き、クーリング、空調の調整を細やかに実施。
・理学療法士にてギャッジアップ負荷テストを提供し、気分不快が生じないギャッジアップ角度の把握や座位姿勢訓練等を提供。
<経過>
【令和4年10月~令和5年1月】
●収縮期血圧値(一日2回測定)、100mmHg以下の日数
・10月→全日、11月→全日、12月→15日、1月→0日
●食事摂取量平均
・10月→3割程度、11月以降→全量摂取
●嘔吐回数
・10月→3回、11月→1回、12月→0回、以降嘔吐なし
●座位姿勢のリハビリ(11月より開始)
・11月→5~15分で気分不快あり
・12月→感染症対策にて一時中断
・ 1月→15~20分の座位が可能となる
・ 2月→30分ほどの座位保持が可能となる
車いすにて食堂へ移動し座位にて食事摂取が可能となる。
●令和5年2月に入所時目標を達成。
<目標の再設定及び支援実施>
入所時目標を達成した事から、Y様の希望であった在宅復帰が現実的となる。
本人・家族・多職種にて目標の再設定を行う。
目標:自宅に帰る。趣味であった魚釣りに行く。
・令和5年3月 平行棒内での立ち上がり訓練、歩行訓練開始。
入浴前の収縮期血圧値が100mmHg以上でシャワー浴からリフト浴可となる。
昼食時の離床及び本人希望時にトイレでの排泄介助開始。
4月 平行棒内歩行訓練6往復を3セット実施。
5月 夕食後までの離床時間の拡大。歩行器歩行訓練開始、90m歩行可能。
6月 杖歩行訓練開始、60m歩行可能。
7月 自宅にてサービス担当者会議開催。
8月 一日を通して自分のペースで離床、臥床ができるようになる。
トイレへの移動時に歩行器歩行を開始、排泄動作が自立。
9月 平行棒内歩行安定、歩行器歩行安定。
施設内での歩行器歩行時に見守り不要対応となる。
10月 屋外T字杖歩行が付き添いレベルで連続10分間可能となる。
退所前訪問指導実施。
(結果)
・令和5年11月5日 在宅復帰
・退所時ADL 食事:自立、排せつ:自立、移動:自立、着脱:自立、入浴:一部介助
HDS-R 25点
<考察・まとめ>
多職種共同で日々のバイタルチェックによる体調管理・食事摂取状況・生活状況を細やかに記録し情報共有をしながら変化に応じた目標の再設定・支援の提供を行った事により、起立性低血圧による意識消失が無くなり体調の安定、ADLの改善に繋がった。また、ご本人のモチベーションの維持とご家族の在宅復帰に対する不安軽減の支援を実施したことにより在宅復帰に繋がったと考える。