講演情報
[15-O-A012-04]「在宅は無理だろう」原因の分析と今後の課題
*落合 佳子1 (1. 福井県 福井ケアセンター)
定期的に在宅復帰をしている利用者が、身体機能低下に伴い吸引が必要になった状態で自宅に帰る事になった。その過程の中で、利用者・家族の思いへの対応、職員の思い込み、施設としての職員への教育体制など、老健及び強化型としての問題が浮かび上がってきた。今回、その問題点に着目し、職員へのアンケートを取る事で、施設としての問題点・今後の課題が見えてきたので報告する。
【はじめに】
当施設は2022年から在宅強化型を維持しており、在宅復帰率は半年平均32.5%、回転率は半年平均11.7%である。今回、定期的に在宅復帰している利用者が、吸引が必要な状態で自宅へ帰る事になった。その過程の中で医療が必要になった時の在宅復帰に関する職員の声が表面化された。そこで、その利用者に関わったフロア及びコメディカルにアンケートを取り、在宅復帰に関しての施設職員の思いや考えを知る事で施設全体の今後の課題が見えてきたので報告する。
【経過】
80歳代男性、要介護4、年2回長男・長女の協力のもと在宅復帰。進行性核上性麻痺、パーキンソン病による身体機能の低下・介助量の増加にて、在宅に帰る日数も1~2週間から数日と減ってきていた。今回の入所では、嚥下状態の悪化に伴い、食事中や食後のむせ込みが増え吸引の頻度が増えてきた。その中で、ケアプランの更新・継続にあたり、本人・家人の意向を確認したところ、在宅を希望し在宅復帰となった。この過程の中で「家に帰るの?吸引必要なのに?」「介助量増えて、大変なのでは」という職員の声と「帰れると思った」「大丈夫」という声が聞かれた。そこで、今後医療度・介護度が高い利用者の在宅復帰に向けて取り組む為に、事例に関わった職員にアンケートをとった。
【アンケート結果】
対象者:事例に関わった看・介護14名、コメディカル6名
(1) 吸引が必要な状態で家に帰れると思ったか
思った:11名(55%) Ns3名 Cw4名 栄養士0名 リハビリ1名 相談員3名
思わなかった:9名(45%)Ns2名 Cw5名 栄養士1名 リハビリ1名 相談員0名
(2)それはどうしてか
思った:よく似た事例を経験した。必要な在宅サービスを知っている。
医療度の高い利用者の在宅生活を見ている。自分の家族で経験している。
思わなかった:家族の付き添いが必要。吸引器がない。家族に吸引などの医療行為は無理・不安。
急変時対応出来ない。誤嚥のリスクが高い。
(3)事例で思った事
医療度や介護度が高くなっても、家族指導や在宅サービスで自宅へ帰れる。
それぞれの専門職のアプローチの仕方で在宅が可能。
在宅は無理だと思っていたのに帰れた事で、今後もこういう利用者が増えていくと良い。
(4)医療・介護度が高い人が帰る為に必要と思う事
在宅で問題になりそうな事の予測と対応。家族への指導と不安の軽減。急変時の対応。
多職種連携・在宅関係機関との連携。
(5)在宅復帰が難しいと思う状況
誤嚥や急変のリスクが高く吸引などの医療行為がある。食事や排泄・移乗介助が難しい。
家族が介護に関して理解力が低い。
【考察】
今回アンケートをとった職員は9割が経験年数15年以上であった。それでも意見が分かれた原因として以下の要因が考えられる。在宅サービスの把握・事例の経験の有無、必要な医療・介護についての指導・助言の知識の有無、実施経験の差などである。また、在宅復帰に関しては相談員が主体となっており、フロア職員は施設での生活援助が主体となりがちであった。どうしたら帰れるのか、在宅復帰に向けての意見交換や情報共有、連携が十分に出来ていなかった。在宅介護やサービスに関しての知識の提供が不十分となっている事も、知識・技術の差の要因と思われる。これらの要因に対する対応を行う事で在宅復帰への意識も強まるのではないか。
【まとめ】
現在定期的に在宅復帰されている利用者を含め、今後は医療・介護度の高い利用者の在宅復帰が増えてくると思われる。もしかしたら1日でも家で過ごせるかも知れない利用者を、在宅復帰に対する知識・経験不足により在宅復帰の可能性を狭めていたのかもしれない。今回のアンケートで、各職員が在宅復帰の為の知識・技術に関しての強みや弱みを知る事が出来たと思う。この結果を元に在宅復帰を目指す施設として、職員への教育内容の見直しや、看・介護職における知識・技術の向上に向けて取り組める事を提案していきたい。
当施設は2022年から在宅強化型を維持しており、在宅復帰率は半年平均32.5%、回転率は半年平均11.7%である。今回、定期的に在宅復帰している利用者が、吸引が必要な状態で自宅へ帰る事になった。その過程の中で医療が必要になった時の在宅復帰に関する職員の声が表面化された。そこで、その利用者に関わったフロア及びコメディカルにアンケートを取り、在宅復帰に関しての施設職員の思いや考えを知る事で施設全体の今後の課題が見えてきたので報告する。
【経過】
80歳代男性、要介護4、年2回長男・長女の協力のもと在宅復帰。進行性核上性麻痺、パーキンソン病による身体機能の低下・介助量の増加にて、在宅に帰る日数も1~2週間から数日と減ってきていた。今回の入所では、嚥下状態の悪化に伴い、食事中や食後のむせ込みが増え吸引の頻度が増えてきた。その中で、ケアプランの更新・継続にあたり、本人・家人の意向を確認したところ、在宅を希望し在宅復帰となった。この過程の中で「家に帰るの?吸引必要なのに?」「介助量増えて、大変なのでは」という職員の声と「帰れると思った」「大丈夫」という声が聞かれた。そこで、今後医療度・介護度が高い利用者の在宅復帰に向けて取り組む為に、事例に関わった職員にアンケートをとった。
【アンケート結果】
対象者:事例に関わった看・介護14名、コメディカル6名
(1) 吸引が必要な状態で家に帰れると思ったか
思った:11名(55%) Ns3名 Cw4名 栄養士0名 リハビリ1名 相談員3名
思わなかった:9名(45%)Ns2名 Cw5名 栄養士1名 リハビリ1名 相談員0名
(2)それはどうしてか
思った:よく似た事例を経験した。必要な在宅サービスを知っている。
医療度の高い利用者の在宅生活を見ている。自分の家族で経験している。
思わなかった:家族の付き添いが必要。吸引器がない。家族に吸引などの医療行為は無理・不安。
急変時対応出来ない。誤嚥のリスクが高い。
(3)事例で思った事
医療度や介護度が高くなっても、家族指導や在宅サービスで自宅へ帰れる。
それぞれの専門職のアプローチの仕方で在宅が可能。
在宅は無理だと思っていたのに帰れた事で、今後もこういう利用者が増えていくと良い。
(4)医療・介護度が高い人が帰る為に必要と思う事
在宅で問題になりそうな事の予測と対応。家族への指導と不安の軽減。急変時の対応。
多職種連携・在宅関係機関との連携。
(5)在宅復帰が難しいと思う状況
誤嚥や急変のリスクが高く吸引などの医療行為がある。食事や排泄・移乗介助が難しい。
家族が介護に関して理解力が低い。
【考察】
今回アンケートをとった職員は9割が経験年数15年以上であった。それでも意見が分かれた原因として以下の要因が考えられる。在宅サービスの把握・事例の経験の有無、必要な医療・介護についての指導・助言の知識の有無、実施経験の差などである。また、在宅復帰に関しては相談員が主体となっており、フロア職員は施設での生活援助が主体となりがちであった。どうしたら帰れるのか、在宅復帰に向けての意見交換や情報共有、連携が十分に出来ていなかった。在宅介護やサービスに関しての知識の提供が不十分となっている事も、知識・技術の差の要因と思われる。これらの要因に対する対応を行う事で在宅復帰への意識も強まるのではないか。
【まとめ】
現在定期的に在宅復帰されている利用者を含め、今後は医療・介護度の高い利用者の在宅復帰が増えてくると思われる。もしかしたら1日でも家で過ごせるかも知れない利用者を、在宅復帰に対する知識・経験不足により在宅復帰の可能性を狭めていたのかもしれない。今回のアンケートで、各職員が在宅復帰の為の知識・技術に関しての強みや弱みを知る事が出来たと思う。この結果を元に在宅復帰を目指す施設として、職員への教育内容の見直しや、看・介護職における知識・技術の向上に向けて取り組める事を提案していきたい。