講演情報

[15-O-A013-01]看取り期の食事ケアにおける介護士の役割を考える看取り期の食事について職員へのアンケートを行って

*渡部 静登1、遠藤 千晶1、松本  直子1、足立 由里佳1、渡部  佐枝子1、粟木 悦子1 (1. 鳥取県 鳥取県済生会介護老人保健施設はまかぜ)
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介護士は食事ケアについて「食べてほしい」「食べさせなくてはならない」と思う反面、誤嚥や窒息のリスクがあることの不安を抱えている。そこで看取り期の入所者の食事ケアについて各職種の役割を明確にするためフローチャートの作成を行うことにした。そこで看取りケアの食事の意味を統一するため職員にアンケートを行った。アンケートの結果から看取り期の食事ケアについて考察したので報告する。
【はじめに】
介護老人保健施設でターミナル加算が算定されるようになり施設での看取りが増えてきている。しかし介護士の多くは看取りの経験が少なく看取り期のケア全般に不安を感じている。特に食事については「食べてほしい」「食べさせなくてはならない」などの使命感の一方、誤嚥や窒息のリスクに不安を抱えている。今回施設内で、「看取り食事ケアチーム」を発足し看取り期において多職種でのアプローチを統一させるため、看取り期の食事対応フローチャート(以下フローチャートとする)を作成した。フローチャート作成に当たり職員に看取り期の食事についてのアンケートを行ったので報告する。
【目的】
看取り期の食事の意味を職員間で統一し、家族や施設ができることを整理するためアンケートを行った。
【方法】
入所で勤務する職員29名に看取り期の食事についてアンケートを施行
アンケート内容:1)看取り期の経験値2)看取り期の食事量の知識3)看取り期の食事への思い(利用者に対して)4)看取り期の食事への思い(家族に対して)5)嚥下障害への対応6)看取り期の食事ケア、各職種にできること7)看取り期の食事の意味
対象者:介護士16名、看護師8名、リハビリ3名、管理栄養士1名、相談員1名
【結果】
*結果の%は全職員の回答結果と()内は介護職員のみの回答結果を表記
1) 施設内で臨終に立ち会ったことがありますか:はい69%(75%)、いいえ31%(25%)
今までの経験から看取り期と判断できる食事量はどのくらいだと思いますか:欠食10%(6%)、25%程度79%(88%)、50%程度7%(0%)、その他4%(6%)
2) 利用者の看取り期には食べたいものを食べさせたいと思いますか:思う62%(62%)、やや思う35%(37%)、あまり思わない3%(0%)
3) 自分の家族の看取り期には食べたいものを食べさせたいと思いますか:思う69%(69%)、やや思う28%(31%)、思わない3%(0%)
4) 看取り期の食事介助に不安を感じますか:感じる41%(44%)、やや感じる45%(44%)、どちらでもない10%(12%)、感じない4%
*どんなことに不安を感じますか:誤嚥、窒息、無理やり食べさせているのではないか、本人の意思を明確に判断できない、時間をかければ食べれるかもしれないが時間をかけることが難しい、適切な食事介助方法をおこなっているか、本人の食べたいものであるのか等
5) 看取り期にできる食事ケアは何ですか(複数回答):食事介助81%(100%)、ポジショニング66%(75%)、本人の希望を聞く66%(56%)、家族の希望を聞く59%(44%)、嗜好への対応31%(18%)、食事を中止する14%(19%)、無理に食べさせない52%(56%)
6) あなたは最後の晩餐は何が良いですか:寿司、みそ汁、ラーメン、ケーキ、和菓子、イチゴ、うなぎ、おにぎり、家族で鍋や焼き肉がしたい、家族と一緒に食べたい。
【考察】
当施設でターミナル加算の算定を始めて7年が経過した。施設で看取りを行った人数は50名以上になったが、介護職員で臨終に立ち会った経験のある職員は75%であった。しかし介護士は看取り期のケアを日々行っているが食事介助については88%が不安と感じている。その不安要因としては、誤嚥や窒息など死に直結することもあるというリスクに対する不安と「どうにかして食べてほしい」「食べさせなければならない」という思いも強く、食事摂取量が少なくなることに対する不安が挙がった。そのため、利用者が今どの看取りの時期いるのかを知り、どのような食事ケアを行っていけばよいか共通認識できるフローチャートはそのような不安を軽減するのではないかと考える。また、看取り期の食事ケアは多職種で関わっているため各職種の専門性で意見が分かれることある。今回のアンケートでは介護士は6)看取り期にできる食事ケアは「食事介助」と全員が回答した。しかしその反面「無理には食べさせない」56%、「食事を中止」19%との回答もあった。食べさせたいけれども誤嚥や窒息のリスクを考えると無理には食べさせたくないという葛藤する思いがあると考える。看取り期には段階に応じた食事ケアがあるということを知る必要もあった。そして施設の中で利用者・その家族と関わる時間の多い介護士こそが本人の食べたいものは何か、食べれるものは何かを聞き出すことができるのだと思う。本人の意向をどのタイミングで他の職種にアプローチしていくのかもフローチャートがあることでより明確になっていくと考える。最後の晩餐は人それぞれであるということもアンケートの結果からわかった。食べものそのものではなく「家族と一緒に」という思いもありその機会を提案することも施設職員の重要な役割であると感じた。今回アンケートを行い改めて看取り期の食事の意味を考え、職種ごとの役割を整理する良い機会となった。
【おわりに】
病院で嚥下食を提供されほとんど食べれなくなっていた看取り期の利用者さんに何が好きかと聞いたとき「ビール」と答えられた。家族に協力してもらいノンアルコールビールと晩酌の時に食べていたというイワシやサバの缶詰、すじこ等をおいしそうに食べている姿は施設だからできる看取りであった。これからも多職種で関わりながら施設で出来る看取りケアを行っていきたい。