講演情報
[15-O-A013-05]活動参加への支援を通じたご利用者のQOL向上
*高橋 あゆみ1、小田 敏江1、長谷川 あゆみ1、糟谷 三千子1、慶長 真理子1 (1. 北海道 介護老人保健施設オアシス21)
疾患・療養による身体機能の低下や、認知症による自信の喪失・不安から閉じこもりがちになってしまったご利用者に対して、好きな事を取り入れた活動への参加を支援する事でADLの維持やQOLの向上につながった事例を報告する。事例を通して老健施設での日々の生活リハビリや社会参加への継続的支援の重要性を確認できた。
【はじめに】
疾患・療養による身体機能の低下や、認知症による自信の喪失・不安から閉じこもりがちになってしまったご利用者に対して、活動への参加を通じた支援を行う事でADLの維持やQOLの向上につながった事例を報告する。
【症例概要】
A氏 男性 87歳 要介護度 1
病名:左慢性硬膜下血腫術後、高血圧症、狭心症、不眠症、認知症
入所経緯:息子と二人暮らし。2023年に入ってから認知機能低下あり、薬や金銭の管理など身の回りのことが出来なくなってきたと自覚し、在宅サービス利用開始。2023年3月左慢性硬膜下血腫のため手術となったが、術後介護困難のため生活施設選定目的で2023年6月当施設の一般棟へ入所される。
【経過】
身体機能面に関しては、全身的な耐久性の低下が見られているものの、ADLは概ね自立されていた。認知症による見当識障害や短期記憶障害があり、日課の声掛けが都度必要であることに加え、新しい環境に慣れるまでに時間を要し、入所されてしばらくは混乱や不安の訴えが多く、リハビリや活動には消極的で「できません。」と断り居室に引きこもっている事が多かった。
全身の耐久性や筋力の向上と役割を通じて活動的に過ごせることを目標に支援開始。身体面のリハビリの他に、働いていた時にポスター作りをした経験があるとの情報から、行事食のポスター作製を実施。こちらからの声掛けや促しがあればできるが、短期記憶低下のためポスター作製したこともすぐに忘れてしまい、自主的な活動参加へつながらなかった。
ご本人との関わりのなかで、カラオケやスポーツ観戦が趣味で、働いている時は野球観戦によく足を運んでいたと知る事が出来、活動的に過ごされていたことを話す場面では笑顔が多くみられていた。好きな事を取り入れる事で活動への意欲を高め、活気のある療養生活を過ごせるよう、野球観戦を企画。当初は「行かないよ」と消極的な面も見られていたが、野球観戦にむけリハビリやうちわ作成など準備していった。当日はスタッフの見守りのもと他ご利用者とともに球場へ向かい、大きな声で応援をされ笑顔ですごされる。観戦後は一緒に行った利用者と挨拶したり、同室者と野球の話題で会話されている姿が見られた。「野球観戦に行ってきた。楽しかった。また機会があれば行きたい。」と笑顔で自発的に話してくれることが多くなり、集団体操や役割活動に対し自発的に参加されるという変化がみられた。リハビリの評価では心身機能においては、全身の耐久性や筋力の向上、立位バランス能力の向上が見られ、認知機能に関しては入所直後HDS-R12点から、入所3か月後14点と向上を認めた。
その後、施設内で新型コロナウイルス感染症クラスター発生があり、ご本人は発症しなかったが棟内感染対策のため療養生活での活動制限が行われた。終息後、日課がわからず混乱する様子がみられ、活動への参加も消極的となった。クラスター発生前の生活環境へもどることで、徐々にご本人の行動も発生前の状況へと戻れたが、HDS-R14点(2023年9月)から6点(2024年2月)となり、認知症の進行のため認知症専門棟に転棟して認知症ケア継続となった。一般棟で楽しかった野球観戦を覚えており、今年も野球観戦を企画。リハビリ継続で身体機能を維持されており、日課やレクレーションへの参加も継続でき明るく生き生きとした様子で療養生活をすごされている。
【結果】
入所当初は身の回りのことが出来なくなってきたと自覚があり、身体的にも疾患や療養により活動への耐久性も低く、「できない」と参加に対して消極的で、このままの状態が続けば身体機能や認知機能の維持が難しいと考えられる状況であった。経過のなかで認知症の進行により認知機能の低下はみられるものの、これまでの生活や好きな事を加味した活動ができるよう環境設定・支援継続することで、QOL向上やADL維持しながらその人らしく療養生活を送ることが出来ている。
【考察】
生活リハビリテーションとは、ご利用者が日常的に生活する上で行う活動(ADL)をリハビリとして、自分の力でできるよう支援することである。A氏の場合、身体的には概ね自立しているが、日課を忘れてしまいわからない・できないという不安がみられており、声かけで出来る行動を引き出していくよう支援し、日課の継続ができている。活動への参加は他者とのかかわりを持つことで社会参加につながり、役割を担うことで達成感や自信を取り戻し、結果的に認知機能やADLの維持・向上へつながるとされている。その方にあった支援方法を取り入れることが重要であり、できないことや難しい役割はストレスとなり、かえって認知症進行やBPSDが現れるきっかけとなるため、慣れ親しんだことや得意なこと、仕事や趣味で継続的にやってきたことなど取り入れるとよいとされており、今回の事例でもコミュニケーションをとりながらご本人の情報収集し、好きな事を取り入れることで参加への意欲や日々の楽しみを持つことができ、他の日課や活動についても自主的に参加しQOLの向上やADLの維持につながったと考えられる。
【おわりに】
健育会グループではミッションとして『活力ある高齢社会のサステナビリティ(持続可能性)を実現する』ことを掲げている。ご利用者に親身な対応で「輝きの一日」を提供することを大切にしており、今回の事例のように、ご利用者一人一人の状況に合わせた支援を継続することで「輝きの一日」が継続できるよう日々努力していきたい。
疾患・療養による身体機能の低下や、認知症による自信の喪失・不安から閉じこもりがちになってしまったご利用者に対して、活動への参加を通じた支援を行う事でADLの維持やQOLの向上につながった事例を報告する。
【症例概要】
A氏 男性 87歳 要介護度 1
病名:左慢性硬膜下血腫術後、高血圧症、狭心症、不眠症、認知症
入所経緯:息子と二人暮らし。2023年に入ってから認知機能低下あり、薬や金銭の管理など身の回りのことが出来なくなってきたと自覚し、在宅サービス利用開始。2023年3月左慢性硬膜下血腫のため手術となったが、術後介護困難のため生活施設選定目的で2023年6月当施設の一般棟へ入所される。
【経過】
身体機能面に関しては、全身的な耐久性の低下が見られているものの、ADLは概ね自立されていた。認知症による見当識障害や短期記憶障害があり、日課の声掛けが都度必要であることに加え、新しい環境に慣れるまでに時間を要し、入所されてしばらくは混乱や不安の訴えが多く、リハビリや活動には消極的で「できません。」と断り居室に引きこもっている事が多かった。
全身の耐久性や筋力の向上と役割を通じて活動的に過ごせることを目標に支援開始。身体面のリハビリの他に、働いていた時にポスター作りをした経験があるとの情報から、行事食のポスター作製を実施。こちらからの声掛けや促しがあればできるが、短期記憶低下のためポスター作製したこともすぐに忘れてしまい、自主的な活動参加へつながらなかった。
ご本人との関わりのなかで、カラオケやスポーツ観戦が趣味で、働いている時は野球観戦によく足を運んでいたと知る事が出来、活動的に過ごされていたことを話す場面では笑顔が多くみられていた。好きな事を取り入れる事で活動への意欲を高め、活気のある療養生活を過ごせるよう、野球観戦を企画。当初は「行かないよ」と消極的な面も見られていたが、野球観戦にむけリハビリやうちわ作成など準備していった。当日はスタッフの見守りのもと他ご利用者とともに球場へ向かい、大きな声で応援をされ笑顔ですごされる。観戦後は一緒に行った利用者と挨拶したり、同室者と野球の話題で会話されている姿が見られた。「野球観戦に行ってきた。楽しかった。また機会があれば行きたい。」と笑顔で自発的に話してくれることが多くなり、集団体操や役割活動に対し自発的に参加されるという変化がみられた。リハビリの評価では心身機能においては、全身の耐久性や筋力の向上、立位バランス能力の向上が見られ、認知機能に関しては入所直後HDS-R12点から、入所3か月後14点と向上を認めた。
その後、施設内で新型コロナウイルス感染症クラスター発生があり、ご本人は発症しなかったが棟内感染対策のため療養生活での活動制限が行われた。終息後、日課がわからず混乱する様子がみられ、活動への参加も消極的となった。クラスター発生前の生活環境へもどることで、徐々にご本人の行動も発生前の状況へと戻れたが、HDS-R14点(2023年9月)から6点(2024年2月)となり、認知症の進行のため認知症専門棟に転棟して認知症ケア継続となった。一般棟で楽しかった野球観戦を覚えており、今年も野球観戦を企画。リハビリ継続で身体機能を維持されており、日課やレクレーションへの参加も継続でき明るく生き生きとした様子で療養生活をすごされている。
【結果】
入所当初は身の回りのことが出来なくなってきたと自覚があり、身体的にも疾患や療養により活動への耐久性も低く、「できない」と参加に対して消極的で、このままの状態が続けば身体機能や認知機能の維持が難しいと考えられる状況であった。経過のなかで認知症の進行により認知機能の低下はみられるものの、これまでの生活や好きな事を加味した活動ができるよう環境設定・支援継続することで、QOL向上やADL維持しながらその人らしく療養生活を送ることが出来ている。
【考察】
生活リハビリテーションとは、ご利用者が日常的に生活する上で行う活動(ADL)をリハビリとして、自分の力でできるよう支援することである。A氏の場合、身体的には概ね自立しているが、日課を忘れてしまいわからない・できないという不安がみられており、声かけで出来る行動を引き出していくよう支援し、日課の継続ができている。活動への参加は他者とのかかわりを持つことで社会参加につながり、役割を担うことで達成感や自信を取り戻し、結果的に認知機能やADLの維持・向上へつながるとされている。その方にあった支援方法を取り入れることが重要であり、できないことや難しい役割はストレスとなり、かえって認知症進行やBPSDが現れるきっかけとなるため、慣れ親しんだことや得意なこと、仕事や趣味で継続的にやってきたことなど取り入れるとよいとされており、今回の事例でもコミュニケーションをとりながらご本人の情報収集し、好きな事を取り入れることで参加への意欲や日々の楽しみを持つことができ、他の日課や活動についても自主的に参加しQOLの向上やADLの維持につながったと考えられる。
【おわりに】
健育会グループではミッションとして『活力ある高齢社会のサステナビリティ(持続可能性)を実現する』ことを掲げている。ご利用者に親身な対応で「輝きの一日」を提供することを大切にしており、今回の事例のように、ご利用者一人一人の状況に合わせた支援を継続することで「輝きの一日」が継続できるよう日々努力していきたい。