講演情報
[15-O-A013-06]「家に帰りたい。」~在宅復帰のアプローチ~
*山下 武士1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設 ゆめが丘)
我々は演題にある、「家に帰りたい。」というごく当たり前な訴えをどうしたら叶えられるのか。今ご本人が抱えている現状と課題を多角的視点からアドバイスをもらい、施設側の企画をご家族にも納得していただくためにはどうしたら良いか。
企画立案実行し苦労や苦悩があったが、ご本人とご家族の喜んでいただいた姿がそこにはあった。
企画立案実行し苦労や苦悩があったが、ご本人とご家族の喜んでいただいた姿がそこにはあった。
目的
本事例報告は、入所者様の「家に帰りたい。」という切なる訴えを叶えたいという職員の想いからはじまった。
該当の方は既往歴で脳梗塞があり、その影響からか右側の傾きが著明、右手が上がらなくなったことで入院される。退院後、在宅復帰目的にて当施設へ入所。目標ゴールは、自宅で歩いてトイレに行けるレベルになる事だった。
しかし、在宅復帰予定で入所したがADLがなかなか上がらず、施設生活が経過していく中でADLが低下、食事量の減少、活気低下もみられはじめた。ご家族の見解も自宅の方向が難しいという印象も持ち始め、在宅復帰が困難になってきた頃の訴えであった。
今回介護老人保健施設の役目でもある「在宅復帰」を果たすためにも、3時間程の外出を企画するところからはじめた。
ご家族にも協力していただき、実際にケアを行ってもらった。それは「ご本人と一緒にいていただく」、「嚥下食を作っていただき食べさせてもらう」、「ご本人が希望された時のトイレ介助を行なってもらう」という事を行ってもらった。
以上の取り組みについて、ここに報告する。
方法
<企画の立案>
ご本人に企画を提案したことを伝えて、どうしたらできるのか一緒に考えた。
ご自宅まで出発前の準備、施設送迎車の手配、ご自宅での過ごし方。環境面はポータブルトイレと、排泄介助時必要物品を用意した。
ご家族にはタイムスケジュール、ご希望等の聴取、付け加えご自宅で起こりうるケガや帰設後のご本人メンタル低下などリスク状況の説明。感染症対策、実施後の感想聴取をすることにした。
<施設内のチーム連携>
担当している施設ケアマネジャーから、家族へ企画立案の承諾を得ること。担当リハビリテーションの職員からは、ご本人のADLを確認。ご自宅でのトイレまで歩行距離が長く、使用困難な状態とのことだった。
介護職員は企画の趣旨と内容を施設長、看護師長、看護職員と嚥下についてのリスクを精査と説明。当日の送迎担当者を決定し、ご自宅到着後の環境を検討した。
<ご家族への説明と承諾>
企画内容を家族に説明し、外出の許可と協力を依頼した。ご家族も快く協力をして下さる方向となる。
<外出実行>
上記決定した内容と日付で、実際にご自宅へ外出を実行。
結果
ご本人はいつも静かだが、施設送迎車の中で近所の様子を活き活きと話をしてくれた。
ご家族から「また次の機会を前向きに考えているので、施設の都合に合わせます。」、「私たちも気分が良くなりました。」「やっぱり家族としては家に帰ってくることはうれしい。」という言葉をいただいた。
ご自宅では三人がかりであったが、ご家族介助の元でポータブルトイレを使用することができた。
ご家族も嚥下食を作ることができて、ご本人も自宅での食事ができたことは良かったと言える。
ただ反面ご家族からの意見として「会話」、「おやつ」、「お茶」のみでは三時間と言う時間はかなり余ったとのこと。ご自宅周辺を散歩など出来れば良いとご意見もいただいた。
ご本人は帰設後、落ち着かない様子が見られた。「このままここで死んでしまうのではないか。」という不安にかられたからなのか、そういった言動が予想通り見られた。
スタッフ側の反省点も多々見られた。出発前にご家族への連絡を忘れそうになり、ヒヤリとする場面があった。またご本人の自宅案内の間、施設送迎車を停めておく場所をもう少し検討しておく必要があった。今回停めたところは、親戚の敷地に停めさせていただいた経緯が当日になってあった。
食事を止める時は料金変動があるため、早めにご家族への連絡を行う必要もあった。
考察
「家に帰りたい。」という訴えはご本人の当たり前にある気持ちと発言である中、ご本人のADL低下状況を考慮して素早く企画を立案と実行ができ、ご本人やご家族が喜ぶ姿に繋がったと考える。
この企画により家族からのご意見、ヒヤリとした場面により企画の不足部分が明確になった。次回の企画時には修正し、反映させていく必要がある。私自身一人で企画立案をしていたため、他部署連携を行う際に担当者と出勤日が合わずスムーズな話し合いが出来ない事があった。
ご家族にご自宅での生活のイメージやケアの提供、成功体験により自宅で介助していくことに自信がもてたのではないか。
在宅復帰にまでは繋がっていないが、今回の企画でご家族や入所者様が喜ぶ姿やお言葉をいただいたことにより、改めて在宅復帰支援は介護老人保健施設として、かつ、「介護職として大切なもの」であると改めて認識した。
在宅復帰、在宅支援に限らず「ADL維持・向上」に繋がる支援をご家族のみならず、入所者様の近隣住民の方も巻き込めるように「地域の方」、「インクルーシブな取り組み」も今後取り組んでいきたい。
本事例報告は、入所者様の「家に帰りたい。」という切なる訴えを叶えたいという職員の想いからはじまった。
該当の方は既往歴で脳梗塞があり、その影響からか右側の傾きが著明、右手が上がらなくなったことで入院される。退院後、在宅復帰目的にて当施設へ入所。目標ゴールは、自宅で歩いてトイレに行けるレベルになる事だった。
しかし、在宅復帰予定で入所したがADLがなかなか上がらず、施設生活が経過していく中でADLが低下、食事量の減少、活気低下もみられはじめた。ご家族の見解も自宅の方向が難しいという印象も持ち始め、在宅復帰が困難になってきた頃の訴えであった。
今回介護老人保健施設の役目でもある「在宅復帰」を果たすためにも、3時間程の外出を企画するところからはじめた。
ご家族にも協力していただき、実際にケアを行ってもらった。それは「ご本人と一緒にいていただく」、「嚥下食を作っていただき食べさせてもらう」、「ご本人が希望された時のトイレ介助を行なってもらう」という事を行ってもらった。
以上の取り組みについて、ここに報告する。
方法
<企画の立案>
ご本人に企画を提案したことを伝えて、どうしたらできるのか一緒に考えた。
ご自宅まで出発前の準備、施設送迎車の手配、ご自宅での過ごし方。環境面はポータブルトイレと、排泄介助時必要物品を用意した。
ご家族にはタイムスケジュール、ご希望等の聴取、付け加えご自宅で起こりうるケガや帰設後のご本人メンタル低下などリスク状況の説明。感染症対策、実施後の感想聴取をすることにした。
<施設内のチーム連携>
担当している施設ケアマネジャーから、家族へ企画立案の承諾を得ること。担当リハビリテーションの職員からは、ご本人のADLを確認。ご自宅でのトイレまで歩行距離が長く、使用困難な状態とのことだった。
介護職員は企画の趣旨と内容を施設長、看護師長、看護職員と嚥下についてのリスクを精査と説明。当日の送迎担当者を決定し、ご自宅到着後の環境を検討した。
<ご家族への説明と承諾>
企画内容を家族に説明し、外出の許可と協力を依頼した。ご家族も快く協力をして下さる方向となる。
<外出実行>
上記決定した内容と日付で、実際にご自宅へ外出を実行。
結果
ご本人はいつも静かだが、施設送迎車の中で近所の様子を活き活きと話をしてくれた。
ご家族から「また次の機会を前向きに考えているので、施設の都合に合わせます。」、「私たちも気分が良くなりました。」「やっぱり家族としては家に帰ってくることはうれしい。」という言葉をいただいた。
ご自宅では三人がかりであったが、ご家族介助の元でポータブルトイレを使用することができた。
ご家族も嚥下食を作ることができて、ご本人も自宅での食事ができたことは良かったと言える。
ただ反面ご家族からの意見として「会話」、「おやつ」、「お茶」のみでは三時間と言う時間はかなり余ったとのこと。ご自宅周辺を散歩など出来れば良いとご意見もいただいた。
ご本人は帰設後、落ち着かない様子が見られた。「このままここで死んでしまうのではないか。」という不安にかられたからなのか、そういった言動が予想通り見られた。
スタッフ側の反省点も多々見られた。出発前にご家族への連絡を忘れそうになり、ヒヤリとする場面があった。またご本人の自宅案内の間、施設送迎車を停めておく場所をもう少し検討しておく必要があった。今回停めたところは、親戚の敷地に停めさせていただいた経緯が当日になってあった。
食事を止める時は料金変動があるため、早めにご家族への連絡を行う必要もあった。
考察
「家に帰りたい。」という訴えはご本人の当たり前にある気持ちと発言である中、ご本人のADL低下状況を考慮して素早く企画を立案と実行ができ、ご本人やご家族が喜ぶ姿に繋がったと考える。
この企画により家族からのご意見、ヒヤリとした場面により企画の不足部分が明確になった。次回の企画時には修正し、反映させていく必要がある。私自身一人で企画立案をしていたため、他部署連携を行う際に担当者と出勤日が合わずスムーズな話し合いが出来ない事があった。
ご家族にご自宅での生活のイメージやケアの提供、成功体験により自宅で介助していくことに自信がもてたのではないか。
在宅復帰にまでは繋がっていないが、今回の企画でご家族や入所者様が喜ぶ姿やお言葉をいただいたことにより、改めて在宅復帰支援は介護老人保健施設として、かつ、「介護職として大切なもの」であると改めて認識した。
在宅復帰、在宅支援に限らず「ADL維持・向上」に繋がる支援をご家族のみならず、入所者様の近隣住民の方も巻き込めるように「地域の方」、「インクルーシブな取り組み」も今後取り組んでいきたい。