講演情報
[15-O-A014-03]特定技能外国人介護士が行う生活リハビリの報告
*佐藤 弘樹1、児島 慶則1、豊田 和久1、関口 敬子1、石田 奈尾子1、加持 みほ1 (1. 京都府 介護老人保健施設洛和ヴィライリオス)
超強化型老健の当施設は特定技能外国人介護士に求める業務として排泄食事入浴の三大介護を優先傾向にある しかし老健本来の目的は在宅復帰を目標とした自立支援である。その目的を成就の為に特定技能外国人介護士が三大介護だけでなく在宅復帰に向けた指導もできるようになる事が必要と考え、その最初の試みとして特定技能外国人介護士による利用者への生活リハビリ実施した その中で見えてきた課題や進展についてここに報告する
【はじめに】 日本全体で人材不足が叫ばれる昨今、介護業界でも例にもれず人材不足の波が押し寄せている。超強化型老健である私共の施設でも慢性的な人手不足が発生しており、2022年の8月より特定技能外国人介護士2名を雇用した。雇用当初は介護業務の基本である「排泄・食事・入浴の介助ができるようになる」を目標に指導・教育をおこなってきた。しかし、老健の本来の目的・役割は在宅復帰を目標とする自立支援である。老健本来の目的を成就し、利用者の顧客満足度を高めるためには、特定技能外国人介護士が三大介護だけでなく在宅復帰に向けた自立支援の指導ができるようになることが必要である。その最初の試みとして、特定技能外国人介護士が利用者への「生活リハビリ」を実際におこなった。その中で見えてきた課題や進展についてここに報告する
【実施方法】
1)期間:2024年4月から約1か月間
2)内容:対象 特定技能外国人介護士 A氏(女性)
利用者Mさん(90歳台女性)に対して、10分間の生活リハビリを実施 記録するまでの流れをおこなう。その後、指導者と振り返りを実施
3)生活リハビリの内容
・立ち上がり訓練(10回×5セット) ・立位保持訓練(10秒×5セット)・発声訓練(一緒に歌「ふるさと」を歌う)
4)Mさんの基本情報
・要介護3 障害高齢者の日常生活自立度B2 認知症高齢者の日常生活自立度 IIb
・車椅子レベルだが腰部支えの介助があれば立位保持可能 指示の理解にはムラがある
・過去に数度、転倒骨折の既往あり
・在宅復帰の為には、立位保持とトイレへの移乗動作能力の向上が必要
【結果】
・生活リハビリへの取り組み当初は、実施前にMさんの状態確認が抜ける、声掛けの方法やタイミングがわからないなど、戸惑いが見えたが、しばらく他の職員が付き添い一緒に実践することで、立ち上がり訓練・立位保持訓練は問題なく実施できるようになった
・「ふるさと」の歌はMさんにとって なじみがあり歌いやすいと思い選んだが、A氏にとってはメロディーが難しく、Mさんから音程が外れているのを指摘される場面があり、他の利用者から「かわいそう」という意見があった
・記録は文章の構築が必要であり難航している様子が見られた。一定のテンプレート(笑顔が見られた、立位10回5セットなど)を作成することで対応をおこなった
【考察】
立ち上がり・立位保持訓練は、一定期間職員が付き添い教えることで、健康状態の確認や訓練内容にも問題なく実施することができた
歌の訓練は、その歌になじみのない特定外国人介護士にとってはやや難易度が高かった印象であった
一方で、特定技能外国人介護士と共に「ふるさと」と歌った後、Mさんが自身で「ふるさと」口ずさんでいることがあり、それを見た特定技能外国人介護士が嬉しそうにしている場面があった。
利用者と直接関わることで得られる楽しさを感じることができたのではないだろうか
記録に関しては、特定外国人介護士の能力というよりも、そもそも日本語自体が漢字ひらがなカタカナという三種類の文体が混合する特殊な言語のため、一から介護記録を書けるようになる所を目指して指導を行うには、それに要する時間や期間など指導の見通しが立ちにくい印象があった。
今後、介護記録のIT化が推進されるなら翻訳ソフトなどを使用し母国語から直接記録を入力する、という先進的な方法も選択肢の一つではないかと思われた
【結論】今回、利用者の下肢筋力や認知機能の大幅な向上には至らなかった。
しかし多忙な業務の中、A氏のメリハリのある介入を実施することで、Mさんが歌を口ずさむなど楽しそうな様子が伺え、またその様子を見てA氏自身も嬉しそうにしている一面を引き出すことができた。
生活リハビリの時間的評価で言えば、1日10分を積み重ねることで、約20日(200分)と3時間強の生活リハビリの時間を確保し取り組むことができた。老健本来の目的である自立支援への取り組みを、特定技能外国人介護士でこれだけの時間を積み重ね実施できたことは、自立支援においても、特定外国人介護士の役割拡大としても大きな前進であると考える。
もちろん、指導内容や記録対応での改善点はまだまだ多い。しかし、それは特定外国人介護士に対しての指導の取り組みの余地と、それに伴い超強化型老健として当施設がより成長できる伸びしろである、とも解釈できる
今回の取り組みで得た経験をフィードバックし、更なる指導の改善を図ることで、今後増えるであろう特定技能外国人介護士が、のびのびと楽しく活躍できる職場作り行い、共に利用者の自立支援・在宅復帰の役割を果たしていける施設作りを目指していくことを確認し、今回の報告を終了とする。
【実施方法】
1)期間:2024年4月から約1か月間
2)内容:対象 特定技能外国人介護士 A氏(女性)
利用者Mさん(90歳台女性)に対して、10分間の生活リハビリを実施 記録するまでの流れをおこなう。その後、指導者と振り返りを実施
3)生活リハビリの内容
・立ち上がり訓練(10回×5セット) ・立位保持訓練(10秒×5セット)・発声訓練(一緒に歌「ふるさと」を歌う)
4)Mさんの基本情報
・要介護3 障害高齢者の日常生活自立度B2 認知症高齢者の日常生活自立度 IIb
・車椅子レベルだが腰部支えの介助があれば立位保持可能 指示の理解にはムラがある
・過去に数度、転倒骨折の既往あり
・在宅復帰の為には、立位保持とトイレへの移乗動作能力の向上が必要
【結果】
・生活リハビリへの取り組み当初は、実施前にMさんの状態確認が抜ける、声掛けの方法やタイミングがわからないなど、戸惑いが見えたが、しばらく他の職員が付き添い一緒に実践することで、立ち上がり訓練・立位保持訓練は問題なく実施できるようになった
・「ふるさと」の歌はMさんにとって なじみがあり歌いやすいと思い選んだが、A氏にとってはメロディーが難しく、Mさんから音程が外れているのを指摘される場面があり、他の利用者から「かわいそう」という意見があった
・記録は文章の構築が必要であり難航している様子が見られた。一定のテンプレート(笑顔が見られた、立位10回5セットなど)を作成することで対応をおこなった
【考察】
立ち上がり・立位保持訓練は、一定期間職員が付き添い教えることで、健康状態の確認や訓練内容にも問題なく実施することができた
歌の訓練は、その歌になじみのない特定外国人介護士にとってはやや難易度が高かった印象であった
一方で、特定技能外国人介護士と共に「ふるさと」と歌った後、Mさんが自身で「ふるさと」口ずさんでいることがあり、それを見た特定技能外国人介護士が嬉しそうにしている場面があった。
利用者と直接関わることで得られる楽しさを感じることができたのではないだろうか
記録に関しては、特定外国人介護士の能力というよりも、そもそも日本語自体が漢字ひらがなカタカナという三種類の文体が混合する特殊な言語のため、一から介護記録を書けるようになる所を目指して指導を行うには、それに要する時間や期間など指導の見通しが立ちにくい印象があった。
今後、介護記録のIT化が推進されるなら翻訳ソフトなどを使用し母国語から直接記録を入力する、という先進的な方法も選択肢の一つではないかと思われた
【結論】今回、利用者の下肢筋力や認知機能の大幅な向上には至らなかった。
しかし多忙な業務の中、A氏のメリハリのある介入を実施することで、Mさんが歌を口ずさむなど楽しそうな様子が伺え、またその様子を見てA氏自身も嬉しそうにしている一面を引き出すことができた。
生活リハビリの時間的評価で言えば、1日10分を積み重ねることで、約20日(200分)と3時間強の生活リハビリの時間を確保し取り組むことができた。老健本来の目的である自立支援への取り組みを、特定技能外国人介護士でこれだけの時間を積み重ね実施できたことは、自立支援においても、特定外国人介護士の役割拡大としても大きな前進であると考える。
もちろん、指導内容や記録対応での改善点はまだまだ多い。しかし、それは特定外国人介護士に対しての指導の取り組みの余地と、それに伴い超強化型老健として当施設がより成長できる伸びしろである、とも解釈できる
今回の取り組みで得た経験をフィードバックし、更なる指導の改善を図ることで、今後増えるであろう特定技能外国人介護士が、のびのびと楽しく活躍できる職場作り行い、共に利用者の自立支援・在宅復帰の役割を果たしていける施設作りを目指していくことを確認し、今回の報告を終了とする。