講演情報
[15-O-A014-04]尿路感染予防へ統一した陰部洗浄実践の取り組み
*小坂 藍1 (1. 東京都 医療法人財団 立川中央病院 介護老人保健施設 アルカディア)
本研究では、尿汚染、皮膚症状悪化の予防・改善、排泄ケアの質強化を目的に洗浄液を用いた陰部洗浄方法の周知と統一した手技の実践を図り、スケールを用いた研究を行なった。結果、尿の性状に明確な改善はみられなかったが皮膚状態には良い効果が得られた。研究以前に尿路感染を発症していた方も取り組み以降は発症することなく経過しており、統一したケアの再現性も保たれ、業務改善につなげる事が出来た。
【はじめに】
高齢者が起こしやすい感染症に尿路感染症がある。原因の一つに認知機能・運動機能の低下による衛生状態維持の困難が挙げられる(資料1)。当施設でもベッド上での排泄が主となっている方が多く入所しており、中には感染症やそれに付随する周辺皮膚状態の悪化が見られるケースもある。そのため、業務内の排泄ケアの強化は重要な役割を果たすと考えた。
上記を踏まえ、尿汚染、皮膚症状の予防・改善、排泄ケアの質強化を目的に、陰部洗浄方法の周知と、統一した手技の実践を図り、尿・皮膚状態を確認するためのスケールを作成し状態の共有。以上の取り組みを元とした業務改善に関しての研究実施報告をしていく。
【倫理的配慮】
高齢者が起こしやすい感染症に尿路感染症がある。原因の一つに認知機能・運動機能の低下による衛生状態維持研究にかかわる関係者は、研究対象者の個人情報保護について適用される法令・条例を遵守する。本演題発表に関連して開示すべき利益相反関係にある企業などはない。
【研究期間・対象】
[研究実施期間] 令和6年2月26日(月)~3月25日(月)
[対象] 下記5名 全員ベッド上終日オムツ交換対応者
()内は利用中の尿路感染発症回数
A:80代 男性(0) B:80代 女性(0) C:90代 女性(4)D:90代 女性(1) E:90代 女性(1)
【研究方法】
1) 当該フロア職員に陰部洗浄方法の映像講義、実技講習を受けてもらい、研究実施要項を周知
2) 尿路感染症確認表を作成 項目:色・臭い・皮膚鼠経・皮膚臀部 計4項目 他特記事項あった際の備考欄に記入
色:1~5の5段階 臭い:ある/なし(評価 あり2・なし1で表記)
皮膚鼠経・皮膚臀部:1~3の3段階 各項目数字の大きい方が不良
3) 尿色スケール(資料2)、皮膚状態(資料3)
IADスケール簡易版を作成 判断基準を設け参照資料を作成
4) 研究前後の尿一般検査全8項目を実施
5) 1)~3)を用いて対象利用者様への陰部洗浄し実施していく
(入浴日以外を実施日とする)
【結果】
各項目 (研究開始時)→(終了時)
A様:(色)2→2 (臭い)2→1 (皮膚鼠経)2→1 (皮膚臀部)2→1 (備考)なし (尿検査)異常1項目 改善1 悪化1
B様:(色)2→2 (臭い)2→2 (皮膚鼠経)2→2 (皮膚臀部)3→2 (備考) 臀部掻き傷皮膚剥離3/22改善傾向 3/24大腿痒み皮疹 (尿検査)異常2項目 改善0 悪化1 更に悪化1
C様:(色)4→3 (臭い)2→2 (皮膚鼠経)2→2 (皮膚臀部)2→2 (備考)色の項目で5に該当4日あり(3/15最終) 臀部剥離3/22改善傾向 (尿検査)異常3項目 異常の改善1 悪化1 更に悪化2
D様:(色)2→2 (臭い)1→1 (皮膚鼠経)2→1 (皮膚臀部)1→2 (備考)色の項目で4に該当2日あり(最終3/4) 臀部:2 3/22のみ (尿検査)看取り対応となったため尿検査難しく実施出来ず
E様:(色)2→2 (臭い)2→2 (皮膚鼠経)2→2 (皮膚臀部)2→2 (備考)研究中退所のため3/8が最終確認日 (尿検査)異常1項目 異常の改善1 悪化1
【分析、考察】
今回の研究で改めて陰部洗浄への理解を深め、統一した陰部洗浄の実施に取り組み、利用者様の経過確認を行ったが尿検査に明確な改善はみられなかった。理由に期間の短さ、認知機能低下による清潔保持が難しい対象者様については皮膚掻痒感からの掻き壊しで改善が進まなかった点等が挙げられる。一方で尿、皮膚状態は5名共に僅かながらも改善した項目があり、皮膚状態には良い効果が得られたと考えられる。洗浄液が皮膚に残ることで、皮膚炎に繋がるという情報もあり(資料4)、職員からは、限られた時間で洗浄液を十分に洗い流す事が難しいといった声が挙げられた。洗浄液を使用する際は皮膚状態の良くない利用者の判断やきちんとした洗浄が出来ていなければ逆効果になってしまうリスクもある。対象者の内3名は現在も入所中であるが、取り組み開始以降は尿路感染を発症することなく経過しており、職員一人一人の知識や理解、統一したケアの確立については結果を出すことが出来たのではないかと考えている。基本的に単独でケアを実施する事が多く、閉鎖的になりがちな傾向がある排泄ケアだが、今回の取り組みを実施する事で情報共有の活発化や意識向上が、皮膚状態の改善の予防改善に繋がったのではないかと考えられる。今研究を今後のケアに継続して活かしていきたい。
【参考資料】
・資料1 西春内科・在宅クリニックHP内「尿路感染症に高齢者がなりやすい理由 原因と症状について解説」
・資料2 厚生労働省HP内「あんぜんプロジェクト」
・資料3 DearCareHP内「新まるわかり褥瘡ケア」
・資料4 MediaSAWARA内「プライムウォッシュ導入まで…」
高齢者が起こしやすい感染症に尿路感染症がある。原因の一つに認知機能・運動機能の低下による衛生状態維持の困難が挙げられる(資料1)。当施設でもベッド上での排泄が主となっている方が多く入所しており、中には感染症やそれに付随する周辺皮膚状態の悪化が見られるケースもある。そのため、業務内の排泄ケアの強化は重要な役割を果たすと考えた。
上記を踏まえ、尿汚染、皮膚症状の予防・改善、排泄ケアの質強化を目的に、陰部洗浄方法の周知と、統一した手技の実践を図り、尿・皮膚状態を確認するためのスケールを作成し状態の共有。以上の取り組みを元とした業務改善に関しての研究実施報告をしていく。
【倫理的配慮】
高齢者が起こしやすい感染症に尿路感染症がある。原因の一つに認知機能・運動機能の低下による衛生状態維持研究にかかわる関係者は、研究対象者の個人情報保護について適用される法令・条例を遵守する。本演題発表に関連して開示すべき利益相反関係にある企業などはない。
【研究期間・対象】
[研究実施期間] 令和6年2月26日(月)~3月25日(月)
[対象] 下記5名 全員ベッド上終日オムツ交換対応者
()内は利用中の尿路感染発症回数
A:80代 男性(0) B:80代 女性(0) C:90代 女性(4)D:90代 女性(1) E:90代 女性(1)
【研究方法】
1) 当該フロア職員に陰部洗浄方法の映像講義、実技講習を受けてもらい、研究実施要項を周知
2) 尿路感染症確認表を作成 項目:色・臭い・皮膚鼠経・皮膚臀部 計4項目 他特記事項あった際の備考欄に記入
色:1~5の5段階 臭い:ある/なし(評価 あり2・なし1で表記)
皮膚鼠経・皮膚臀部:1~3の3段階 各項目数字の大きい方が不良
3) 尿色スケール(資料2)、皮膚状態(資料3)
IADスケール簡易版を作成 判断基準を設け参照資料を作成
4) 研究前後の尿一般検査全8項目を実施
5) 1)~3)を用いて対象利用者様への陰部洗浄し実施していく
(入浴日以外を実施日とする)
【結果】
各項目 (研究開始時)→(終了時)
A様:(色)2→2 (臭い)2→1 (皮膚鼠経)2→1 (皮膚臀部)2→1 (備考)なし (尿検査)異常1項目 改善1 悪化1
B様:(色)2→2 (臭い)2→2 (皮膚鼠経)2→2 (皮膚臀部)3→2 (備考) 臀部掻き傷皮膚剥離3/22改善傾向 3/24大腿痒み皮疹 (尿検査)異常2項目 改善0 悪化1 更に悪化1
C様:(色)4→3 (臭い)2→2 (皮膚鼠経)2→2 (皮膚臀部)2→2 (備考)色の項目で5に該当4日あり(3/15最終) 臀部剥離3/22改善傾向 (尿検査)異常3項目 異常の改善1 悪化1 更に悪化2
D様:(色)2→2 (臭い)1→1 (皮膚鼠経)2→1 (皮膚臀部)1→2 (備考)色の項目で4に該当2日あり(最終3/4) 臀部:2 3/22のみ (尿検査)看取り対応となったため尿検査難しく実施出来ず
E様:(色)2→2 (臭い)2→2 (皮膚鼠経)2→2 (皮膚臀部)2→2 (備考)研究中退所のため3/8が最終確認日 (尿検査)異常1項目 異常の改善1 悪化1
【分析、考察】
今回の研究で改めて陰部洗浄への理解を深め、統一した陰部洗浄の実施に取り組み、利用者様の経過確認を行ったが尿検査に明確な改善はみられなかった。理由に期間の短さ、認知機能低下による清潔保持が難しい対象者様については皮膚掻痒感からの掻き壊しで改善が進まなかった点等が挙げられる。一方で尿、皮膚状態は5名共に僅かながらも改善した項目があり、皮膚状態には良い効果が得られたと考えられる。洗浄液が皮膚に残ることで、皮膚炎に繋がるという情報もあり(資料4)、職員からは、限られた時間で洗浄液を十分に洗い流す事が難しいといった声が挙げられた。洗浄液を使用する際は皮膚状態の良くない利用者の判断やきちんとした洗浄が出来ていなければ逆効果になってしまうリスクもある。対象者の内3名は現在も入所中であるが、取り組み開始以降は尿路感染を発症することなく経過しており、職員一人一人の知識や理解、統一したケアの確立については結果を出すことが出来たのではないかと考えている。基本的に単独でケアを実施する事が多く、閉鎖的になりがちな傾向がある排泄ケアだが、今回の取り組みを実施する事で情報共有の活発化や意識向上が、皮膚状態の改善の予防改善に繋がったのではないかと考えられる。今研究を今後のケアに継続して活かしていきたい。
【参考資料】
・資料1 西春内科・在宅クリニックHP内「尿路感染症に高齢者がなりやすい理由 原因と症状について解説」
・資料2 厚生労働省HP内「あんぜんプロジェクト」
・資料3 DearCareHP内「新まるわかり褥瘡ケア」
・資料4 MediaSAWARA内「プライムウォッシュ導入まで…」