講演情報
[15-O-A014-05]マネジメントによる専門性の高い職員の育成
*山口 芽生1 (1. 静岡県 介護老人保健施設静岡徳洲苑)
当施設ではより良い職場、サービス提供のため日々生産性向上に取り組んでいる。様々なシステムを導入するなかで、「ムダ・ムリ・ムラ」が生じたことで業務を圧迫してしまうという問題が発生した。専門チームの結成、業務改善委員会の開催、体制の変更と教育活動を行ったことにより、職員育成に繋がり職員の満足度向上、利用者満足度の向上、時間外労働時間の削減を実現することができたためここに報告する。
【はじめに】
2024年度の介護報酬改定において、生産性向上推進体制加算が新設された。当施設では、生産性向上のため、業務改善委員会の発足、各種専門チームの発足、ICT、介護ロボットの活用や職員の意識改革のための教育活動と支援、組織の体制作りを行ったことで、職員満足度の向上、利用者満足度の向上、時間外労働時間の削減、職員の専門性の向上を図ることができたため、ここに報告する。
【目的】
当施設では生産性向上推進体制加算新設前から、業務改善員会による活動やICTとしてほのぼのNEXT、見守りシステムの導入、介護ロボット等生産性向上となる取り組みを行っていた。しかし、新しく取り入れたものの理解が難しい、今までのやり方から変わることへの苦手意識等といった課題が挙げられた。また、新たなシステムの導入や生産性向上のための取り組みが逆に業務負担増量となって、職員の時間外労働時間の増加や心理的負担、混乱の原因になっている様子が見られた。そのため、各種生産性向上のためのシステムの導入等について、組織として新たな体制づくりが課題だと考えた。
まず、業務改善委員会にて、各部署代表者を招集、生産性向上のために取り入れているもので職員の負担や苦手意識となっていること、改善の余地があると考えられているものについてヒアリングした。
ヒアリングの結果得られた情報を例として三つ挙げていく。一つ目は、当施設で個別ケアの充実化のために2023年度より導入したLIFEフィードバックに基づいた個別支援計画書の作成について、作成する職員で知識、技術の差があること、計画書の作成に苦手意識のある職員がいること。二つ目は、ほのぼのNEXTの入力について、入力項目が多く、どこに何を入力すればよいのか迷ってしまう、虫食いになってしまっているところがある。科学的介護推進のために入力内容は増えているが職員間で理解に差がある事。三つ目が、介護ロボットや見守りシステム等ICTを導入したが、使用方法の理解が難しい、機能を使いこなすことができていないということ。上記3点が生産性向上に対する当施設での課題として挙げられた。
共通して挙げられる課題としては、職員の理解力や知識・技術に差があることである。この状況を改革しなければ、今後さらに加速していく生産性向上のための取り組みに遅れをとってしまうと考えた。そして、この状況を打破するために当施設で行った取り組みは、専門チームの結成、職員教育体制の再構築、施設業務進行マネジメントである。
専門チームについていくつか紹介する。まず、「認知症チーム」である。認知症ケア専門士等の資格保持者で結成された「認知症チーム」による定期的な教育活動による職員の知識向上や専門的ケアの充実化への取り組みを実施した。次に「ICTチーム」を紹介する。ICTチームは電子機器関係の取り扱いが得意な職員で結成。既存のICTシステムから新たに導入するICT関係のシステムについてまずチームメンバーが運用方法を把握、施設での使用方法をチームで検討した上でマニュアルを作成し職員へ周知を行う。マニュアルでは理解が難しい、自信がない職員へは個別のレクチャーを行う等の活動をしている。
最後に紹介するのが、施設内の日々の業務のマネジメントに関する取り組みである。介護老人保健施設では多職種が限られた人材のなかで充実したケアを提供する必要がある。そして充実したケアには多職種連携が必須である。当施設では多職種連携の円滑な実施、職員の教育活動の一環として「チーフ」という役割を新設した。「チーフ」は日々の業務の中で各種会議や業務の進行、突発的出来事への対応について総括として多職種の動きをマネジメントし、日々の業務の遂行や課題が出現した際の相談、調整を行う。
【結果】
業務改善委員会により、生産性向上のための課題を明確化したこと、専門チームを結成し、教育活動の専門性を図ったこと、各種システムを導入するにあたって流れや定着のための方法を確立したこと、日々の業務の生産性向上のために新たなマネジメントの役割を確立したことで当施設では職員満足度の向上、時間外業務時間の削減を実現することができた。時間外労働については取り組み開始前と後で月の平均残業時間が、看護部4時間46分から2時間2分、一般棟介護部5時間4分から3時間10分、認知棟介護部5時間17分から4時間18分、通所リハビリ部7時間28分から1時間30分、リハビリ部5時間43分から3時間51分とすべての部署で時間外労働時間を削減することができた。また、職員からの声としては、「役割分担が明確化したことで負担となっていた業務が軽くなった」、「使用に関して難しいと苦手意識を持っていたパソコン関係のことがわかりやすくなって負担が軽減した」などの声があった。
【考察】
生産性向上のためには、日々業務改善に取り組む事が必要である。また職員の知識の差をなくすこと、職員の苦手意識に寄り添うこと、新たに行うことに「ムダ・ムリ・ムラ」が生じ結果としてそれが職員の負担になることを予防するシステムを確立することが生産性向上のための取り組みには必要であると考える。特にICT機器には多くの機能が備わっているが使いこなすこと、施設として必要な機能を見極めることをしないと、使いこなせず逆に生産性向上を阻害する要因になってしまうと考える。
【最後に】
生産性向上への取り組みには人材マネジメントと人材育成が必要不可欠であると今回の取り組みにより実感した。今後さらに進行する少子高齢化による介護人材不足へ備え、施設としての生産性向上への取り組みに日々取り組んでいきたい。
2024年度の介護報酬改定において、生産性向上推進体制加算が新設された。当施設では、生産性向上のため、業務改善委員会の発足、各種専門チームの発足、ICT、介護ロボットの活用や職員の意識改革のための教育活動と支援、組織の体制作りを行ったことで、職員満足度の向上、利用者満足度の向上、時間外労働時間の削減、職員の専門性の向上を図ることができたため、ここに報告する。
【目的】
当施設では生産性向上推進体制加算新設前から、業務改善員会による活動やICTとしてほのぼのNEXT、見守りシステムの導入、介護ロボット等生産性向上となる取り組みを行っていた。しかし、新しく取り入れたものの理解が難しい、今までのやり方から変わることへの苦手意識等といった課題が挙げられた。また、新たなシステムの導入や生産性向上のための取り組みが逆に業務負担増量となって、職員の時間外労働時間の増加や心理的負担、混乱の原因になっている様子が見られた。そのため、各種生産性向上のためのシステムの導入等について、組織として新たな体制づくりが課題だと考えた。
まず、業務改善委員会にて、各部署代表者を招集、生産性向上のために取り入れているもので職員の負担や苦手意識となっていること、改善の余地があると考えられているものについてヒアリングした。
ヒアリングの結果得られた情報を例として三つ挙げていく。一つ目は、当施設で個別ケアの充実化のために2023年度より導入したLIFEフィードバックに基づいた個別支援計画書の作成について、作成する職員で知識、技術の差があること、計画書の作成に苦手意識のある職員がいること。二つ目は、ほのぼのNEXTの入力について、入力項目が多く、どこに何を入力すればよいのか迷ってしまう、虫食いになってしまっているところがある。科学的介護推進のために入力内容は増えているが職員間で理解に差がある事。三つ目が、介護ロボットや見守りシステム等ICTを導入したが、使用方法の理解が難しい、機能を使いこなすことができていないということ。上記3点が生産性向上に対する当施設での課題として挙げられた。
共通して挙げられる課題としては、職員の理解力や知識・技術に差があることである。この状況を改革しなければ、今後さらに加速していく生産性向上のための取り組みに遅れをとってしまうと考えた。そして、この状況を打破するために当施設で行った取り組みは、専門チームの結成、職員教育体制の再構築、施設業務進行マネジメントである。
専門チームについていくつか紹介する。まず、「認知症チーム」である。認知症ケア専門士等の資格保持者で結成された「認知症チーム」による定期的な教育活動による職員の知識向上や専門的ケアの充実化への取り組みを実施した。次に「ICTチーム」を紹介する。ICTチームは電子機器関係の取り扱いが得意な職員で結成。既存のICTシステムから新たに導入するICT関係のシステムについてまずチームメンバーが運用方法を把握、施設での使用方法をチームで検討した上でマニュアルを作成し職員へ周知を行う。マニュアルでは理解が難しい、自信がない職員へは個別のレクチャーを行う等の活動をしている。
最後に紹介するのが、施設内の日々の業務のマネジメントに関する取り組みである。介護老人保健施設では多職種が限られた人材のなかで充実したケアを提供する必要がある。そして充実したケアには多職種連携が必須である。当施設では多職種連携の円滑な実施、職員の教育活動の一環として「チーフ」という役割を新設した。「チーフ」は日々の業務の中で各種会議や業務の進行、突発的出来事への対応について総括として多職種の動きをマネジメントし、日々の業務の遂行や課題が出現した際の相談、調整を行う。
【結果】
業務改善委員会により、生産性向上のための課題を明確化したこと、専門チームを結成し、教育活動の専門性を図ったこと、各種システムを導入するにあたって流れや定着のための方法を確立したこと、日々の業務の生産性向上のために新たなマネジメントの役割を確立したことで当施設では職員満足度の向上、時間外業務時間の削減を実現することができた。時間外労働については取り組み開始前と後で月の平均残業時間が、看護部4時間46分から2時間2分、一般棟介護部5時間4分から3時間10分、認知棟介護部5時間17分から4時間18分、通所リハビリ部7時間28分から1時間30分、リハビリ部5時間43分から3時間51分とすべての部署で時間外労働時間を削減することができた。また、職員からの声としては、「役割分担が明確化したことで負担となっていた業務が軽くなった」、「使用に関して難しいと苦手意識を持っていたパソコン関係のことがわかりやすくなって負担が軽減した」などの声があった。
【考察】
生産性向上のためには、日々業務改善に取り組む事が必要である。また職員の知識の差をなくすこと、職員の苦手意識に寄り添うこと、新たに行うことに「ムダ・ムリ・ムラ」が生じ結果としてそれが職員の負担になることを予防するシステムを確立することが生産性向上のための取り組みには必要であると考える。特にICT機器には多くの機能が備わっているが使いこなすこと、施設として必要な機能を見極めることをしないと、使いこなせず逆に生産性向上を阻害する要因になってしまうと考える。
【最後に】
生産性向上への取り組みには人材マネジメントと人材育成が必要不可欠であると今回の取り組みにより実感した。今後さらに進行する少子高齢化による介護人材不足へ備え、施設としての生産性向上への取り組みに日々取り組んでいきたい。