講演情報

[15-O-A014-06]手浴足浴によるケアの質向上の再認識相乗効果で得られた職員QOL意識

*松村 美代子1、小川 裕太1、大畑 わかな1、大平 奈波1 (1. 愛知県 医療法人親和会老人保健施設松和苑)
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入所ご利用者様の満足度向上を目的として「微酸性電解水を活用した手浴足浴」を実施して得られた効果について報告する。9週間手浴足浴を行い、顕微鏡にて白癬菌の経過を追った結果、白癬菌の減少、身体的機能・満足度の向上がみられた。また、成功体験が職員のケアに対するモチベーション向上にも繋がった取り組みとなった。
【はじめに】
 新型コロナウイルスの感染拡大により、行動制限が課せられる状況は当施設においても同様で、レクリエーション・入浴・食事など全てのサービスが制限され、ご利用者様の満足度の低下や生活内の意欲低下を招いていた。そこで、今一度ご利用者様との関わりを増やし、満足度を高める為に5名のご利用者様に手浴足浴を行い、効果をEQ-5D-3Lで評価する事とした。さらに対象者には白癬の疑いがあり、カビに効果があるといわれている微酸性電解水を用いて手浴足浴を実施した。その取り組み内容と結果を報告する。

 【研究方法】
《期間》令和6年5月1日-令和6年6月30日
《対象者》本施設に入所中の白癬菌の疑いのある5名
《実施方法》対象者5名に微酸性電解水を使用して手浴足浴を実施(毎日)
《評価方法》
(1) 1週間ごとに実施部位の写真撮影
(2)取り組み開始前後の白癬菌を顕微鏡にて撮影
(3)健康状態の記録としてEQ-5D-3Lを使用
 ※EQ-5D-3L(健康関連QOLの測定方法として最も広く用いられている質問表の一つ)5つの質問「移動の程度」「身の回りの管理」「普段の活動」「痛み・不快感」「不安・塞ぎ込み」を3段階のレベルにて判断を行う

(1)白癬菌の数の変化について(顕微鏡を用いて評価)
白癬菌が確認された5名のご利用者様を対象として「微酸性電解水を使用して手浴足浴」を毎日実施した。その結果、取り組み最終時では5名中3名の白癬菌が確認できず、他2名に関しても白癬菌の数が大幅に減少している結果となった。1週間ごとに患部を撮影した写真経過からも、趾間部にあった水疱や紅斑や湿潤した皮膚は徐々に改善しており、経過良好である。

(2)健康状態の変化について(EQ-5D-3Lを用いて評価)
EQ-5D-3L評価項目の「移動の程度」「身の回りの管理」「普段の活動」の日常生活動作に関する3項目に関しては、個人差は見られるが、現状維持以上の効果を得る事が出来た。「痛み・不快感」「不安・塞ぎ込み」の精神面に関する2つの項目では、対象者全員の痒み、痛みの訴えが減少する結果となった。

【考察】
 上記結果から、手浴足浴に用いた微酸性電解水は白癬菌に対しても良好な影響があると考える。最初は手浴足浴に否定的だったご利用者様も、取り組み後に掻痒感や疼痛が軽減され、爪の手入れが不快感なく行える様になった事や、職員とのコミュニケーションをとる機会が増えた事で会話量の増加に繋がり、レクへの参加やホールに出向く活動量が増えたと考える。そのなかでも、足趾に痛みが強く生じ、立ち上がり時に荷重を足趾にかけられず、移乗の際は中等度以上の介助を行っていたB様に関しては、痛みが軽減した事で荷重時痛や不安が解消され、自立レベルまでADLが向上したと考える。
 今回の手浴足浴の取り組みは相乗効果として職員のQOLの意識を高める事にも繋がっていた。新型コロナウイルスにより、業務内容が大きく変化していた事もあり、取り組み開始前の反応として「仕事量の増加」「実施時間の捻出」等の不安の声が聞かれていたが、ご利用者様の患部が徐々に改善した事や、ご利用者様から手足が綺麗になったと感謝のお言葉をいただいた事をきっかけに、職員から様々な提案が生まれ、ベッド上のご利用者様は蒸しタオルにて実施、噴霧の簡易的な方法で行うなど毎日継続的に実施する為にどうすべきかなど、対象者以外でも実施したいとの声が挙がっている。職員一人一人のアイデアが形になり、成功体験となった事がケアに対するモチベーション向上に繋がったと考える。

【まとめ】
 今回の取り組みにより、微酸性電解水による皮膚への良好な効果がご利用者様の満足度の向上に繋がり、さらには職員のモチベーションも向上させる事がわかった。また「次は何をしてあげられるだろう」等の前向きな意見も聞かれるようになり、職員全体の業務への意識や、目標設定も高くなったように感じる。発表メンバー自身も介護という仕事に対する姿勢、気持ちというのも改めて考えさせられた内容となった。今後も継続的に職員が一体となり、ご利用者様の満足度と職員のQOLの意識を高めていけるように努めていきたい。