講演情報
[15-O-A014-07]『俺だって話したい事がある!』~若年利用者の悩み~
*桑名 和人1 (1. 茨城県 介護老人保健施設ナーシングホームかたくり)
在宅復帰を希望される方が多く利用者様の入れ替わりが多い中で、最近は60~70代の比較的若い世代の利用者様が増えてきた。身体機能や環境の急激な変化を受け止めきれないまま当施設に入所されたA様は、不機嫌な様子で職員や利用者様を頻繁に怒鳴る様子が見られていた。今回A様の「俺だって話したい事がある!」という言葉から、A様の感じている悩み、イライラしてしまう原因について、職員間で考え取り組んだ経過を報告する。
【はじめに】
当施設の3階療養科は一般棟であり。在宅復帰を希望される利用者様が多く入所されている。入退所が多い中で、最近は60~70代の比較的若い利用者様が増え、高齢な利用者様と同じ環境で生活して頂くことの難しさを職員は感じている。A様は身体機能や環境の急激な変化を受け止めきれないまま当施設に入所された。そのため日常生活の中で不機嫌な様子があり、職員や他利用者様を怒鳴る様子が見受けられていた。今回A様の「俺だって話したい事がある!」という言葉から、A様の感じている悩み、イライラしてしまう原因について、職員間で考え取り組んだ経過を報告する。
【事例紹介】
A様 60代 男性 要介護5
入所までの経過:父親と二人暮らし、タクシーの運転手をしていた。
令和4年12月23日に自宅で倒れ救急搬送。右被殻出血との診断、左上下肢麻痺、構音障害、高次機能障害が残る。自宅での生活は困難な為、令和5年3月当施設入所。
*ADL・・移動は車椅子を使用されており、健側側の上下肢でバランスをとりながら自走されている。食事は自力摂取可能。排泄面は綿パンツとパットを使用されており、日中はトイレを使用されている。手すりに掴まれば、立位保持は可能。ズボンの上げ下ろしは職員が介助している。夜間帯はパット交換にて対応している。
【入所後の経過】
入所当初から、思うように体を動かせない事にイライラを募らせ、暗い表情で過ごされる様子が見られていた。また、職員の関わり方に問題があったのか、急に怒り始め職員を怒鳴り、追いかける様子が見られた。夜間は排泄の失敗を気にされており、睡眠が浅くフロアに起きてこられる事が増え、不穏になり物にあたる様子もみられていた。
職員は「また怒鳴られるのではないか」という心配からか、必要時以外はA様と関わらなくなっていた。そんな中、職員との会話の中でA様から「俺は苦しみの中で生きているんだ。」「俺だって話したい事がある!」という言葉が聞かれ、職員はA様自身の事をよく知らないまま、表面上の姿だけを見て対応していたのではと考えた。A様はどんな悩みを抱え生活しているのか?苦しみは何なのか、職員全体でアセスメントを行い探る事とした。
【取り組み】(令和5年11月~令和6年3月)
A様を知る為に職員全体でセンター方式シート(C-1-2)を使用しアセスメントを実施し、話し合いを行った。アセスメントの情報からA様の精神的な負担になっているのは、排泄に関しての介助が統一されていない事、そして慣れない環境の中、職員と会話をする事も少なく、周りの利用者様との関わりが上手くいかない事が大きいのではないかという意見が出てきた。
その為、アセスメントから得た情報を職員間で共有し、A様と関わった時の失敗経験や成功経験の情報を踏まえ排泄介助、生活面での対応を行う事にした。
*排泄面・・介助の際、職員の手が濡れていた、衣類が床や便座に触ってしまう事で、怒り始めてしまう事が多かった。また、夜間帯のパットの当て方が職員によって違い、失禁してしまう事があるので統一してほしいとA様からお話があった。その為、A様の要望を職員間で共有した。介助の際には、手袋をしっかり着用し、本人が不快にならないか確認し関わるようにした。また、床にズボンが付かない様に下げる位置を調節した。夜間帯のパットの当て方も職員間で統一した。
*生活面・・他利用者様にA様から話し掛ける様子があったが、構音障害により呂律が回らず上手く話せない事を気にされている意見があった。その為、他利用者とお話しをしている時には、職員が間に入り会話の橋渡しが出来るようにし、A様の話が他利用者様に伝わらない事での負担を軽減出来る様努めた。また、A様に対し苦手意識を持つ職員もいたが、就寝介助や入浴介助など、1対1で関る時に職員から会話を持つようにした。会話をしている時の内容や本人の表情を記録に残し情報共有を行った。
【結果】
取り組み前には表情を強張らせる事も多くあったが、情報を共有し対応を統一した後は穏やかな表情で過ごされる時間が増えた。また、排泄介助に対する不満を話される事は少なくなった。職員からA様に話しかける機会を増やした事で、以前よりもA様から話しかけてくれる様になった。職員が間に入り他利用者様と会話をする中で、冗談を交えて好きなテレビの話をし、職員に対しては「負担の少ない身体の使い方を覚えたい」等のA様自身のお話をしてくださる様になった。「周りが年上で自分の親ぐらいの人もいるから気にしているんだ」など、解決できない悩みもあるが、職員が話を聞く事で、すっきりとした様子もあった。A様の気持ちをまず理解し、受け止めながら支援をしていく事が大切だと感じた。また、情報共有し一人一人が対応する事の重要性を学ぶ事が出来た。
【考察】
A様はご自分が障害を持ってしまった事や環境の急激な変化についていけず、不安を抱えていたのだと思う。今回の取組みを通して、利用者様の表面上の姿だけを見ずに、内に抱える悩みを理解する為には、まず職員から歩み寄り利用者様を知る事が大切だと改めて感じた。また、職員間で情報を共有し、利用者様の生活の悩みを解決していく事が重要だと思う。幅広い年代の方が生活される環境の中で、この事例を通して利用者様一人一人の悩みを解決できるよう取り組んで行きたいと思った。
当施設の3階療養科は一般棟であり。在宅復帰を希望される利用者様が多く入所されている。入退所が多い中で、最近は60~70代の比較的若い利用者様が増え、高齢な利用者様と同じ環境で生活して頂くことの難しさを職員は感じている。A様は身体機能や環境の急激な変化を受け止めきれないまま当施設に入所された。そのため日常生活の中で不機嫌な様子があり、職員や他利用者様を怒鳴る様子が見受けられていた。今回A様の「俺だって話したい事がある!」という言葉から、A様の感じている悩み、イライラしてしまう原因について、職員間で考え取り組んだ経過を報告する。
【事例紹介】
A様 60代 男性 要介護5
入所までの経過:父親と二人暮らし、タクシーの運転手をしていた。
令和4年12月23日に自宅で倒れ救急搬送。右被殻出血との診断、左上下肢麻痺、構音障害、高次機能障害が残る。自宅での生活は困難な為、令和5年3月当施設入所。
*ADL・・移動は車椅子を使用されており、健側側の上下肢でバランスをとりながら自走されている。食事は自力摂取可能。排泄面は綿パンツとパットを使用されており、日中はトイレを使用されている。手すりに掴まれば、立位保持は可能。ズボンの上げ下ろしは職員が介助している。夜間帯はパット交換にて対応している。
【入所後の経過】
入所当初から、思うように体を動かせない事にイライラを募らせ、暗い表情で過ごされる様子が見られていた。また、職員の関わり方に問題があったのか、急に怒り始め職員を怒鳴り、追いかける様子が見られた。夜間は排泄の失敗を気にされており、睡眠が浅くフロアに起きてこられる事が増え、不穏になり物にあたる様子もみられていた。
職員は「また怒鳴られるのではないか」という心配からか、必要時以外はA様と関わらなくなっていた。そんな中、職員との会話の中でA様から「俺は苦しみの中で生きているんだ。」「俺だって話したい事がある!」という言葉が聞かれ、職員はA様自身の事をよく知らないまま、表面上の姿だけを見て対応していたのではと考えた。A様はどんな悩みを抱え生活しているのか?苦しみは何なのか、職員全体でアセスメントを行い探る事とした。
【取り組み】(令和5年11月~令和6年3月)
A様を知る為に職員全体でセンター方式シート(C-1-2)を使用しアセスメントを実施し、話し合いを行った。アセスメントの情報からA様の精神的な負担になっているのは、排泄に関しての介助が統一されていない事、そして慣れない環境の中、職員と会話をする事も少なく、周りの利用者様との関わりが上手くいかない事が大きいのではないかという意見が出てきた。
その為、アセスメントから得た情報を職員間で共有し、A様と関わった時の失敗経験や成功経験の情報を踏まえ排泄介助、生活面での対応を行う事にした。
*排泄面・・介助の際、職員の手が濡れていた、衣類が床や便座に触ってしまう事で、怒り始めてしまう事が多かった。また、夜間帯のパットの当て方が職員によって違い、失禁してしまう事があるので統一してほしいとA様からお話があった。その為、A様の要望を職員間で共有した。介助の際には、手袋をしっかり着用し、本人が不快にならないか確認し関わるようにした。また、床にズボンが付かない様に下げる位置を調節した。夜間帯のパットの当て方も職員間で統一した。
*生活面・・他利用者様にA様から話し掛ける様子があったが、構音障害により呂律が回らず上手く話せない事を気にされている意見があった。その為、他利用者とお話しをしている時には、職員が間に入り会話の橋渡しが出来るようにし、A様の話が他利用者様に伝わらない事での負担を軽減出来る様努めた。また、A様に対し苦手意識を持つ職員もいたが、就寝介助や入浴介助など、1対1で関る時に職員から会話を持つようにした。会話をしている時の内容や本人の表情を記録に残し情報共有を行った。
【結果】
取り組み前には表情を強張らせる事も多くあったが、情報を共有し対応を統一した後は穏やかな表情で過ごされる時間が増えた。また、排泄介助に対する不満を話される事は少なくなった。職員からA様に話しかける機会を増やした事で、以前よりもA様から話しかけてくれる様になった。職員が間に入り他利用者様と会話をする中で、冗談を交えて好きなテレビの話をし、職員に対しては「負担の少ない身体の使い方を覚えたい」等のA様自身のお話をしてくださる様になった。「周りが年上で自分の親ぐらいの人もいるから気にしているんだ」など、解決できない悩みもあるが、職員が話を聞く事で、すっきりとした様子もあった。A様の気持ちをまず理解し、受け止めながら支援をしていく事が大切だと感じた。また、情報共有し一人一人が対応する事の重要性を学ぶ事が出来た。
【考察】
A様はご自分が障害を持ってしまった事や環境の急激な変化についていけず、不安を抱えていたのだと思う。今回の取組みを通して、利用者様の表面上の姿だけを見ずに、内に抱える悩みを理解する為には、まず職員から歩み寄り利用者様を知る事が大切だと改めて感じた。また、職員間で情報を共有し、利用者様の生活の悩みを解決していく事が重要だと思う。幅広い年代の方が生活される環境の中で、この事例を通して利用者様一人一人の悩みを解決できるよう取り組んで行きたいと思った。