講演情報
[15-O-A015-04]リスクアセスメント力を高めるために取り組んだこと
*村井 正直1、宮本 絹代1、舘山 若菜1 (1. 静岡県 介護老人保健施設富士中央ケアセンター)
入所フロアにて発生した転倒骨折事故を受け、事故対策の徹底には、リスクアセスメント能力の向上が必要であると考えられた。リスクアセスメント能力を高めるための取り組みを実施。意識調査、ヒヤリハットボードの設置、集計、対策の検討、実施を行なった。結果、フロア全体のリスクアセスメント能力を高めることにつながった。
【はじめに】
当施設は、入所定員100名、通所定員30名の在宅強化型介護老人保健施設である。当施設には、リスクマネジメント委員会が設置されている。介護・医療における事故発生予防並びに発生した事故の適切な対応及び対策の検討を目的とし、活動している。毎月委員会を開催し、リスクマネジャー、各部署の代表者が中心となり施設における事故の集計、分析を定期的に実施、全体で共有している。
当施設3階フロアにおいて、令和5年3月に同一入所者様の転倒事故による骨折が発生した。事故後には、都度、要因の分析、対策の検討、実施が行なわれていたが、2度目の事故が発生してしまい、事故対策は不十分だった。事故対策を徹底的にするためには、職員個々のリスクアセスメント能力を高める必要があると考えた。アンケートや必要な対策を検討・実施した取り組みについてここに報告する。
【目的】
1.職員の転倒転落事故に対する危険予測を高める。
2.予測した危険に対して職員が発信して対策を行うことができるようになる。
【研究方法】
1.事故に対する意識調査のアンケートを実施(1回目R5年7月、2回目R6年6月)
2.転倒転落事故の件数を掲示、共有を図る
3.ヒヤリハットボードの設置
転倒転落につながる可能性のあるヒヤリハットをステーション内設置ボードに貼り共有する
4.ヒヤリハットを集計し対策を検討、実施
【結果】
1.アンケート結果より、業務時間内に常に危険予測を行ないながら業務を行なっていたと答えた職員が1回目は83%に対し、2回目は100%に増えた。
2.掲示された転倒転落事故の件数を見ていると答えた職員は100%だった。
3.ヒヤリハットボードを使用した職員は73%、ヒヤリハットボードを確認した職員は80%だった。ヒヤリハットボードの継続については継続できるが73%であった。
4.ヒヤリハットボードにあがっていた入所者様から3名を抽出し、対策を行なう。
(1)事例A:男性、脳梗塞による左上下肢麻痺
車椅子操作自立、ベッド移乗動作介助。ベッドのブレーキが外れていることがあり、カーテンを閉める為にベッドを動かしていることがわかった。移乗時にベッドが動いてしまうことで、転倒してしまう危険性があった。対策として、職員が前もってカーテンを閉めておくようにした。結果、ブレーキを外すことはなくなり安全に移乗を行なえている。
(2)事例B:女性、脳出血による重度の右片麻痺と失語症
車椅子操作自立、ベッド移乗動作一部介助。日中、ベッド上に端坐位になっていることが多く、動いて転倒してしまう危険性があった。対策として、ベッド周囲にナースコールを押していただくよう貼り紙をし、臥床時にはナースコールを押すように毎回声掛けを行なった。また、スケジュール表をご本人と作成し、離床、臥床時間をご本人、職員で共有。結果、離床時のナースコール使用が増え、職員も生活リズムを確認し所在確認を意識して行なえている。
(3)事例C:女性、高齢であり、体力・筋力(特に体幹筋力)の低下がある車椅子操作見守り~一部介助。車椅子座位および自操時、姿勢保持ができず、体がずれてしまい、車椅子からの転落の危険性があった。対策として、クッション表面裏面にすべり止めシートを巻いて使用。写真を使用し周知した。結果、姿勢崩れが減少。座位姿勢を気にかけて都度修正ができるようになり、すべり止めシート装着忘れも減少した。
【考察】
介護におけるリスクアセスメントとは、利用者、ケア、施設に影響を及ぼす可能性のある潜在的なリスクや危険性を体系的に特定、評価、管理することと定義される。
今回の取り組み前は、職員に対し、『リスクアセスメント』に対する教育や指導、訓練が少なかった。リスクアセスメントについて職員の意識が低く、潜在的なリスクを想定し、対応できる職員が少なかった。本研究に取り組むことで、職員がリスクがあると考えた内容、程度は職員個々によって異なることが明らかになった。職員自身がリスクアセスメントをしていると認識しても、職員の経験や年数等により、リスクアセスメントに対する能力の違いがあった。ヒヤリハットボードの設置により、リスクの内容を共有することで、フロア全体のリスクアセスメントに対する意識を高めることにつながった。また、ヒヤリハットボードから対策を検討し、事故予防につながったことで、リスクアセスメントの重要性を認識できた。日常の援助の場面からリスクアセスメントをすること、他職員の予測した危険を知ること、支援し、実行することは、個人だけでなくフロア全体のリスクアセスメント力を高めることにつながる。ヒヤリハットボードの設置は有効な手段であったと考える。しかし、ヒヤリハットボードの使用については継続できないとした職員の意見もあり、継続できる使用方法については課題である。
【まとめ】
事故予防対策として職員のリスクアセスメント力を高めることは重要である。リスクアセスメント力を高める為には日頃から訓練をしていかなければならない。その方法として見える化が有効的であった為、継続できる方法でヒヤリハットボードを活用し、転倒転落を防いでいきたい。
当施設は、入所定員100名、通所定員30名の在宅強化型介護老人保健施設である。当施設には、リスクマネジメント委員会が設置されている。介護・医療における事故発生予防並びに発生した事故の適切な対応及び対策の検討を目的とし、活動している。毎月委員会を開催し、リスクマネジャー、各部署の代表者が中心となり施設における事故の集計、分析を定期的に実施、全体で共有している。
当施設3階フロアにおいて、令和5年3月に同一入所者様の転倒事故による骨折が発生した。事故後には、都度、要因の分析、対策の検討、実施が行なわれていたが、2度目の事故が発生してしまい、事故対策は不十分だった。事故対策を徹底的にするためには、職員個々のリスクアセスメント能力を高める必要があると考えた。アンケートや必要な対策を検討・実施した取り組みについてここに報告する。
【目的】
1.職員の転倒転落事故に対する危険予測を高める。
2.予測した危険に対して職員が発信して対策を行うことができるようになる。
【研究方法】
1.事故に対する意識調査のアンケートを実施(1回目R5年7月、2回目R6年6月)
2.転倒転落事故の件数を掲示、共有を図る
3.ヒヤリハットボードの設置
転倒転落につながる可能性のあるヒヤリハットをステーション内設置ボードに貼り共有する
4.ヒヤリハットを集計し対策を検討、実施
【結果】
1.アンケート結果より、業務時間内に常に危険予測を行ないながら業務を行なっていたと答えた職員が1回目は83%に対し、2回目は100%に増えた。
2.掲示された転倒転落事故の件数を見ていると答えた職員は100%だった。
3.ヒヤリハットボードを使用した職員は73%、ヒヤリハットボードを確認した職員は80%だった。ヒヤリハットボードの継続については継続できるが73%であった。
4.ヒヤリハットボードにあがっていた入所者様から3名を抽出し、対策を行なう。
(1)事例A:男性、脳梗塞による左上下肢麻痺
車椅子操作自立、ベッド移乗動作介助。ベッドのブレーキが外れていることがあり、カーテンを閉める為にベッドを動かしていることがわかった。移乗時にベッドが動いてしまうことで、転倒してしまう危険性があった。対策として、職員が前もってカーテンを閉めておくようにした。結果、ブレーキを外すことはなくなり安全に移乗を行なえている。
(2)事例B:女性、脳出血による重度の右片麻痺と失語症
車椅子操作自立、ベッド移乗動作一部介助。日中、ベッド上に端坐位になっていることが多く、動いて転倒してしまう危険性があった。対策として、ベッド周囲にナースコールを押していただくよう貼り紙をし、臥床時にはナースコールを押すように毎回声掛けを行なった。また、スケジュール表をご本人と作成し、離床、臥床時間をご本人、職員で共有。結果、離床時のナースコール使用が増え、職員も生活リズムを確認し所在確認を意識して行なえている。
(3)事例C:女性、高齢であり、体力・筋力(特に体幹筋力)の低下がある車椅子操作見守り~一部介助。車椅子座位および自操時、姿勢保持ができず、体がずれてしまい、車椅子からの転落の危険性があった。対策として、クッション表面裏面にすべり止めシートを巻いて使用。写真を使用し周知した。結果、姿勢崩れが減少。座位姿勢を気にかけて都度修正ができるようになり、すべり止めシート装着忘れも減少した。
【考察】
介護におけるリスクアセスメントとは、利用者、ケア、施設に影響を及ぼす可能性のある潜在的なリスクや危険性を体系的に特定、評価、管理することと定義される。
今回の取り組み前は、職員に対し、『リスクアセスメント』に対する教育や指導、訓練が少なかった。リスクアセスメントについて職員の意識が低く、潜在的なリスクを想定し、対応できる職員が少なかった。本研究に取り組むことで、職員がリスクがあると考えた内容、程度は職員個々によって異なることが明らかになった。職員自身がリスクアセスメントをしていると認識しても、職員の経験や年数等により、リスクアセスメントに対する能力の違いがあった。ヒヤリハットボードの設置により、リスクの内容を共有することで、フロア全体のリスクアセスメントに対する意識を高めることにつながった。また、ヒヤリハットボードから対策を検討し、事故予防につながったことで、リスクアセスメントの重要性を認識できた。日常の援助の場面からリスクアセスメントをすること、他職員の予測した危険を知ること、支援し、実行することは、個人だけでなくフロア全体のリスクアセスメント力を高めることにつながる。ヒヤリハットボードの設置は有効な手段であったと考える。しかし、ヒヤリハットボードの使用については継続できないとした職員の意見もあり、継続できる使用方法については課題である。
【まとめ】
事故予防対策として職員のリスクアセスメント力を高めることは重要である。リスクアセスメント力を高める為には日頃から訓練をしていかなければならない。その方法として見える化が有効的であった為、継続できる方法でヒヤリハットボードを活用し、転倒転落を防いでいきたい。