講演情報
[15-O-A016-02]より良いケアのための「自立支援カンファレンス」カンファレンスのプロセスと利点、その課題
*長田 昌弘1 (1. 愛知県 介護老人保健施設生あおみ)
令和3年の介護報酬改定で、当施設では介護福祉士が主導する自立支援カンファレンスが導入され、ケアの質向上と利用者の自立推進が促進された。アンケート調査では、介護福祉士の66%がケアポリシーの決定に役立ち、58%が情報共有を促進、54%が利用者との関係が深まったと回答。一方で業務調整の課題も浮上。今後はデジタルツールの活用やスタッフ間の協力強化が求められる。
【はじめに】
令和3年の介護報酬改定では、「自立支援促進加算」が新たに導入され、自立推進と重症化予防の重要性が、これまで以上に強調されるようになった。この加算は、重症化予防と自立推進に焦点を当て、ケアを受ける利用者の生活の質を高めることを目指している。改定の一環として、ケアの質の向上と利用者の自立を促進することを目的に、令和3年4月から、介護福祉士が主導する自立支援カンファレンス(以下、「カンファレンス」と略)が始まった。このカンファレンスの導入による効果について、介護福祉士の視点から調査を行い、カンファレンスの運用プロセス、その利点、及び課題点を検証した。
【運用方法】
・改定前より、介護福祉士は看護師やリハビリスタッフといった他職種のスタッフと協力し、月に少なくとも1回は、それぞれの利用者に焦点を当てた会議を開催しており、この会議を「自立支援カンファレンス」と名付けて、新しい形で始めた。
・介護福祉士は、自らが担当する利用者に対し、月に1回以上、カンファレンスを主催し、この際、「離床・基本動作」、「ADL(日常生活動作)」、「日常の過ごし方」など、重要な項目を選定し、ケアポリシーを策定する。
・スタッフは、このカンファレンスに基づいてケアを実施し、結果をカルテに記録する。
【調査結果】
カンファレンスの導入効果について、令和6年2月に27名の利用者を担当する介護福祉士を対象にした調査結果をまとめた。この調査は、倫理審査会の承認を受け、アンケート形式により96%の回答率を得て実施された。
・66%の介護福祉士は、カンファレンスがケアポリシーの決定に役立ち、その結果、ケアの質が向上したと感じている。
・58%の介護福祉士が、カンファレンスが他のスタッフとの情報共有を促進し、結果として適切なケアを提供することが容易になったと答えている。
・54%の介護福祉士は、カンファレンスを通じて、担当する利用者との関係や理解が深まったと報告している。
・一方で、52%の介護福祉士は、ケアの多様化や記録管理のための業務調整が必要だと感じている。
【考察】
自立支援カンファレンスが実施されることにより、スタッフ間での情報共有が促進され、利用者への個別対応が可能となったことが調査から明らかになった。これは、介護福祉士と利用者との関係が深められ、結果としてケアの質を向上させていることを示唆する。カンファレンスを導入する前は、介護福祉士が利用者に適したケアポリシーを明確にすることが難しい状況であった。その結果、利用者に対して均一的なケアが施されることが多く、ケアの実施と記録に矛盾が生じることもあった。しかし、カンファレンス導入後は、スタッフが利用者の生活上の課題と提供すべきケアを具体的に把握できるようになり、適切な個別ケアを実施し、記録することが可能となった。また、利用者との日々の交流からニーズを深く理解できるようになり、均一的なケアの減少と個別化された支援計画の策定へと繋がった。ただし、カンファレンスの導入が、記録管理の効率化や業務の調整に新たな課題をもたらしたことも明らかになった。これらの課題は、新しいデジタルツールの活用や、スタッフ間での役割分担と責任範囲の明確化などが重要である。また、カンファレンスでの現状評価と支援計画の議論も今後の課題であり、質の高いケアを実現するためにはチームワークの強化とカンファレンス改善が不可欠である。
【まとめ】
自立支援カンファレンスの導入により、利用者のニーズへの理解が深まり、スタッフ間での情報共有が促された結果、質の高い個別ケアの提供が可能になったことが分かった。介護福祉士がカンファレンスを通じてケアポリシーを提案することで、ケアへの責任感が養われ、ケアの質が向上した。今後はカンファレンスの積極的な活用を続け、スタッフ間の協力をさらに深めることで、ケアの質をさらに向上させることが望まれる。
令和3年の介護報酬改定では、「自立支援促進加算」が新たに導入され、自立推進と重症化予防の重要性が、これまで以上に強調されるようになった。この加算は、重症化予防と自立推進に焦点を当て、ケアを受ける利用者の生活の質を高めることを目指している。改定の一環として、ケアの質の向上と利用者の自立を促進することを目的に、令和3年4月から、介護福祉士が主導する自立支援カンファレンス(以下、「カンファレンス」と略)が始まった。このカンファレンスの導入による効果について、介護福祉士の視点から調査を行い、カンファレンスの運用プロセス、その利点、及び課題点を検証した。
【運用方法】
・改定前より、介護福祉士は看護師やリハビリスタッフといった他職種のスタッフと協力し、月に少なくとも1回は、それぞれの利用者に焦点を当てた会議を開催しており、この会議を「自立支援カンファレンス」と名付けて、新しい形で始めた。
・介護福祉士は、自らが担当する利用者に対し、月に1回以上、カンファレンスを主催し、この際、「離床・基本動作」、「ADL(日常生活動作)」、「日常の過ごし方」など、重要な項目を選定し、ケアポリシーを策定する。
・スタッフは、このカンファレンスに基づいてケアを実施し、結果をカルテに記録する。
【調査結果】
カンファレンスの導入効果について、令和6年2月に27名の利用者を担当する介護福祉士を対象にした調査結果をまとめた。この調査は、倫理審査会の承認を受け、アンケート形式により96%の回答率を得て実施された。
・66%の介護福祉士は、カンファレンスがケアポリシーの決定に役立ち、その結果、ケアの質が向上したと感じている。
・58%の介護福祉士が、カンファレンスが他のスタッフとの情報共有を促進し、結果として適切なケアを提供することが容易になったと答えている。
・54%の介護福祉士は、カンファレンスを通じて、担当する利用者との関係や理解が深まったと報告している。
・一方で、52%の介護福祉士は、ケアの多様化や記録管理のための業務調整が必要だと感じている。
【考察】
自立支援カンファレンスが実施されることにより、スタッフ間での情報共有が促進され、利用者への個別対応が可能となったことが調査から明らかになった。これは、介護福祉士と利用者との関係が深められ、結果としてケアの質を向上させていることを示唆する。カンファレンスを導入する前は、介護福祉士が利用者に適したケアポリシーを明確にすることが難しい状況であった。その結果、利用者に対して均一的なケアが施されることが多く、ケアの実施と記録に矛盾が生じることもあった。しかし、カンファレンス導入後は、スタッフが利用者の生活上の課題と提供すべきケアを具体的に把握できるようになり、適切な個別ケアを実施し、記録することが可能となった。また、利用者との日々の交流からニーズを深く理解できるようになり、均一的なケアの減少と個別化された支援計画の策定へと繋がった。ただし、カンファレンスの導入が、記録管理の効率化や業務の調整に新たな課題をもたらしたことも明らかになった。これらの課題は、新しいデジタルツールの活用や、スタッフ間での役割分担と責任範囲の明確化などが重要である。また、カンファレンスでの現状評価と支援計画の議論も今後の課題であり、質の高いケアを実現するためにはチームワークの強化とカンファレンス改善が不可欠である。
【まとめ】
自立支援カンファレンスの導入により、利用者のニーズへの理解が深まり、スタッフ間での情報共有が促された結果、質の高い個別ケアの提供が可能になったことが分かった。介護福祉士がカンファレンスを通じてケアポリシーを提案することで、ケアへの責任感が養われ、ケアの質が向上した。今後はカンファレンスの積極的な活用を続け、スタッフ間の協力をさらに深めることで、ケアの質をさらに向上させることが望まれる。