講演情報

[15-O-A016-03]covid-19クラスターでの褥瘡発生について褥瘡発生軽減とその取り組み

*堀川 克貴1 (1. 高知県 介護老人保健施設夢の里)
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当施設でのcovid-19クラスターにより居室対応による臥床時間の増加に伴い褥瘡発生者が著しく増加した。それに伴い今後の対策を委員会等で話し合い、施設全体で褥瘡に対する勉強会等を行った。約1年後再度クラスターとなってしまったが以前の経験を生かし対応を行った。その結果、終息まで新たな褥瘡発生者は0人で終えることができた。施設全体での褥瘡に対する意識改善がみられた。
当施設の褥瘡に対する取り組みについて、クラスター発生前から月1回褥瘡対策委員会を実施し褥瘡のある利用者の情報共有、ケアに対する対策などを実施していた。クラスター発生前の褥瘡利用者は1名であった。施設全体の取り組みとしては年1回褥瘡に対する勉強会を実施していた。
R4.11月covid-19クラスター発生。利用者様は基本的に自室対応となった。普段日中ホールで過ごされる方もベッド臥床対応になることが多かった。定時でのオムツ交換などは実施していた。結果として新たに4名の利用者様の褥瘡が発生した。発生部位としては(1)仙骨部(2)尾骨部(3)左足背部、左踵部(4)仙骨部に褥瘡が発生した。この4名の共通点としてはクラスター発生前までは日中離床されホールで過ごされている方々であった。
クラスター時の褥瘡の発生の要因についていくつかの原因が考えられた。利用者のcovid-19罹患により長期のベッド臥床期間により身体機能の低下、栄養面の低下、活動性の低下から褥瘡が発生しやすい状況になった。定時でのオムツ交換は行えていたが普段に比べると汚染などによる陰部の湿潤によって褥瘡が発生しやすい状況になっていた。その他にも身体機能、栄養面の低下に伴い体位変換などが必要になった利用者に対して適切な対応が遅れていた(マット変更も込む) 。これらの要因が重なり大人数の利用者様の褥瘡が発生したと考えられる。
終息後、再度褥瘡対策委員会を開き今後の褥瘡発生予防に対しての話し合いを行った。また、褥瘡委員以外からの現場の意見も取り入れたかった為、後日書類によるアンケート調査を行った。委員会内での反省点としていくつか挙げられた。まずクラスター発生時には居室対応で臥床対応になることが多くなるためあらかじめリスク者には体圧分散マットやエアマットに交換を行う必要があった。またcovid-19に罹患した際にはリスク者でなくてもレベル低下が考えられるので新たにリスク者として考える必要があった。職員の褥瘡に対する理解、ポジショニング等が不十分だった為一人一人の利用者に対してのポジショニングが行えていなかった。エアマットの総数も十分ではなかったため新たにいくつか補填することとなった。
現場からのアンケート結果から多かった意見として「どうやってポジショニングをしていいか分からない」、「クッションなどの用具の正しい使い方が分からない」の二つの意見が多くあった。他には「クラスターという環境の中で人手が足りなく十分な処置が行えなかった」など人手不足による声も聞かれた。これらの意見を踏まえて再度褥瘡に対する勉強会を実施した。感染対策期間であったため全職員を対象にした実技での実施は困難であった。そのため実際の現場で利用者介入中等に褥瘡委員やリハビリ職員がその場で疑問に思ったことなどの質問にも対応し実際にポジショニングを実施し伝達を行った。また褥瘡の発生の機序や好発部位など知識として必要な部分は筆記を行って頂き褥瘡に対する理解をより深めてもらった。用具などの使用方法もリハビリスタッフと意見交換行い、当施設でよく見るクッションの使用やポジショニングの間違いなど写真を用いて資料として提供した。結果として、その後の現場でのポジショニングや用具の使用の失敗が軽減し職員からの褥瘡やポジショニングに対する質問が現場で聞かれることが増加し個々の理解を深めることができた。
R5.8月2度目のcovid-19クラスター発生した。前回の反省点も考慮し罹患者、リスク者に対して必要な方には率先してエアマットへの変更を行い、適宜体位変換、ポジショニングの確認等現場でも行っていった。結果として終息時新たな褥瘡発生者0人で終えることができた。その要因として初回のクラスター発生時の反省点を生かしマット交換やポジショニングなど実施したため褥瘡発生のリスクを最小限に抑えることができた。また現場全体の動きとしても感染BCPマニュアルを作成することにより円滑に作業、対策が行えており陰洗ケアなども十分に行えていた。また安全が確保できる利用者に関しては離床行い車椅子等で過ごしていただき身体機能面、耐久性の低下の予防を行った。その他にも現場からリスクがあるのではないかなど率先した意見、軒下カンファなどで情報交換が行えていた。褥瘡発生に対するリスク管理が現場全体で行えていたことが一番の要因であると考える。
クラスターや勉強会を通じて現場の全体的な褥瘡に対する理解、リスク管理能力が向上した。不良な姿勢の修正、ポジショニング方法、用具の使用方法等の理解は以前に比べ軽減した。しかし、一部分では十分なポジショニングやクッションなどの用具の使用が行えておらず、褥瘡者も数名いる状況である。今後も実技を取り入れた勉強会や知識の再確認を実施し施設全体での褥瘡に対する理解を深めることにより施設内褥瘡発生者0人を目指していきたい。