講演情報
[15-O-C005-01]褥瘡に対するアプローチ~栄養のサポート~
*浅野 亜輝1 (1. 東京都 医療法人財団 立川中央病院 介護老人保健施設 アルカディア)
本研究は亜鉛の効果が皮膚の創傷治癒に効果があることに着目し、食事摂取困難な利用者様が亜鉛やタンパク質の栄養補助食品を摂取することにより、褥瘡の縮小や治癒に繋がるかを評価した。研究期間中に体調の変化や食事量低下により体重の減少が著明となったが、腰部の褥瘡や左下肢の難治性潰瘍部治癒がみられた事から、栄養補助食品の選択が良性肉芽の形成や褥瘡の縮小と繋がった事が結論付けられる。
【はじめに】
亜鉛の効果が皮膚の創傷治癒に効果があることに着目し、食事摂取困難な利用者様が栄養補助食品(亜鉛やタンパク質)を摂取することにより、褥瘡の縮小や治癒に繋がるかを評価する。
【事例紹介】
対象者:S様 80代男性 介護度4 身長175cm 入所時体重64.7kg
既往歴:両下肢リンパ浮腫、うっ血性皮膚潰瘍、高血圧脳梗塞、気管支炎、肺炎
皮膚状態:両下肢リンパ浮腫著明、仙骨部に骨突出・褥瘡痕あり。左下肢・足底部に皮膚潰瘍形成、両足趾変形あり。
ADL:全介助(動作緩慢、立位時膝折れあり、立位保持困難、車椅子はティルト使用。介助は2名体制で実施。臥床時には自力体動不可)入所時より除圧マットを使用。4/17~エアマットへ変更。
入所までの経過:デイケアを利用し自宅で生活をしていた。食事摂取量の低下・ADLの低下あり、3/29に当施設へ入所。
性格:元高校教師、頑固で他人からの助言を聞き入れない傾向あり。食事摂取や体位変換に拒否あり介護介入困難なことが多くみられる。食事も「美味しくない」とお話しされていた。
【褥瘡の経過】
4/17 左腰部に褥瘡発症(2.5×4cm大)
5/15 ポケット形成(1cm大)あり施設でデブリ施行、褥瘡(2.2×1.5cm大)
同日、栄養補助食品の提供を開始
6/16 ポケット拡大(2.5×2cm大)あり、形成外科受診しデブリ施行、褥瘡(3×3.5cm大)
11/20 ポケット縮小(0.8cm大)あり、褥瘡(1.3×0.8cm大)
【取り組み方法】
5/15~2週間プロテインパウダー(粉末、毎食時にお茶に混ぜる)2回/日(1日12g)提供
6/8~2週間エンジョイコラーゲンゼリー1個/日、
6/22~プロテインパウダー12g/日・エンジョイコラーゲンゼリー1個/日を提供。
以降、プロテインパウダーはサンプルの為2パック使用し、11月より飲み切り終了。
【取り組み期間】
令和5年5月15日~令和5年11月30日 (栄養補助食品を提供した期間)
【倫理的配慮】
研究にかかわる関係者は、研究対象者の個人情報保護について適用される法令・条例を遵守する。本演題発表に関連して開示すべき利益相反関係にある企業などはない。
【結果】
6/22~エンジョイゼリー+プロテインパウダー同時摂取した後に行った採血データは、栄養状態の大きな改善がみられた。
その後、同時摂取はせずエンジョイゼリーのみを提供し(サンプルは飲み切った為)、後の採血データは栄養状態の低下がみられた。食事摂取量にムラがみられるため、亜鉛とプロテインだけでは評価することは難しいが、褥瘡の縮小がみられる結果となった。
【考察】
医師・倉澤隆平氏は「耐圧や皮膚バリア障害はきっかけにすぎず、褥瘡の主な要因は亜鉛欠乏にある」と述べている。S様の場合食事摂取量の維持ができず低栄養状態であり、亜鉛不足に陥っていたことが考えられる。
【結論】
治癒に向けて栄養面に着目したことにより、褥瘡の縮小がみられた。採血データ上、モニタリング開始時より一時的に栄養状態の改善もみられた。体調の変化や食事量低下により体重の減少が著明となったが、腰部の褥瘡部や左下肢の難治性潰瘍部治癒がみられた事から、栄養補助食品の選択が良性肉芽の形成や褥瘡の縮小と繋がった事が結論付けられる。褥瘡リスクが高い、または褥瘡発生時には、除圧援助に着目しがちであるが、栄養面のアプローチが大切である。また高齢者は十分な食事摂取量を維持できない方が多い傾向にあり、食事だけでは十分な栄養素を摂取できていない現状がある。これまで褥瘡悪化した利用者は施設での対応が困難となり入院を余儀なくされていたが褥瘡の状態が悪化した場合でも日々のケアと栄養補助食品の導入を行う事で施設での対応も可能になるのではないかという良い事例となった。
参考文献:日本褥瘡学会、褥瘡ガイドブックー第2版、照林社、東京2015:135
褥瘡予防NPUAP/PPPIA合同製作のガイドライン
亜鉛の効果が皮膚の創傷治癒に効果があることに着目し、食事摂取困難な利用者様が栄養補助食品(亜鉛やタンパク質)を摂取することにより、褥瘡の縮小や治癒に繋がるかを評価する。
【事例紹介】
対象者:S様 80代男性 介護度4 身長175cm 入所時体重64.7kg
既往歴:両下肢リンパ浮腫、うっ血性皮膚潰瘍、高血圧脳梗塞、気管支炎、肺炎
皮膚状態:両下肢リンパ浮腫著明、仙骨部に骨突出・褥瘡痕あり。左下肢・足底部に皮膚潰瘍形成、両足趾変形あり。
ADL:全介助(動作緩慢、立位時膝折れあり、立位保持困難、車椅子はティルト使用。介助は2名体制で実施。臥床時には自力体動不可)入所時より除圧マットを使用。4/17~エアマットへ変更。
入所までの経過:デイケアを利用し自宅で生活をしていた。食事摂取量の低下・ADLの低下あり、3/29に当施設へ入所。
性格:元高校教師、頑固で他人からの助言を聞き入れない傾向あり。食事摂取や体位変換に拒否あり介護介入困難なことが多くみられる。食事も「美味しくない」とお話しされていた。
【褥瘡の経過】
4/17 左腰部に褥瘡発症(2.5×4cm大)
5/15 ポケット形成(1cm大)あり施設でデブリ施行、褥瘡(2.2×1.5cm大)
同日、栄養補助食品の提供を開始
6/16 ポケット拡大(2.5×2cm大)あり、形成外科受診しデブリ施行、褥瘡(3×3.5cm大)
11/20 ポケット縮小(0.8cm大)あり、褥瘡(1.3×0.8cm大)
【取り組み方法】
5/15~2週間プロテインパウダー(粉末、毎食時にお茶に混ぜる)2回/日(1日12g)提供
6/8~2週間エンジョイコラーゲンゼリー1個/日、
6/22~プロテインパウダー12g/日・エンジョイコラーゲンゼリー1個/日を提供。
以降、プロテインパウダーはサンプルの為2パック使用し、11月より飲み切り終了。
【取り組み期間】
令和5年5月15日~令和5年11月30日 (栄養補助食品を提供した期間)
【倫理的配慮】
研究にかかわる関係者は、研究対象者の個人情報保護について適用される法令・条例を遵守する。本演題発表に関連して開示すべき利益相反関係にある企業などはない。
【結果】
6/22~エンジョイゼリー+プロテインパウダー同時摂取した後に行った採血データは、栄養状態の大きな改善がみられた。
その後、同時摂取はせずエンジョイゼリーのみを提供し(サンプルは飲み切った為)、後の採血データは栄養状態の低下がみられた。食事摂取量にムラがみられるため、亜鉛とプロテインだけでは評価することは難しいが、褥瘡の縮小がみられる結果となった。
【考察】
医師・倉澤隆平氏は「耐圧や皮膚バリア障害はきっかけにすぎず、褥瘡の主な要因は亜鉛欠乏にある」と述べている。S様の場合食事摂取量の維持ができず低栄養状態であり、亜鉛不足に陥っていたことが考えられる。
【結論】
治癒に向けて栄養面に着目したことにより、褥瘡の縮小がみられた。採血データ上、モニタリング開始時より一時的に栄養状態の改善もみられた。体調の変化や食事量低下により体重の減少が著明となったが、腰部の褥瘡部や左下肢の難治性潰瘍部治癒がみられた事から、栄養補助食品の選択が良性肉芽の形成や褥瘡の縮小と繋がった事が結論付けられる。褥瘡リスクが高い、または褥瘡発生時には、除圧援助に着目しがちであるが、栄養面のアプローチが大切である。また高齢者は十分な食事摂取量を維持できない方が多い傾向にあり、食事だけでは十分な栄養素を摂取できていない現状がある。これまで褥瘡悪化した利用者は施設での対応が困難となり入院を余儀なくされていたが褥瘡の状態が悪化した場合でも日々のケアと栄養補助食品の導入を行う事で施設での対応も可能になるのではないかという良い事例となった。
参考文献:日本褥瘡学会、褥瘡ガイドブックー第2版、照林社、東京2015:135
褥瘡予防NPUAP/PPPIA合同製作のガイドライン