講演情報
[15-O-C005-02]どんな褥瘡もおまかせあれ!~あの大きな傷治ったの?!夕霧最強チーム~
*林 和代1、一野 恵里奈1、森 省一郎1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設 夕霧)
褥瘡発生により在宅介護が困難となり、入所に至った利用者の持ち込み褥瘡が治癒・縮小し良い結果が得られたので報告する。創部に便が入り込むたび洗浄を行った介護職員。栄養面からアプローチをした管理栄養士や、咀嚼力・ADL向上のためのリハビリを実施した理学療法士。処置方法を検討しあった医師・看護師。他職種との情報共有・対応の統一ができたことが褥瘡治癒に繋がったと考える。
【はじめに】
当施設は、基本型の老健で看取りのケアも積極的に行っている。そのため、亡くなるまで入所している利用者も多く、全身状態が悪くなると褥瘡発生に至るケースもある。今回褥瘡発生により、在宅介護が困難となり、入所に至った2例の持ち込み褥瘡について、良い結果が得られたので、その取り組みについて報告する。
【事例1】
N様 87歳 女性 認知症 糖尿病あり。入所時日常生活自立度C1 要介護度4。左大転子部に5cm×4cmの黒色の褥瘡あり。入所時のDESING-R:24点。中心部は厚く硬い黒色壊死があり、周囲は炎症がみられた。まずは壊死組織を取り除くため毎日洗浄し、壊死部はゲーベンクリーム、炎症部分はゲンタシン軟膏で処置を開始した。創部が浸軟してきたところでデブリードマンを計4回実施。肉芽の盛り上がりを図るためワセリン塗布し、湿潤環境を維持した。
食事は糖尿病食を全粥・副菜キザミの形態で提供していたが、全量摂取は難しく、噛みだまりができると口から出してしまう状態であった。管理栄養士と相談し、形態をミキサー食に変更したところ、全量摂取出来るようになった。
また、活動意欲の低下があったため、理学療法士を中心に週2回のレクリエーションを促したところ、楽しんで参加できるようになった。経過は良好で、徐々に肉芽が盛り上がり、入所51日目に治癒となった。
【事例2】
M様 86歳 女性 左坐骨部褥瘡感染にて体動不能となり、急性期病院へ緊急入院。入院中にデブリードマン施行。褥瘡感染、全身状態は改善したが、在宅介護が困難なため入院22日目に当施設へ入所となる。入所時の体重88.8kg BMI36.5 日常生活自立度C2 要介護度4。入院中にデブリードマン施行により創が上下にみられた。左坐骨創上部9cm×6.5cm、下部9cm×6.5cmの褥瘡があり、DESING-R:27点。前医の処置は、カデックス軟膏を塗布し、ガーゼを入れ込んでいた。創色はピンク色で創縁に一部黒色創がみられた。血流改善し清浄化を図るため、洗浄後フィブラストスプレー噴霧の処置を行った。しかし、水様便が頻回にあり創部へ便が入り込むという問題があった。創感染を起こさないため、排便時は毎回洗浄を行い、創部を清潔に保つよう介護職員へ依頼し実施してもらった。入所50日目にはDESING-R:15点。創上部は6.6cm×1.3cm、下部7.5cm×4.5cmへ縮小した。
以後、肉芽形成・創の縮小を図るため、洗浄後ワセリン・プロスタンディン軟膏の処置へ変更するとともに、排便時の洗浄も継続した。
食事は体重を減らす目的もあり、メイバランスぎゅっとミニ3本/日(600kcal/日)の提供から開始した。管理栄養士より、亜鉛が多く含まれるエンジョイアルギーナが褥瘡に良いと提案があり、朝・夕で提供した。理学療法士の介入も早期より行った。ベッド上リハビリから徐々にアップしていき、端座位保持、車椅子乗車ができるようになった。そして、リハビリ室でのリハビリやレクリエーションの参加ができるようになった。
ADL・活動量アップに伴い、入所42日目より、メイバランスぎゅっとミニからメイバランスブリックゼリーへアップしたが、噛む力がなく摂取困難であった。そのため、ペコパンダを使用して咀嚼力の向上を図った。徐々に噛む力がつき、メイバランスブリックゼリーが摂取できるようになった。入所137日目にはDESING-R:6点。創上部は治癒、下部1.3cm×0.5cmに縮小してきており、治癒に向け職員が一丸となり取り組んでいる。
【考察】
今回、2例の持ち込み褥瘡を治癒・縮小することができた。毎日の処置も大切であるが、その都度しっかりとアセスメントを行い、何が良いか検討ができた。また、他職種との情報共有・連携ができ、入所者にあった対応ができたことが褥瘡治癒につながったと考える。
【結語】
私たち看護師は、入所時最初に利用者と接し関わることが多い。事前情報があっても、実際は状態が変わっている場合も多い。そのため、自分たちの目で確認し情報把握をしていくことが大切である。また、他職種との情報共有・対応の統一ができるよう働きかける役割がある。今回褥瘡治癒に向け取り組んできたが、これからも夕霧職員はチーム一丸となって、いろいろな問題に取り組んでいきたい。
当施設は、基本型の老健で看取りのケアも積極的に行っている。そのため、亡くなるまで入所している利用者も多く、全身状態が悪くなると褥瘡発生に至るケースもある。今回褥瘡発生により、在宅介護が困難となり、入所に至った2例の持ち込み褥瘡について、良い結果が得られたので、その取り組みについて報告する。
【事例1】
N様 87歳 女性 認知症 糖尿病あり。入所時日常生活自立度C1 要介護度4。左大転子部に5cm×4cmの黒色の褥瘡あり。入所時のDESING-R:24点。中心部は厚く硬い黒色壊死があり、周囲は炎症がみられた。まずは壊死組織を取り除くため毎日洗浄し、壊死部はゲーベンクリーム、炎症部分はゲンタシン軟膏で処置を開始した。創部が浸軟してきたところでデブリードマンを計4回実施。肉芽の盛り上がりを図るためワセリン塗布し、湿潤環境を維持した。
食事は糖尿病食を全粥・副菜キザミの形態で提供していたが、全量摂取は難しく、噛みだまりができると口から出してしまう状態であった。管理栄養士と相談し、形態をミキサー食に変更したところ、全量摂取出来るようになった。
また、活動意欲の低下があったため、理学療法士を中心に週2回のレクリエーションを促したところ、楽しんで参加できるようになった。経過は良好で、徐々に肉芽が盛り上がり、入所51日目に治癒となった。
【事例2】
M様 86歳 女性 左坐骨部褥瘡感染にて体動不能となり、急性期病院へ緊急入院。入院中にデブリードマン施行。褥瘡感染、全身状態は改善したが、在宅介護が困難なため入院22日目に当施設へ入所となる。入所時の体重88.8kg BMI36.5 日常生活自立度C2 要介護度4。入院中にデブリードマン施行により創が上下にみられた。左坐骨創上部9cm×6.5cm、下部9cm×6.5cmの褥瘡があり、DESING-R:27点。前医の処置は、カデックス軟膏を塗布し、ガーゼを入れ込んでいた。創色はピンク色で創縁に一部黒色創がみられた。血流改善し清浄化を図るため、洗浄後フィブラストスプレー噴霧の処置を行った。しかし、水様便が頻回にあり創部へ便が入り込むという問題があった。創感染を起こさないため、排便時は毎回洗浄を行い、創部を清潔に保つよう介護職員へ依頼し実施してもらった。入所50日目にはDESING-R:15点。創上部は6.6cm×1.3cm、下部7.5cm×4.5cmへ縮小した。
以後、肉芽形成・創の縮小を図るため、洗浄後ワセリン・プロスタンディン軟膏の処置へ変更するとともに、排便時の洗浄も継続した。
食事は体重を減らす目的もあり、メイバランスぎゅっとミニ3本/日(600kcal/日)の提供から開始した。管理栄養士より、亜鉛が多く含まれるエンジョイアルギーナが褥瘡に良いと提案があり、朝・夕で提供した。理学療法士の介入も早期より行った。ベッド上リハビリから徐々にアップしていき、端座位保持、車椅子乗車ができるようになった。そして、リハビリ室でのリハビリやレクリエーションの参加ができるようになった。
ADL・活動量アップに伴い、入所42日目より、メイバランスぎゅっとミニからメイバランスブリックゼリーへアップしたが、噛む力がなく摂取困難であった。そのため、ペコパンダを使用して咀嚼力の向上を図った。徐々に噛む力がつき、メイバランスブリックゼリーが摂取できるようになった。入所137日目にはDESING-R:6点。創上部は治癒、下部1.3cm×0.5cmに縮小してきており、治癒に向け職員が一丸となり取り組んでいる。
【考察】
今回、2例の持ち込み褥瘡を治癒・縮小することができた。毎日の処置も大切であるが、その都度しっかりとアセスメントを行い、何が良いか検討ができた。また、他職種との情報共有・連携ができ、入所者にあった対応ができたことが褥瘡治癒につながったと考える。
【結語】
私たち看護師は、入所時最初に利用者と接し関わることが多い。事前情報があっても、実際は状態が変わっている場合も多い。そのため、自分たちの目で確認し情報把握をしていくことが大切である。また、他職種との情報共有・対応の統一ができるよう働きかける役割がある。今回褥瘡治癒に向け取り組んできたが、これからも夕霧職員はチーム一丸となって、いろいろな問題に取り組んでいきたい。