講演情報
[15-O-C005-06]センサーコール減少と転倒の関係性からみて考えること個別ケアの推進と事故防止についての考察
*澁谷 秀1、福山 夏美1、鈴木 孝明1 (1. 三重県 介護老人保健施設 きなん苑)
自施設は1998年の開設以来、利用者全員のケアをスタッフ全員で行い、従来型のケアを提供してきた。去年、利用者を尊重した個別ケアを提供することを目的に、フロアを2つに分けてハード面を整備し、職員配置の編成を行った。インシデントレポートより転倒件数を編成前後で比較した結果、センサーコールの使用は減ったが、転倒件数は増強しなかった。データ分析を検証し、背景について考察した結果を報告する。
【はじめに】
自施設は1998年の開設以来、40~50名のフロア利用者全員のケアをスタッフ全員で行い、従来型のケアを提供してきた。昨年秋、個別ケアを推進することを目的にハード面を調整し、フロアを疑似的に2つに分け、多職種チームの職員配置し編成を行った。去年秋の編成後のセンサーコール使用件数は減少するも、転倒件数は増加しなかった。
【目的】
個別ケアの推進は、その人らしい生活の実現につながるといわれている1)が、利用者本人への影響だけでなく、スタッフ自身の自信や安心感につながる可能性がある。センサーコール使用数が減った背景を探り、個別ケアを推進する中で変化したスタッフの気持ちを転倒予防の視点から検証、分析する。
【方法】
編成した月を基準に、前後7カ月間のセンサーコール使用件数の集計データと、インシデントレポートによる転倒件数をデータ化し比較分析する。担当スタッフで小グループディスカッションを行い、自分たちの変化について議論する。
【結果】
編成前後7カ月間では、編成前と比較するとセンサーコール使用数は減少し、転倒件数は大きな変化はなかった。また、ある1つのユニットではセンサーコールの使用が大幅に減少した。
このチームで議論した結果、センサーコールを安易に使用していたと振り返り、数多くのコール自体が負担になっていた事に気づいた。また、利用者の行動を制限するような環境は減らすべきという認識へと変化したため、利用者にあわせた環境整備を繰り返し行い、センサーコールの使用が減少した。
【考察】
個別ケアを推進する目的でハード面の調整を行った結果、ステーションを2つに分けることとなった。その結果、利用者への動線が短くなり、駆け付けるまでの時間が短くなった。また、物音や、利用者の気配も感じやすくもなった。
村井らは転倒予防策の一つとして、排泄・生活パターンの把握2)を指摘している。センサーコールを一度使用した後、解除に踏み切ることが出来ず長期に使用していたケースもあったが、利用者の活動リズムを把握することで、利用者により合った個別ケアを提供できるようになり、解除に至るケースがあった。
さらに、個別ケア推進のため、支援相談員とリハビリスタッフも担当制になり、転倒事故が発生した場合は、多職種が集まり速やかにカンファレンスを行うことが出来るようになった。カンファレンスを繰り返し、対応策や転倒予防策を講じることが出来るようになったことで、センサーコール使用解除につながったと考えられる。
【結論】
個別ケアの推進は、利用者の本人らしい生活支援だけでなく、事故防止の観点からも安全な環境づくりにつながると考えられ、これは利用者だけでなく、スタッフ自身の気づきの深化に繋がった。編成後は職員にとって移動動線が短縮しただけでなく、利用者の気配を感じやすくなり、目が届きやすくなった。また、情報共有だけでなく、多職種の関りが増えたことで固定概念を捨て、新たな取り組みを行う勇気が持てたのではないか。その結果、センサーコールを除去したことは、利用者に悪影響を及ぼすことなく、尊重したケアにつながったと言える。
【参考文献】
1)ユニットケアについて https://www.unit-care.or.jp/about-unitcare/
2)入院患者に対する転倒予防策13項目https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/60/1/60_1_50/_pdf/-char/ja
自施設は1998年の開設以来、40~50名のフロア利用者全員のケアをスタッフ全員で行い、従来型のケアを提供してきた。昨年秋、個別ケアを推進することを目的にハード面を調整し、フロアを疑似的に2つに分け、多職種チームの職員配置し編成を行った。去年秋の編成後のセンサーコール使用件数は減少するも、転倒件数は増加しなかった。
【目的】
個別ケアの推進は、その人らしい生活の実現につながるといわれている1)が、利用者本人への影響だけでなく、スタッフ自身の自信や安心感につながる可能性がある。センサーコール使用数が減った背景を探り、個別ケアを推進する中で変化したスタッフの気持ちを転倒予防の視点から検証、分析する。
【方法】
編成した月を基準に、前後7カ月間のセンサーコール使用件数の集計データと、インシデントレポートによる転倒件数をデータ化し比較分析する。担当スタッフで小グループディスカッションを行い、自分たちの変化について議論する。
【結果】
編成前後7カ月間では、編成前と比較するとセンサーコール使用数は減少し、転倒件数は大きな変化はなかった。また、ある1つのユニットではセンサーコールの使用が大幅に減少した。
このチームで議論した結果、センサーコールを安易に使用していたと振り返り、数多くのコール自体が負担になっていた事に気づいた。また、利用者の行動を制限するような環境は減らすべきという認識へと変化したため、利用者にあわせた環境整備を繰り返し行い、センサーコールの使用が減少した。
【考察】
個別ケアを推進する目的でハード面の調整を行った結果、ステーションを2つに分けることとなった。その結果、利用者への動線が短くなり、駆け付けるまでの時間が短くなった。また、物音や、利用者の気配も感じやすくもなった。
村井らは転倒予防策の一つとして、排泄・生活パターンの把握2)を指摘している。センサーコールを一度使用した後、解除に踏み切ることが出来ず長期に使用していたケースもあったが、利用者の活動リズムを把握することで、利用者により合った個別ケアを提供できるようになり、解除に至るケースがあった。
さらに、個別ケア推進のため、支援相談員とリハビリスタッフも担当制になり、転倒事故が発生した場合は、多職種が集まり速やかにカンファレンスを行うことが出来るようになった。カンファレンスを繰り返し、対応策や転倒予防策を講じることが出来るようになったことで、センサーコール使用解除につながったと考えられる。
【結論】
個別ケアの推進は、利用者の本人らしい生活支援だけでなく、事故防止の観点からも安全な環境づくりにつながると考えられ、これは利用者だけでなく、スタッフ自身の気づきの深化に繋がった。編成後は職員にとって移動動線が短縮しただけでなく、利用者の気配を感じやすくなり、目が届きやすくなった。また、情報共有だけでなく、多職種の関りが増えたことで固定概念を捨て、新たな取り組みを行う勇気が持てたのではないか。その結果、センサーコールを除去したことは、利用者に悪影響を及ぼすことなく、尊重したケアにつながったと言える。
【参考文献】
1)ユニットケアについて https://www.unit-care.or.jp/about-unitcare/
2)入院患者に対する転倒予防策13項目https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/60/1/60_1_50/_pdf/-char/ja