講演情報
[15-O-C005-07]認知症カフェ(なじみカフェ)の活動報告と今後の展望
*清水 美峰子1、山田 剛1、澤村 敦子1、松本 周二1 (1. 三重県 介護老人保健施設みえ川村老健)
当施設では、2022年12月から認知症カフェの運営を開始し、作業療法士として携わってきた。内容は、簡単な体操をした後に自己紹介から開始し、季節の話題などの回想法を実施している。約1年半経過した現在、参加者は約40名に増加し、好評である。運営は、専門職だけでなく地域住民や民生委員等のボランティアが主体であり、各々の力を集結し地域と連携しながらコミュニティ・エンパワメントをより推進している。
【はじめに】
現在の日本は超高齢社会となり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め認知症が多くの人にとって身近なものとなっている。四日市市では、2022年8月に「認知症フレンドリーなまち」の実現に向けて取り組むことを宣言する「認知症フレンドリー宣言」を行った。認知症の方と家族への支援の一つとして四日市市は、専門職が配置された法人等に運営を委託し、認知症カフェの設置をすすめている。
当施設は、地域のまちづくり協議会や民生委員、地域の包括支援センターから所在地区である常盤地区での認知症カフェの運営を打診された。そのため、2022年の12月から四日市市より委託され、常磐在宅介護支援センターの協力も得て、認知症カフェの運営を開始した。以下に現在までの活動を報告する。
【目的】
当施設で開催している認知症カフェ(以下なじみカフェ)の立ち上げから、作業療法士として携わってきた。現在までの取り組みや活動を報告し、今後の更なる発展に繋げていく。
【結果】
なじみカフェは、毎月第3土曜日の10時~12時まで当施設で開催している。初回は、当事者2名、家族1名、常磐地区まちづくり協議会委員や民生委員などのボランティアスタッフ、みえ川村老健職員、常磐在宅介護支援センター職員の15名で開催した。内容は、簡単な体操で心身をリラックスさせ、自己紹介から開始し季節の話題などを題材にして回想法を実施した。回想法は、誰もが関心を持てるテーマで会話を試みることで、人との交流を避けていた認知症の人が会話に入れるようになることや、昔のことを思い出して言葉にしたり、相手の話を聞いて刺激を受けたりすることで脳が活性化し、活動性・自発性・集中力の増加や自発語の増加が促され認知症の予防になると言われている。会話で疲れた時は、コーヒーや紅茶を飲みながら歓談して過ごす時間を設けた。また、所々で季節の歌を合唱するなど音楽療法も取り入れた。現在は、回想法など初回の内容を踏襲して運営を継続している。
毎回なじみカフェにボランティアで関わっている地域の民生委員が、見守り活動の中でサービスに繋がっていない認知症当事者・家族に対してアプローチをし、カフェへの参加を促してくれるようになり、会を重ねるごとに参加者が増加した。3回目の開催からは、家族相談を開始した。家族の不安や思い、葛藤や苦しみなどを話す場を当事者とは別で設けて、医療福祉専門職等との相談だけでなく、家族同士のピアカウンセリングが可能となるようにアプローチした。毎回なじみカフェの開催後は、カフェを運営しているスタッフで振り返りを実施し、その日の気づきや反省点、今後各々実施してみたいことを共有している。その1つに、2024年度4月から開始したミニ講座の開催がある。認知症をテーマにした講座を毎回実施し、当事者・家族・地域住民らにとって学び場、認知症に対しての情報を得る場所としての役割を担うように取り組んでいる。
約1年経た振り返り会では、参加者の気心が知れて顔なじみになってきた中で、「本人ミーティング」をしていきたいという意見があがった。本人ミーティングとは、「認知症の本人同士が集い、本人同士が自らの体験や希望、必要としていることを話し合い、これからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域の在り方などを一緒に話し合う場」である。「集って楽しい!」に加えて、本人だからこその気づきや意見を本人同士で集まり、それらを地域に伝えていく集まりである。今年度からは、回想法の場、家族相談の場、本人ミーティングの場を別に設けて実施できるように現在準備中である。
【考察】
認知症カフェの開始から約1年半経過した。開始当初は当事者・家族・運営スタッフ含めて15名からの開始であった。現在は、当事者が約7~8名、家族は数名、地域住民やスタッフ30名の約40名の参加者で実施している。なじみカフェの特徴としては、「カフェという概念を大切に誰もが居心地よく過ごせる場」をコンセプトに専門職だけでなく地域住民、民生委員等たくさんの常磐地区の住民が参加し、その思いを形にして運営をしてきた。毎回「来てよかった」と当事者や家族、地域住民の参加者には好評であり、楽しく集う場だけでなく、認知症への理解を深め肯定的に捉えることができるようになり、「認知症フレンドリーなまち四日市」への一助を担っていると考える。
なじみカフェの開催によって、介護保険サービスに繋がらなかった当事者や家族が、カフェで様々な情報を得て、必要な介護サービスを利用するようになった。実際になじみカフェに参加している当事者が、当施設の通所リハビリの利用へと繋がった事例がいくつかあったため、今後も情報を得る場としてだけでなく、専門職と繋がる場としての機能を担えるよう運営をしていく必要があると考える。
なじみカフェの運営は、専門職だけでなく、地域住民やボランティア主体で運営を実施している。様々な立場の人が運営に参加することで、地域の中で起こる様々な課題を住民自らが自分事として捉え,役割を持ち,自分にできることをしていくこと,そのためには,外部から足りないものを与えられる支援ではなく,自らの内にある真価に気づき高めていく個人のエンパワメントや,その 一人ひとりの力を集結して形成されるコミュニティ・エンパワメントが推進されたと考えられる。なじみカフェの更なる発展のために、今後はこのコミュニティ・エンパワメントがより推進されるように取り組んでいく必要があると考える。
【おわりに】
地域と連携しながらなじみカフェを運営してきた。今後は、様々な課題に対して作業療法士としてその人らしい生活の視点から認知症当事者、家族、関わる地域の在り方に働きかけていきたいと考える。
現在の日本は超高齢社会となり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め認知症が多くの人にとって身近なものとなっている。四日市市では、2022年8月に「認知症フレンドリーなまち」の実現に向けて取り組むことを宣言する「認知症フレンドリー宣言」を行った。認知症の方と家族への支援の一つとして四日市市は、専門職が配置された法人等に運営を委託し、認知症カフェの設置をすすめている。
当施設は、地域のまちづくり協議会や民生委員、地域の包括支援センターから所在地区である常盤地区での認知症カフェの運営を打診された。そのため、2022年の12月から四日市市より委託され、常磐在宅介護支援センターの協力も得て、認知症カフェの運営を開始した。以下に現在までの活動を報告する。
【目的】
当施設で開催している認知症カフェ(以下なじみカフェ)の立ち上げから、作業療法士として携わってきた。現在までの取り組みや活動を報告し、今後の更なる発展に繋げていく。
【結果】
なじみカフェは、毎月第3土曜日の10時~12時まで当施設で開催している。初回は、当事者2名、家族1名、常磐地区まちづくり協議会委員や民生委員などのボランティアスタッフ、みえ川村老健職員、常磐在宅介護支援センター職員の15名で開催した。内容は、簡単な体操で心身をリラックスさせ、自己紹介から開始し季節の話題などを題材にして回想法を実施した。回想法は、誰もが関心を持てるテーマで会話を試みることで、人との交流を避けていた認知症の人が会話に入れるようになることや、昔のことを思い出して言葉にしたり、相手の話を聞いて刺激を受けたりすることで脳が活性化し、活動性・自発性・集中力の増加や自発語の増加が促され認知症の予防になると言われている。会話で疲れた時は、コーヒーや紅茶を飲みながら歓談して過ごす時間を設けた。また、所々で季節の歌を合唱するなど音楽療法も取り入れた。現在は、回想法など初回の内容を踏襲して運営を継続している。
毎回なじみカフェにボランティアで関わっている地域の民生委員が、見守り活動の中でサービスに繋がっていない認知症当事者・家族に対してアプローチをし、カフェへの参加を促してくれるようになり、会を重ねるごとに参加者が増加した。3回目の開催からは、家族相談を開始した。家族の不安や思い、葛藤や苦しみなどを話す場を当事者とは別で設けて、医療福祉専門職等との相談だけでなく、家族同士のピアカウンセリングが可能となるようにアプローチした。毎回なじみカフェの開催後は、カフェを運営しているスタッフで振り返りを実施し、その日の気づきや反省点、今後各々実施してみたいことを共有している。その1つに、2024年度4月から開始したミニ講座の開催がある。認知症をテーマにした講座を毎回実施し、当事者・家族・地域住民らにとって学び場、認知症に対しての情報を得る場所としての役割を担うように取り組んでいる。
約1年経た振り返り会では、参加者の気心が知れて顔なじみになってきた中で、「本人ミーティング」をしていきたいという意見があがった。本人ミーティングとは、「認知症の本人同士が集い、本人同士が自らの体験や希望、必要としていることを話し合い、これからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域の在り方などを一緒に話し合う場」である。「集って楽しい!」に加えて、本人だからこその気づきや意見を本人同士で集まり、それらを地域に伝えていく集まりである。今年度からは、回想法の場、家族相談の場、本人ミーティングの場を別に設けて実施できるように現在準備中である。
【考察】
認知症カフェの開始から約1年半経過した。開始当初は当事者・家族・運営スタッフ含めて15名からの開始であった。現在は、当事者が約7~8名、家族は数名、地域住民やスタッフ30名の約40名の参加者で実施している。なじみカフェの特徴としては、「カフェという概念を大切に誰もが居心地よく過ごせる場」をコンセプトに専門職だけでなく地域住民、民生委員等たくさんの常磐地区の住民が参加し、その思いを形にして運営をしてきた。毎回「来てよかった」と当事者や家族、地域住民の参加者には好評であり、楽しく集う場だけでなく、認知症への理解を深め肯定的に捉えることができるようになり、「認知症フレンドリーなまち四日市」への一助を担っていると考える。
なじみカフェの開催によって、介護保険サービスに繋がらなかった当事者や家族が、カフェで様々な情報を得て、必要な介護サービスを利用するようになった。実際になじみカフェに参加している当事者が、当施設の通所リハビリの利用へと繋がった事例がいくつかあったため、今後も情報を得る場としてだけでなく、専門職と繋がる場としての機能を担えるよう運営をしていく必要があると考える。
なじみカフェの運営は、専門職だけでなく、地域住民やボランティア主体で運営を実施している。様々な立場の人が運営に参加することで、地域の中で起こる様々な課題を住民自らが自分事として捉え,役割を持ち,自分にできることをしていくこと,そのためには,外部から足りないものを与えられる支援ではなく,自らの内にある真価に気づき高めていく個人のエンパワメントや,その 一人ひとりの力を集結して形成されるコミュニティ・エンパワメントが推進されたと考えられる。なじみカフェの更なる発展のために、今後はこのコミュニティ・エンパワメントがより推進されるように取り組んでいく必要があると考える。
【おわりに】
地域と連携しながらなじみカフェを運営してきた。今後は、様々な課題に対して作業療法士としてその人らしい生活の視点から認知症当事者、家族、関わる地域の在り方に働きかけていきたいと考える。