講演情報
[15-O-H001-01]利用者の安眠を確保するための排泄介助の見直し
*渡辺 将太1、福島 雄大1、細野 範恵1 (1. 京都府 介護老人保健施設宇治徳洲苑)
睡眠は利用者の健康を管理する上で重要な要素である。
夜間に、定時の業務だからといって、パット交換の為、利用者に声掛けや布団をめくることで覚醒させてしまう。睡眠を妨げる行為に日々矛盾を感じていた。良質な睡眠を提供するために夜間のパット交換方法の改善策を講じ、職員に実施前後で意識調査を行った。
その意識調査結果からパット交換を見直し、睡眠や業務に改善が見られたため、結果を報告する。
夜間に、定時の業務だからといって、パット交換の為、利用者に声掛けや布団をめくることで覚醒させてしまう。睡眠を妨げる行為に日々矛盾を感じていた。良質な睡眠を提供するために夜間のパット交換方法の改善策を講じ、職員に実施前後で意識調査を行った。
その意識調査結果からパット交換を見直し、睡眠や業務に改善が見られたため、結果を報告する。
【はじめに】
当施設は開設10周年を迎え、超強化型を取得する100床フロアを有する介護老人保健施設である。年々利用者の要介護度は高くなっており、利用者の個別対応や身体介助量が増えている。なかでも排泄ケアが増加傾向にある。パット交換は寒い季節、明け方でも定時の業務だからと、利用者に声掛け布団をめくることで覚醒させてしまい、睡眠を妨げる行為に日々疑問を感じていた。良質な睡眠を提供する為に、夜間のパット交換の回数を減らす取り組みを行った結果、利用者の睡眠状況や業務に改善が見られたのでここに報告する。
【取り組み期間】
2024年3月~2024年6月
【対象】
オムツ交換者(3/22現在 夜間30名)
【目的】
・夜間のオムツ交換回数を減らす事で中途覚醒を防ぐ。
・夜間の睡眠を確保することによって日中の活動量を増やしQOLの向上につなげる。
・介護職員の業務改善を図り負担の軽減につなげる。
【改善策の設定と実施前の意識調査】
(1)2024年3月初旬、施設で使用する排泄用具メーカーのパンフレットのモデルケースを参考に使用する排泄用具を下記の様に設定した。
1)尿量が多く、夜間覚醒のある方(4名):「アテント Sケア夜1枚安心パット 12回吸収(吸収量1800cc)」を使用。合わせて、12回吸収パットを装着前に明るい環境で皮膚トラブルがないか、5時に寝具・寝衣が汚れてないかを夜勤介護士で確認し、記録を用いて他の職員と情報共有をした。
2)日中トイレ誘導、夜間オムツ着用の方(26名):「アテント Sケア夜1枚安心多いパット(吸収量900cc)」を使用。
3)パット交換の時間、回数変更
日中:現状3回(9時・13時・16時)→2回(9時と16時)に変更
夜間:現状4回(19時・23時・2時・5時)→2回(22時・5時)に変更
ただし、尿量の多い方:現状4回(19時・23時・2時・5時)→2回(19時・5時)(12回吸収パット使用)に変更
(2)令和6年3月22日、職員に「取り組み前のオムツ交換の現状について」のアンケート調査を行った。
アンケート結果(対象職員15名)
1)「現状のオムツ交換について」では、「不満」から「非常に満足」までの5段階評価を行い、「ふつう」と回答した職員が9名と一番多く、「やや不満」が4名、「不満」が2名であった。回答理由では交換回数が多く、見直したいといった意見もみられた。
2)「変更前のオムツ交換回数について」では、「苦痛である」・「苦痛でない」・「どちらでもない」の中で、「どちらでもない」と回答した職員が8名と多数であった。「苦痛である」理由についてはオムツ交換と他の業務を兼務する事で利用者対応が手薄になり、不安であるといった声が見られた。
3)「今後オムツ交換の回数を減らす事について」では、「賛成」・「反対」・「どちらでもない」の中で「「賛成」が10名と一番多かった。理由については、「利用者の睡眠状態改善ができる」「職員の負担軽減に繋がる」といった意見が多くみられた。否定的な意見では、「皮膚トラブルに繋がる」「排尿量が多く回数が減らせるか疑問」「職員本位」といった意見がみられた。
【実施後の意識調査及び結果】
令和6年6月21日、職員に「取り組んだ後のオムツ交換について」のアンケート調査を行った。
アンケート結果(対象職員17名)
1)「オムツ交換の時間を変更後、巡視時、利用者の睡眠状況はどう感じますか」に対しては、「時間を変更する前より、良く寝ている」と回答した職員は13名、「以前と変わりない」が1名、「非回答」が2名、「夜勤をしていない」が1名であった。具体的な感想として「オムツ交換の度に覚醒し、寝付けなかった利用者が朝まで中途覚醒がなくなった」という意見があった。
2)「変更後のオムツ交換の回数について」では、「変更後が良い」と答えた職員が11名で、残りの2割は「従来の回数が良い」との回答であった。「変更後が良い」理由として「利用者の睡眠の質を優先したい」「利用者対応に余裕を持ちたい」「業務負担軽減につながった」などの意見があった。従来の回数が良い理由として「オムツ交換回数を減らすと体位交換を忘れる事が増えた」との意見があった。
(結果)
日中の状況では、パット交換の回数が減少する事で勤務外に行われていた間接業務が勤務時間内に行うことができた。見守りを行う余裕もでき、事故・ヒヤリハットの防止に努めることができた。
また、レクリエーションの時間に職員の人数が確保でき、以前は簡単なレクリエーションで終わっていたが、ボールを使った競技やビンゴゲーム等、時間をかけて行うことができた。以前はレクリエーションの時間に居室で過ごされていた方が「今日のレクリエーションは何?」「レクリエーションが楽しみ」という声が聞かれるようになり日中の活動量を増やすことができた。
事前の意識調査で否定的な意見としてあった褥瘡発症者及び尿路感染症の発症人数は増えなかったものの、皮膚が弱い方を含む4名に皮膚トラブルが発生した。その方達は、通常のオムツ交換回数に戻し、看護師と協力し対策を考え実施した。
当初は12回吸収パットを使用する利用者は4名から始めたが、夜間よく休まれることが確認できたため対象者を11名に増やした。
【考察・まとめ】
パット交換の回数を減らす事による皮膚への影響が懸念されると意見があった。しかし、排泄用具の品質の向上やパットを適切に使用することで皮膚トラブルには繋がらず、交換の回数を減らすことが可能となった。夜間のパット交換により、利用者を中途覚醒する事も減り、安眠を確保することができたと考える。安眠の確保に加え、今回の取り組みで業務に空き時間が生まれた事で、レクリエーションの充実が図ることができた。これは利用者のQOL向上に繋がったと考える。また、現場で働く職員の満足度の上昇につながり、利用者にも良い影響を与えていると考える。今後も利用者の安眠を確保するため、様々な視点より見直しに取り組んでいきたい。
当施設は開設10周年を迎え、超強化型を取得する100床フロアを有する介護老人保健施設である。年々利用者の要介護度は高くなっており、利用者の個別対応や身体介助量が増えている。なかでも排泄ケアが増加傾向にある。パット交換は寒い季節、明け方でも定時の業務だからと、利用者に声掛け布団をめくることで覚醒させてしまい、睡眠を妨げる行為に日々疑問を感じていた。良質な睡眠を提供する為に、夜間のパット交換の回数を減らす取り組みを行った結果、利用者の睡眠状況や業務に改善が見られたのでここに報告する。
【取り組み期間】
2024年3月~2024年6月
【対象】
オムツ交換者(3/22現在 夜間30名)
【目的】
・夜間のオムツ交換回数を減らす事で中途覚醒を防ぐ。
・夜間の睡眠を確保することによって日中の活動量を増やしQOLの向上につなげる。
・介護職員の業務改善を図り負担の軽減につなげる。
【改善策の設定と実施前の意識調査】
(1)2024年3月初旬、施設で使用する排泄用具メーカーのパンフレットのモデルケースを参考に使用する排泄用具を下記の様に設定した。
1)尿量が多く、夜間覚醒のある方(4名):「アテント Sケア夜1枚安心パット 12回吸収(吸収量1800cc)」を使用。合わせて、12回吸収パットを装着前に明るい環境で皮膚トラブルがないか、5時に寝具・寝衣が汚れてないかを夜勤介護士で確認し、記録を用いて他の職員と情報共有をした。
2)日中トイレ誘導、夜間オムツ着用の方(26名):「アテント Sケア夜1枚安心多いパット(吸収量900cc)」を使用。
3)パット交換の時間、回数変更
日中:現状3回(9時・13時・16時)→2回(9時と16時)に変更
夜間:現状4回(19時・23時・2時・5時)→2回(22時・5時)に変更
ただし、尿量の多い方:現状4回(19時・23時・2時・5時)→2回(19時・5時)(12回吸収パット使用)に変更
(2)令和6年3月22日、職員に「取り組み前のオムツ交換の現状について」のアンケート調査を行った。
アンケート結果(対象職員15名)
1)「現状のオムツ交換について」では、「不満」から「非常に満足」までの5段階評価を行い、「ふつう」と回答した職員が9名と一番多く、「やや不満」が4名、「不満」が2名であった。回答理由では交換回数が多く、見直したいといった意見もみられた。
2)「変更前のオムツ交換回数について」では、「苦痛である」・「苦痛でない」・「どちらでもない」の中で、「どちらでもない」と回答した職員が8名と多数であった。「苦痛である」理由についてはオムツ交換と他の業務を兼務する事で利用者対応が手薄になり、不安であるといった声が見られた。
3)「今後オムツ交換の回数を減らす事について」では、「賛成」・「反対」・「どちらでもない」の中で「「賛成」が10名と一番多かった。理由については、「利用者の睡眠状態改善ができる」「職員の負担軽減に繋がる」といった意見が多くみられた。否定的な意見では、「皮膚トラブルに繋がる」「排尿量が多く回数が減らせるか疑問」「職員本位」といった意見がみられた。
【実施後の意識調査及び結果】
令和6年6月21日、職員に「取り組んだ後のオムツ交換について」のアンケート調査を行った。
アンケート結果(対象職員17名)
1)「オムツ交換の時間を変更後、巡視時、利用者の睡眠状況はどう感じますか」に対しては、「時間を変更する前より、良く寝ている」と回答した職員は13名、「以前と変わりない」が1名、「非回答」が2名、「夜勤をしていない」が1名であった。具体的な感想として「オムツ交換の度に覚醒し、寝付けなかった利用者が朝まで中途覚醒がなくなった」という意見があった。
2)「変更後のオムツ交換の回数について」では、「変更後が良い」と答えた職員が11名で、残りの2割は「従来の回数が良い」との回答であった。「変更後が良い」理由として「利用者の睡眠の質を優先したい」「利用者対応に余裕を持ちたい」「業務負担軽減につながった」などの意見があった。従来の回数が良い理由として「オムツ交換回数を減らすと体位交換を忘れる事が増えた」との意見があった。
(結果)
日中の状況では、パット交換の回数が減少する事で勤務外に行われていた間接業務が勤務時間内に行うことができた。見守りを行う余裕もでき、事故・ヒヤリハットの防止に努めることができた。
また、レクリエーションの時間に職員の人数が確保でき、以前は簡単なレクリエーションで終わっていたが、ボールを使った競技やビンゴゲーム等、時間をかけて行うことができた。以前はレクリエーションの時間に居室で過ごされていた方が「今日のレクリエーションは何?」「レクリエーションが楽しみ」という声が聞かれるようになり日中の活動量を増やすことができた。
事前の意識調査で否定的な意見としてあった褥瘡発症者及び尿路感染症の発症人数は増えなかったものの、皮膚が弱い方を含む4名に皮膚トラブルが発生した。その方達は、通常のオムツ交換回数に戻し、看護師と協力し対策を考え実施した。
当初は12回吸収パットを使用する利用者は4名から始めたが、夜間よく休まれることが確認できたため対象者を11名に増やした。
【考察・まとめ】
パット交換の回数を減らす事による皮膚への影響が懸念されると意見があった。しかし、排泄用具の品質の向上やパットを適切に使用することで皮膚トラブルには繋がらず、交換の回数を減らすことが可能となった。夜間のパット交換により、利用者を中途覚醒する事も減り、安眠を確保することができたと考える。安眠の確保に加え、今回の取り組みで業務に空き時間が生まれた事で、レクリエーションの充実が図ることができた。これは利用者のQOL向上に繋がったと考える。また、現場で働く職員の満足度の上昇につながり、利用者にも良い影響を与えていると考える。今後も利用者の安眠を確保するため、様々な視点より見直しに取り組んでいきたい。