講演情報

[15-O-H001-03]高機能パッド導入後の変化~コスト削減とケアの向上~

*柴田 寧々1 (1. 滋賀県 医療法人下坂クリニック介護老人保健施設琵琶)
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オムツのコストカットとコロナウイルスのクラスター発生時の対応を目的に、吸収量が多く肌に優しいパッドを新たに導入した。夜間のオムツ交換を2~3回から1回に減らし、翌朝交換、尿測を実施する。その結果、コストカットとクラスター発生時に役立てることができた。また、職員のアンケート結果からはオムツ交換の回数を減らすことで負担軽減、利用者の睡眠の質の向上に繋がったのではないかという意見が挙げられた。
【はじめに】これまで当施設の1日のオムツ交換の回数は4~5回。これが当たり前であるという認識から、ずっと変わることなくそのように定着していた。しかし近年物価高騰の影響から、排泄物品のコストカットと、施設でコロナウイルスクラスター発生時の対応を検討することとなった。以前より2か月に1度、発注実績についてサポートを依頼していたユニ・チャームに協力を仰ぐ。そこで、ユニ・チャームから高機能パッド「一晩中安心さらさらパッドSkinCondition」を使用し、オムツ交換の回数を減らすことでコストカット、クラスター発生時の感染拡大防止に繋げることができないかとの提案を受けた。初めはコストカットとクラスター発生時の対応のための高機能パッド導入だったが、取り組みを通して、それだけではなく様々なメリットも見えてきたので、その成果を報告する。【方法】夜間のオムツ交換を19時、23時、3時の3回交換と19時、3時の2回交換から、21時の1回交換のみに減らす。提案を受けて、「1回だけの交換で本当で朝まで持つのか?」という不安や「利用者さんのスキントラブルや不快感に繋がるのではないか?」という心配があった。そこで高機能パッドの性能や、オムツ交換の回数を減らすことで得られるメリットを職員に周知するため、ユニ・チャームにパッドについての勉強会を依頼し、理解を深める。その後対象者を尿量が多く夜間中途覚醒してしまう利用者2名、オムツ触りのある利用者1名と決めた。1週間尿測を行い、その後高機能パッドを使用し、夜間のオムツ交換を1回にしたことでの変化について職員にアンケートを実施する。【結果】取り組みの初めは吸収量が1500ccのパッドを使用していたが、尿測の結果から3名とも1000ccを超えることがなく、吸収量1000ccのパッドで対応できることがわかった。しかし漏れることがあり、職員のパッドの当て方に問題があるのではないかという仮説がたった。高機能パッドの効力を最大限に発揮するため、ユニ・チャームにオムツの当て方についての勉強会を依頼し、職員全員のパッドの当て方の統一を図る。その後、看護師に皮膚状態や排便コントロールの確認をしながら、対象者を徐々に増やしていった。アンケート結果からは、「オムツ交換時に中途覚醒することがなくなり、ぐっすり眠ることができた」「時間に余裕ができ、記録や自分の仕事が出来るようになった」「心の余裕もできコール対応を以前よりしっかりできるようになった」などのよい意見が多くみられた。一方、「発熱や尿路感染の原因になった可能性がある」「もともと皮膚トラブルがあった為、オムツ触りが改善されなかった」という意見もみられた。コスト面では、取り組み前より1日平均83円、1ヶ月で平均2573円のコストカットに成功した。【考察】今回の取り組みから、コストカットだけでなく、利用者の睡眠の質の向上や職員の負担軽減に繋げることができた。また、令和6年1月、当施設でもコロナウイルスクラスターが発生した。職員にも感染が広がったが、高機能パッドを使用し、感染部屋への訪床回数を減らすことで感染リスクが軽減し、少ない職員でも対応することができた。また、夜中のオムツ交換を行わなくてもよいことで、在宅で介護をする家族の介護負担が軽減でき、在宅復帰にも繋がるのではないかと老健ならではのメリットも見出すこともできた。しかし、1回交換が合わない利用者もおり、一概に高機能パッドを使用し回数を減らすことがよいとは言えない。利用者の状態を見極め、ひとりひとりに合ったケアを行うことが大切である。メリット、デメリットを理解した上で、夜間のオムツ交換の回数を1回にすることは利用者にとっても職員にとっても、また在宅で介護をする家族にとっても大きな利点があると考える。今回の取り組みを活かして、これからも定期的に勉強会を行い排泄ケアの向上を目指していきたい。