講演情報
[15-O-H001-05]快適ライフへの道~布パンツへの挑戦~
*柳川 順子1 (1. 神奈川県 なでしこの里リハビリひらつか)
汚染していない紙パンツを破棄していた事にスタッフが疑問を持ち、紙パンツへの不快感を示す利用者が居た為、排泄物品を見直した。排尿がパット内に収まっている方を対象に布パンツで対応できるのではないかと考えた。職員の意識改革と共に布パンツを試行したフロアでの取り組みについて報告する。
【はじめに】汚染していない紙パンツを破棄していた事にスタッフが疑問を持ち、紙パンツへの不快感を示す利用者が居た為、排泄物品を見直した。排尿がパット内に収まっている方を対象に布パンツで対応できるのではないかと考えた。職員の意識改革と共に布パンツを試行したフロアでの取り組みについて報告する。 【目的】・不要なランニングコストの削減・排尿がパット内に収まっている利用者を布パンツにしていく・利用者の状態に合わせた排泄物品を選定できるようにする・布パンツに対してのイメージ・不安感を取り除く【取り組みの内容】1 意識の統一意識の統一を図る為に、フロア会議にて、汚染していない紙パンツを破棄している現状を話し、不要な排泄物品を取り除く事を提案した。布パンツと聞くと、失禁が増加し更衣が増加するのではないかとスタッフの不安な様子が見られた為、布パンツに変更した時に予想できる良い点について話し合った。利用者は、紙の違和感・ムレの軽減に繋がるのではないか、また、失禁しないようにと排泄機能の維持に繋がるのではないかという意見が出た。また、施設としては、不要なランニングコストの削減に繋がるのではないかという意見が出た。また、排泄物品1枚の価格、吸収量をトイレ内に掲示し情報共有をした。2 対象者選出とルール決め次にユニットの排泄班が中心となり、布パンツへ変更できそうな方を選出し、布パンツとパットで5日間対応し、衣類までの失禁が見られない方を布パンツへ変更していく事に決定した。3 実施始めは、トイレ自立の方と、パンツチェックの方を対象に試行し、問題無く布パンツへ移行できた。布パンツと貼付パットで対応していたが、貼付パットに汚染が見られない方もいた為、布パンツのみで対応できる方が出てきた。次に、トイレ誘導の方の中に、排尿がパット内に収まっている方を対象に試行し、数名布パンツへ移行できた。布パンツで10名以上成功した方が出来た事により、職員のモチベーションは上がり、個別排泄への意識は高まっていた。この頃より、新規の入所者の排泄物品の選定の際に、布パンツを選択肢の1つに入れた事により、布パンツの使用者は増加していった。トイレ誘導の方に限らず、オムツ交換の方も対象に入れ試行した。臥床したままのパット交換は不慣れな為、ネットのサイトにて調べ方法を模索した。しかし、排便で更衣する方が出てきた際、紙パンツへ戻したらどうかという意見が出てきた。看護師に相談し、下剤の調整を依頼し、下剤の使用時1つ大きなパットを使用したり、紙おむつを装着したりと随時対応を変更し、改善していった。4 アンケート実施布パンツを試行してから1年経過した所で、布パンツにして利用者・スタッフにとって良い点・改善した方がいい点についてアンケートを実施した。良い点としては、・通気が良くなり、ムレが軽減した・臀部の発赤が軽減した・肌ざわりが良くなり肌への負担が軽減し、歩行がしやすくなったのではないかと感じるスタッフが多数いた。また、ゴミの削減・コストダウンに繋がった等の意見が出た。改善点としては、紙パンツ用のパットを使用している為、・フィット感が無くズレが多く見られる・更衣が増加し、利用者・スタッフ共に負担が増加した・ルールの他に布パンツのマニュアルがあった方がよいのではないかという意見が出た。5 マニュアルの作成布パンツのマニュアルを作成した。布パンツの対象者は、・トイレに座れる方・スキントラブルがある方・排尿が、紙パンツ・紙オムツ問わずパット内に排尿が収まっている方いずれかに該当している方とした。また、試行期間の5日間は、衣類まで失禁が見られていなかったが、その後衣類までの失禁が増加してきた為、ルールを変更した。2週間で4回(3日に1回計算)衣類までの失禁が見られた際、どのような形で漏れたのか詳しく記録に残していき、マニュアルに沿ってaアセスメント 失禁の状態・水分摂取量・使用物品が合っているかを確認 b立案 排泄時間の見直し・パットの選定をして対応策を立案する。c実施 2週間実施するd評価15日目の夜間帯21:00~職員3名で評価していく。このa~dを繰り返し実施しその方に合った個別排泄を模索していった。【結果】令和5年3月では布パンツの方が2名だったが、令和6年6月の時点で25名まで増やせた。通気が良くなった為、スキントラブルも徐々に減少してきている。利用者の中には、日中ずっと椅子に座っていた方が歩行されたり、オムツ交換だった方が、トイレ誘導の対象となり日中の活動性が上がった方が居た。スタッフは、排泄物品の選定をきっかけに個別排泄への意識の向上に繋がった。前年度よりコスト875117円のコスト削減に繋がった。【考察・まとめ】日中80%の方がトイレ使用している点とレンタル衣類の普及率が70%でレンタル衣類の中に布パンツがあった為、施行しやすい点が挙げられる。何より、スタッフの布パンツに移行できるなら挑戦しようとする姿勢が増やせた理由である。また、トイレ誘導の方は、紙パンツとパットで対応するという固定概念の払拭ができた。紙オムツが良い・紙パンツが良い・布パンツが良いという事では無く、その方に合った個別排泄物品を選択した結果が、布パンツだという事に辿り着いた。布パンツは選択肢の1つに過ぎなかった。