講演情報
[15-O-H001-06]「パンツDE退所」ジョイステイで進める『オム活』
*竹本 弥生1、柴田 祐美1 (1. 愛知県 老人保健施設ジョイステイ)
当初は「コスト削減」を目的としてスタートしたオムツ改善活動=『オム活』であるが、そもそも利用者の皆さまは「オムツ」でなくトイレ排泄をしたいはず。その為に、可能な限り「オムツ」を中止できるよう職員と利用者さまが一緒となって様々な取組みを実施。着脱しやすい布パンツの導入や、漏れが気になる方向けに「パッド」を最適化。更に移乗ロボットも導入。結果として「パンツで退所」&「コスト削減」されたので報告する。
【序文】
一度入所した日から
リハビリ続けた時もある
見知らぬ入所者
見知らぬ職員
在宅を叶える
パンツDE退所!
…これを知っている人は40代以上?わからない人は、40代以上の人に聞いてください
【はじめに】
老人保健施設ジョイステイでは、2018年度の介護報酬改定を機に「5ヶ年計画」を策定し、戦略的に老健の役割強化を推進してきた。2018年4月の「加算型」が同年6月には「強化型」となり、2019年10月には「超強化型」を獲得することができた。
一方で施設の経営は赤字運営が継続しており、2020年度からは方針の一つとして収支改善活動を掲げて、職員一丸となり活動を推進してきた。
今回、その活動の一つである「オム活=オムツ改善活動」について報告する。
【活動期間】
第1期:2020~2021年度(以下「取組み〔1〕〔2〕」)
第2期:2024年度~ (以下「取組み〔3〕」)
【現状把握】2020~2021年度
(1)2019年度以前は、どの方にどのオムツ・パッドを使用するかは、職員の経験値・個別の判断によって選択されており、職員毎に異なっているのが実情であった。
(2)当時の直近3年間のオムツのコストでは、2017年度〔4,110千円〕→2018年度〔4,540千円〕→2019年度〔4,990千円〕と、毎年10%程度の伸びが確認された。
※2017→2018年度:+10.5%、2018→2019年度:+9.9%
【取組み〔1〕】
(1)パッドの使用基準の策定
→常に最大の吸収量のパッドを「安心のため」に使用していたが、排泄量に応じたパッドの基準を策定した。
→実際に吸収量の調査を行い、最適化を図った。
(2)職員への周知
→どんな人(排尿量・頻度・サイズ等)にどのオムツ・パッドを使用するか、一覧表を作成した上で勉強会を開催し、職員への周知を図った。⇒添付図参照
【取組み〔2〕-1】考え方の転換
(1)職員の疑問:コスト削減活動の中で、利用者さまに対して「オムツの使用を前提としているが、それが本来の姿なのか」と考えるようになる。
(2)活動の転換:人間誰しもオムツでなく、トイレで排泄したいはず。その視点(利用者さま側に立って)を改めて考えて、「布パンツに変更し、トイレでの排泄」を活動の目的に転換した。
【取組み〔2〕-2】事前の準備
(1)布パンツに切り替え可能な人を選出した。
1)失禁回数が多くない方
2)昼夜オムツの方で、利用者さまご自身が「トイレでの排泄を希望」されている方
(2)布パンツは、他老健をベンチマークして、通気性・着脱のしやすさ等から「推奨品」を選定した。
(3)ご家族へ取り組み内容を説明し、同意をいただく。また「推奨品」をご紹介し、購入手続きも施設にて支援した。
(4)新規入所者の方には、受入時の説明に、オム活の説明を追加することで活動を拡大・標準化した。
(5)利用者さまの排泄動作能力を向上させるために、リハビリ職員と連携してトイレトレーニング体操を導入した。
【取組み〔2〕-3】環境整備
(1)トイレ介助回数が多くなるため、職員の工数捻出が必要となる。その為、2019年6月より導入していた「介護助手」の人数を増員した。
(2)トイレ介助には、ほとんどの事例で介助が2名必要であったため、1名での介助ができるよう移乗ロボットを2台導入した。
→利用者さまがトイレ介助を遠慮されないようとの考えもあった
【効果1】
(1)コスト削減:53万円/年
→オムツ・パッドの使用量の低減及び単価の低減
(2)布パンツの使用者(割合)の増加:+35ポイント(7%→42%)
→トイレでの排泄・皮膚トラブルの解消等の副次効果あり
(3)在宅復帰:64%(14名中9名が在宅等へ)※布パンツへの切り替え者で入院者除く
→トイレでの排泄が可能となり、ご家族の在宅復帰のご理解が推進
(4)在宅での支援
→推奨の布パンツを継続的に使用いただくよう退所時のカンファレンスに組み入れ
→移乗ロボットのレンタルを推奨することで、家庭内での排泄介助もスムーズに実施
【コロナ禍の状況】
(1)第1期の取組み後である、2022~2023年度中に施設内でクラスターが4回発生
→居室内隔離によってオムツの使用量が増加し、年間のコストが100万円近く増加した
(2)改めて、2024年度より「オム活」を再開
【取組み〔3〕】2024年度
(1)排泄の更なる自立に向けてパッドを変更
→マジックテープ式など、利用者さま自身で着脱が容易なパッドを導入した
(2)パッド交換の時間帯の見直し
→23時に実施していた定期交換を原則中止するために、就寝前には吸収量の多いパッドに変更した
【効果2】
(1)コスト低減:75万円/年(見込)
(2)職員の工数低減:45時間/月(見込)
→23時のパッド交換の回数が、1日18回が0回に減少(1回当り5分)
(3)利用者さまの安眠確保
→23時のパッド交換が無くなり、朝まで睡眠を継続できた
【考察・所感】
今回、オムツのコスト低減を目的とした活動を開始したが、利用者さまがトイレで排泄を行うことを目的に切替えた。その手段として、オムツやパッドの変更。更には布パンツの推奨品の選定や移乗ロボットの導入などを行った結果、オムツから布パンツへの切り替えが進み、排泄の自立につながった。更にはその結果によって在宅復帰が叶うという良いスパイラルが生まれた点は、老健の介護職としてとても良い経験となった。また布パンツへの切り替えによって、施設が負担しなければならないオムツの使用量の減少=コスト低減となり、結果的に当初の方針である収支改善も達成することとなった。
一度入所した日から
リハビリ続けた時もある
見知らぬ入所者
見知らぬ職員
在宅を叶える
パンツDE退所!
…これを知っている人は40代以上?わからない人は、40代以上の人に聞いてください
【はじめに】
老人保健施設ジョイステイでは、2018年度の介護報酬改定を機に「5ヶ年計画」を策定し、戦略的に老健の役割強化を推進してきた。2018年4月の「加算型」が同年6月には「強化型」となり、2019年10月には「超強化型」を獲得することができた。
一方で施設の経営は赤字運営が継続しており、2020年度からは方針の一つとして収支改善活動を掲げて、職員一丸となり活動を推進してきた。
今回、その活動の一つである「オム活=オムツ改善活動」について報告する。
【活動期間】
第1期:2020~2021年度(以下「取組み〔1〕〔2〕」)
第2期:2024年度~ (以下「取組み〔3〕」)
【現状把握】2020~2021年度
(1)2019年度以前は、どの方にどのオムツ・パッドを使用するかは、職員の経験値・個別の判断によって選択されており、職員毎に異なっているのが実情であった。
(2)当時の直近3年間のオムツのコストでは、2017年度〔4,110千円〕→2018年度〔4,540千円〕→2019年度〔4,990千円〕と、毎年10%程度の伸びが確認された。
※2017→2018年度:+10.5%、2018→2019年度:+9.9%
【取組み〔1〕】
(1)パッドの使用基準の策定
→常に最大の吸収量のパッドを「安心のため」に使用していたが、排泄量に応じたパッドの基準を策定した。
→実際に吸収量の調査を行い、最適化を図った。
(2)職員への周知
→どんな人(排尿量・頻度・サイズ等)にどのオムツ・パッドを使用するか、一覧表を作成した上で勉強会を開催し、職員への周知を図った。⇒添付図参照
【取組み〔2〕-1】考え方の転換
(1)職員の疑問:コスト削減活動の中で、利用者さまに対して「オムツの使用を前提としているが、それが本来の姿なのか」と考えるようになる。
(2)活動の転換:人間誰しもオムツでなく、トイレで排泄したいはず。その視点(利用者さま側に立って)を改めて考えて、「布パンツに変更し、トイレでの排泄」を活動の目的に転換した。
【取組み〔2〕-2】事前の準備
(1)布パンツに切り替え可能な人を選出した。
1)失禁回数が多くない方
2)昼夜オムツの方で、利用者さまご自身が「トイレでの排泄を希望」されている方
(2)布パンツは、他老健をベンチマークして、通気性・着脱のしやすさ等から「推奨品」を選定した。
(3)ご家族へ取り組み内容を説明し、同意をいただく。また「推奨品」をご紹介し、購入手続きも施設にて支援した。
(4)新規入所者の方には、受入時の説明に、オム活の説明を追加することで活動を拡大・標準化した。
(5)利用者さまの排泄動作能力を向上させるために、リハビリ職員と連携してトイレトレーニング体操を導入した。
【取組み〔2〕-3】環境整備
(1)トイレ介助回数が多くなるため、職員の工数捻出が必要となる。その為、2019年6月より導入していた「介護助手」の人数を増員した。
(2)トイレ介助には、ほとんどの事例で介助が2名必要であったため、1名での介助ができるよう移乗ロボットを2台導入した。
→利用者さまがトイレ介助を遠慮されないようとの考えもあった
【効果1】
(1)コスト削減:53万円/年
→オムツ・パッドの使用量の低減及び単価の低減
(2)布パンツの使用者(割合)の増加:+35ポイント(7%→42%)
→トイレでの排泄・皮膚トラブルの解消等の副次効果あり
(3)在宅復帰:64%(14名中9名が在宅等へ)※布パンツへの切り替え者で入院者除く
→トイレでの排泄が可能となり、ご家族の在宅復帰のご理解が推進
(4)在宅での支援
→推奨の布パンツを継続的に使用いただくよう退所時のカンファレンスに組み入れ
→移乗ロボットのレンタルを推奨することで、家庭内での排泄介助もスムーズに実施
【コロナ禍の状況】
(1)第1期の取組み後である、2022~2023年度中に施設内でクラスターが4回発生
→居室内隔離によってオムツの使用量が増加し、年間のコストが100万円近く増加した
(2)改めて、2024年度より「オム活」を再開
【取組み〔3〕】2024年度
(1)排泄の更なる自立に向けてパッドを変更
→マジックテープ式など、利用者さま自身で着脱が容易なパッドを導入した
(2)パッド交換の時間帯の見直し
→23時に実施していた定期交換を原則中止するために、就寝前には吸収量の多いパッドに変更した
【効果2】
(1)コスト低減:75万円/年(見込)
(2)職員の工数低減:45時間/月(見込)
→23時のパッド交換の回数が、1日18回が0回に減少(1回当り5分)
(3)利用者さまの安眠確保
→23時のパッド交換が無くなり、朝まで睡眠を継続できた
【考察・所感】
今回、オムツのコスト低減を目的とした活動を開始したが、利用者さまがトイレで排泄を行うことを目的に切替えた。その手段として、オムツやパッドの変更。更には布パンツの推奨品の選定や移乗ロボットの導入などを行った結果、オムツから布パンツへの切り替えが進み、排泄の自立につながった。更にはその結果によって在宅復帰が叶うという良いスパイラルが生まれた点は、老健の介護職としてとても良い経験となった。また布パンツへの切り替えによって、施設が負担しなければならないオムツの使用量の減少=コスト低減となり、結果的に当初の方針である収支改善も達成することとなった。