講演情報

[15-O-H002-01]専門的研修が排泄ケアに与える効果の量的・質的検証

*荒井 千浪1、佐藤 奈緒美2 (1. 岐阜県 介護老人保健施設それいゆ、2. (株)リブドゥコーポレーション)
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メーカーの講師派遣システムを活用した専門的研修の前後で、職員の排泄ケアの技術や意識の変化を検証した結果、排泄ケアの所要時間短縮や汚染率の減少とともに、自身の排泄ケアを客観視する姿勢が認められた。今後も利用者のQOL向上やサービスの効率化に繋がるよう、排泄ケアの学習や見直しを継続的に行っていきたい。
【はじめに】
排泄ケアとは、施設内で提供される介護サービスの中でも人間の「3大要求」に直接的に影響し、かつ人間としての尊厳に関与するため最大限の配慮が求められるものである。当施設では排泄委員会を設け、排泄ケアの質的・量的改善を以前より模索しているが、今回その一環として、メーカーの講師派遣システムを活用した研修(以下、研修)を行い、前後で職員の排泄ケアの技術や意識の変化を検証した。よってその結果をまとめ、若干の考察を加えて報告する。

【検証方法】
1)研修前後で、排泄ケアに関するアンケート(VAS方式)を実地し、職員の自己認識の変化や学習効果を検証。
2)研修前後でオムツ交換の所要時間を計測。職員1人当たりの排泄ケア処理時間を算出する事で、全調査期間中のオムツ交換に関する量的変化や学習効果を検証。※1調査期間は研修の前後3週間 ※2(所要時間÷交換対象者数)/従事職員数=職員1名当たりの排泄ケア処理時間 ※3但し、終了時刻-開始時刻=所要時間とした。
3)研修前後でのオムツ交換時の汚染件数を電子記録上からカウントし、汚染率を算出する事で、排泄ケアの質的変化や学習効果を検証。※1調査期間は同上 ※2(汚染レベル×汚染件数)/期間内の全オムツ交換件数=汚染率 ※3但し、シーツまでの汚染をLv3,衣類までをLv2、オムツまでをLv1とした。

【結果と考察】
1)アンケート結果から、VAS値は研修前より研修後が低値に変化した職員が多く、研修により自身の排泄ケアを否定的に捉え直している傾向がみられた。これは、研修で正しい知識が身につく事で、自身のケアを客観視した影響と考えられる。
2)タイムスタディの結果から、研修前後で排泄ケアの所要時間は利用者1人当たり平均で8.8秒、職員1人換算の平均処理時間では0.1秒短縮がみられた。これは業務の効率化を表すと共に、職員各自の排泄技術の向上を示唆しており、排泄ケアに要す時間を他のケアに割けるようになる事は、全体的な施設サービスの拡充にも繋がると考える。
3)研修前後で汚染率は17.58%から13.96%へと低下(3.62%減)しており、研修によりオムツ類が正しく装着されるようになった事でケアの質が改善し、利用者の不快感の軽減や夜間の安眠といったQOL向上にも役立つと考えられた。これはまた、職員の身体的・心理的ストレスや施設の経済的負担も減らす事に資する結果と考える。

【おわりに】
介護業界においても各種材料費や人件費高騰の波は深刻となってきているが、その中においてもサービスの質的・量的低下を招かず、利用者への影響を最低限に留める事が我々に求められる責務と言える。今後も今回の結果を教訓として、日頃から利用者に対するサービスの検証・見直しを図る事で、より良い施設サービスが提供できるよう努力していきたいと考える。最後に、本調査研究の要として研修にご協力頂きました(株)リブドゥコーポレーション様に、改めて謝辞を申し上げます。