講演情報
[15-O-H002-02]排泄ケア向上とコスト削減の両立へ向けて
*工藤 將文1、福岡 和美1 (1. 愛媛県 済生会今治老人保健施設希望の園)
近年の物価高の影響を受け、介護業界でも排泄コストが値上がりしており、施設・介護職員にとってメリットがあることは経費削減として、オムツ代のコストダウンではないかと考え、今回のテーマに取組むこととしました。「不快・不便・不衛生を感じさせない」をモットーに適切なオムツ選び、個人に合ったパット類の見直しを行い、チームで排泄ケアに取り組んだ結果、前年度より大幅にコスト削減に繋がったことを報告致します。
【背景】本研究の背景として介護業界は厳しい状況が続いており、直近の調査では介護施設の6割以上が赤字経営である。施設の主な収入源は介護報酬による為、経営努力による大幅な増収が難しい現実があり、施設職員が行うことが出来る経営的な努力の一つとして排泄ケアのコスト削減だと考え関連業者の協力を得て、今回のテーマに取り組むこととした。
【目的】物価高騰に伴いオムツにかかっているコストも年間100万円弱の増加が予想され、当園では入所部が2階50床、3階50床の計100床となっており、2022年度の年間納品金額が約615万であり大幅なコストカットが急務となった。目標設定としてオムツを含め排泄コストを2023年4月~2024年3月までの1年間で各階合わせて200万円減を目標として掲げ取り組むこととした。
【実施した取り組み・対策】最初に当施設での排泄コストに関する現状を把握することから始めた。
・オムツ1枚当たりの単価の把握→ユニ・チャーム社に資料請求⇒使用している全オムツの1枚当たり単価を算出
・年間オムツのコストの把握→事務所との連携⇒納品書を確認
・職員がオムツのコストを把握しているか→オムツのコスト一覧表を作成⇒一覧表を各オムツ関連の倉庫やオムツカートに掲示
現状把握を行った上で2023年度の取り組みとして大きく分けて下記の7項目を実施した。
1 同県松山市の老人保健施設を訪問し、パットの料金表や、月間の排泄コスト、オムツ交換の交換システムなど様々な情報提供をしていただき意見交換を行った。
2 コスト削減の意識付けに特化したメンバー(看護1名、リハビリ1名、介護員2名ずつ計6名で構成)を選定しチームを作り他スタッフへの意識付けを行った。
3 紙オムツは2022年度まではオムツ使用の全利用者様毎日1回朝のオムツ交換時に交換していたが、2023年度より入浴日(週2回)と汚染時のみの交換を行うこととした。陰部洗浄時には紙オムツの上に安価な吸収シートを敷き、その上で洗浄を行うことにより汚染の少ない紙オムツを、交換基準を作り継続して使用した。
4 各利用者様の排泄記録を「見える化」し、職員全体で情報共有し無駄を解消した。そうすることにより尿量が多い利用者様には尿測を行い一人一人に合った適切なパットの選定・変更を行った。
5 夕方のトイレ誘導時には昼用のパットから夜用のパットに変更しているが、昼用のパットに汚染がない時はナイロン袋に入れて名前を記入し、保管場所を作り翌朝以降再利用している。
6 ユニ・チャーム社に月1回の委員会に参加していただき、月々のコストや前月比などをレポートとして提示していただき改善の参考とし、レポートを他のスタッフに周知しやすい場所へ掲示して意識付けを行った。
【結果】2023年度より排泄コストの値上がりにより早急な改善が必要であったが取組みの結果・成果として2022年度は約615万円の排泄コストがかかっているのに対して2023年度は約453万円の排泄コストとなり、前年比との差額は約162万円となり大幅なコストダウンに成功している結果となった。目標値には及ばなかったものの、2023年度よりオムツの値上がりしたことを加味すれば年間200万円以上のコストダウンできている結果となった。
【まとめ・今後の課題】目標値には届かなかった要因の一つとして、コロナウィルスの蔓延により当施設も影響を受け隔離対応などの対応の結果、訪室回数を少なくするために一番コストのかかる大きなパットを継続して使わざるを得ない状況が起こったことが挙げられる。取り組みを始める前には「衛生面はどうなのか?」「夏場は臭いが出て不快な思いをするのではないか」など否定的な意見が多くスムーズに進まなかったが、オムツ指導を行い効果的なオムツの当て方を学び、尿測を行って適したオムツを当てることにより1サイズ小さいパットに移行することができた。それに伴いパット使用量が減り、納品金額にも表れたことにより、スタッフのコスト削減への意識が変わり「もう少し小さいパットでも大丈夫なのではないか」などの意見も飛び交うようになった。そうした他職種含めスタッフの協力があり今回の研究の成果として挙げることができた。オムツ、パットを選定と併せオムツ交換指導の場を設け、スタッフの技術向上を求めた結果、交換回数を減らさず現状の交換回数を維持できた。その過程の中で洗浄・保湿・保護を行うことによって皮膚トラブルを回避でき清潔を保つことができた。よって「不快・不便・不衛生」を感じさせない排泄ケアが実践できた。
今回の取組みで自分を含めスタッフのコスト削減に対する意識の低さを実感し、また意識付けの難しさを知った。取組み前まではオムツのコストカットなどほとんど頭になく、失禁などがないように大きめのパットを使い、使用時間が短く汚染の少ない紙オムツを破棄するということが多く見られていたが、取組みを行ってからは尿測に基づいたパットを使い、汚染のない紙オムツを再利用することを周知し徹底することができた。施設全体でサービスの質向上とコスト削減への両立に向けての対策に取組むなか、目標値に近いコストダウンに成功したことは、職員のモチベーション向上と意識改革につながった。
排泄ケアの更なる質の向上・充実とともにコスト削減の両立に向けて、今後も継続的に対策を検討、実施していき、効果の確認、評価を行っていきたい。コスト削減への定着化に向けて全職員への発信を継続させていき、排泄ケアの更なる充実に努めていきたい。
【目的】物価高騰に伴いオムツにかかっているコストも年間100万円弱の増加が予想され、当園では入所部が2階50床、3階50床の計100床となっており、2022年度の年間納品金額が約615万であり大幅なコストカットが急務となった。目標設定としてオムツを含め排泄コストを2023年4月~2024年3月までの1年間で各階合わせて200万円減を目標として掲げ取り組むこととした。
【実施した取り組み・対策】最初に当施設での排泄コストに関する現状を把握することから始めた。
・オムツ1枚当たりの単価の把握→ユニ・チャーム社に資料請求⇒使用している全オムツの1枚当たり単価を算出
・年間オムツのコストの把握→事務所との連携⇒納品書を確認
・職員がオムツのコストを把握しているか→オムツのコスト一覧表を作成⇒一覧表を各オムツ関連の倉庫やオムツカートに掲示
現状把握を行った上で2023年度の取り組みとして大きく分けて下記の7項目を実施した。
1 同県松山市の老人保健施設を訪問し、パットの料金表や、月間の排泄コスト、オムツ交換の交換システムなど様々な情報提供をしていただき意見交換を行った。
2 コスト削減の意識付けに特化したメンバー(看護1名、リハビリ1名、介護員2名ずつ計6名で構成)を選定しチームを作り他スタッフへの意識付けを行った。
3 紙オムツは2022年度まではオムツ使用の全利用者様毎日1回朝のオムツ交換時に交換していたが、2023年度より入浴日(週2回)と汚染時のみの交換を行うこととした。陰部洗浄時には紙オムツの上に安価な吸収シートを敷き、その上で洗浄を行うことにより汚染の少ない紙オムツを、交換基準を作り継続して使用した。
4 各利用者様の排泄記録を「見える化」し、職員全体で情報共有し無駄を解消した。そうすることにより尿量が多い利用者様には尿測を行い一人一人に合った適切なパットの選定・変更を行った。
5 夕方のトイレ誘導時には昼用のパットから夜用のパットに変更しているが、昼用のパットに汚染がない時はナイロン袋に入れて名前を記入し、保管場所を作り翌朝以降再利用している。
6 ユニ・チャーム社に月1回の委員会に参加していただき、月々のコストや前月比などをレポートとして提示していただき改善の参考とし、レポートを他のスタッフに周知しやすい場所へ掲示して意識付けを行った。
【結果】2023年度より排泄コストの値上がりにより早急な改善が必要であったが取組みの結果・成果として2022年度は約615万円の排泄コストがかかっているのに対して2023年度は約453万円の排泄コストとなり、前年比との差額は約162万円となり大幅なコストダウンに成功している結果となった。目標値には及ばなかったものの、2023年度よりオムツの値上がりしたことを加味すれば年間200万円以上のコストダウンできている結果となった。
【まとめ・今後の課題】目標値には届かなかった要因の一つとして、コロナウィルスの蔓延により当施設も影響を受け隔離対応などの対応の結果、訪室回数を少なくするために一番コストのかかる大きなパットを継続して使わざるを得ない状況が起こったことが挙げられる。取り組みを始める前には「衛生面はどうなのか?」「夏場は臭いが出て不快な思いをするのではないか」など否定的な意見が多くスムーズに進まなかったが、オムツ指導を行い効果的なオムツの当て方を学び、尿測を行って適したオムツを当てることにより1サイズ小さいパットに移行することができた。それに伴いパット使用量が減り、納品金額にも表れたことにより、スタッフのコスト削減への意識が変わり「もう少し小さいパットでも大丈夫なのではないか」などの意見も飛び交うようになった。そうした他職種含めスタッフの協力があり今回の研究の成果として挙げることができた。オムツ、パットを選定と併せオムツ交換指導の場を設け、スタッフの技術向上を求めた結果、交換回数を減らさず現状の交換回数を維持できた。その過程の中で洗浄・保湿・保護を行うことによって皮膚トラブルを回避でき清潔を保つことができた。よって「不快・不便・不衛生」を感じさせない排泄ケアが実践できた。
今回の取組みで自分を含めスタッフのコスト削減に対する意識の低さを実感し、また意識付けの難しさを知った。取組み前まではオムツのコストカットなどほとんど頭になく、失禁などがないように大きめのパットを使い、使用時間が短く汚染の少ない紙オムツを破棄するということが多く見られていたが、取組みを行ってからは尿測に基づいたパットを使い、汚染のない紙オムツを再利用することを周知し徹底することができた。施設全体でサービスの質向上とコスト削減への両立に向けての対策に取組むなか、目標値に近いコストダウンに成功したことは、職員のモチベーション向上と意識改革につながった。
排泄ケアの更なる質の向上・充実とともにコスト削減の両立に向けて、今後も継続的に対策を検討、実施していき、効果の確認、評価を行っていきたい。コスト削減への定着化に向けて全職員への発信を継続させていき、排泄ケアの更なる充実に努めていきたい。