講演情報
[15-O-H003-01]高齢者施設で薬剤を使わない自然排便をオリーブオイルを使った排便管理
*越前谷 綾子1、本間 ほの花1、吉野 奈美1、中川 ゆかり1 (1. 北海道 介護老人保健施設コミュニティホーム白石)
オリーブオイルには腸内の便の滑りを良くするという働きに注目し下剤や便処置の減少につなげることができるか取り組んだ。対象者は6名。1日1回昼食時に大さじ1杯15mlのオリーブオイルを摂取し、排便状況と便処置回数を確認。2名は便処置の回数が減少し効果が見られた。軟便傾向、定期的に排便のあった方は効果が見られなかった。便の性状や便処置の回数等を考慮し対象者を選択すれべ結果が変わったのではないかと考える。
【目的】排便管理のために下剤を使用している利用者は多い。だが、便秘傾向で追加の下剤や坐薬を使用する利用者、あるいは便秘を解消するために下剤を増やし今度は軟便や下痢が続く利用者等、下剤管理の難しさがあった。便秘の要因の一つに「便が硬い」事がある。オリーブオイルには腸内の滑りを良くするという働きがあり、下剤や便処置の減少につなげる事が出来るかを研究とした。【対象者】A様 女性 85歳/クモ膜下出血 認知症B様 女性 90歳/鼠経ヘルニア 高血圧症C様 男性 84歳/心原性小脳梗塞 糖尿病D様 女性 90歳/小脳梗塞 高血圧症E様 女性 93歳/認知症 糖尿病F様 女性 86歳/脳梗塞 膀胱炎【方法】・下剤使用中で便処置が多い利用者、下剤調整が難しく便秘・軟便を繰り返している利用者から対象を選択。・1日1回昼食時に15ml(大さじ1杯)のオリーブオイルを昼食にかけて摂取してもらう。・排泄チェック板から排便と便処置の回数を確認していく。実施期間 2023年 9月 1日~ 11月 30日【結果】 A様:8月排便12回、便処置5回。9月排便10回、便処置5回だったが10月には排便14回 便処置3回、11月便10回、処置2回と便処置回数が減っている。B様:7~8月の排便は7~8回で便処置5回だった。9月便7回便処置5回、10月便10回便処置3回だった。便処置回数が減り効果見られたが10/25退所となった。C様:7~8月の便回数は9~10回で便処置は行われず。便回数は9月11回、10月13回、11月9回。便処置は10月に1回実施。便処置に上がる事もあるが、元々排便があったのではないかとの意見がありオリーブオイルによる効果は分からなかった。D様:下剤調整を繰り返しているとの理由で研究対象となったが、軟便傾向だった。オリーブオイル使用の対象には向かず、本人の希望もあり10月1日から中止した。E様:8月便16回便処置4回。9月便16回便処置6回、10月便14回便処置2回、11月便15回便処置4回。便処置の回数に変化は見られず。F様:8/16に再入所。便が硬いとの理由で研究対象となる。8月の便5回便処置4回。9月便10回便処置2回、10月便9回便処置1回とそれなりに効果があったが、「オリーブオイルの味が無理」との理由で10/3で研究中止となった。その他:E様の体重が8月50.6kgから12月53.7kgと増加した。また糖尿病の利用者を対象にしてしまい、C様、E様のHbA1cが上昇している。本来、糖尿病や高脂血症の方は対象外とするべきだったところを見落としてしまい、病態に影響を与える結果となった。【考察】 B様、F様は便処置回数が減少し、効果が見られた。しかし軟便傾向の方や定期的に排便のあった方には効果が出なかった。便の性状や便処置の回数等を慎重に調べ対象者を選択すれば、結果が変わったのではないかと考える。また、疾患に影響が出た利用者もおり、疾患への影響も考慮すべきだった。オリーブオイル大さじ1(15cc)は思ったよりも量が多く高齢者にとっては摂取しにくい面もあった。カロリーも大さじ1で126kcalあり、オリーブオイルはヘルシーなものとの思い込みで事前の確認が不足していた。体重増加や血糖値の上昇につながった事も考えると食品をつかった排便管理の難しさがあると感じた。【まとめ】オリーブオイルを使用した事で便処置回数が減り、効果のあった利用者はいた。一方で事前の検討が不足し、実施に向かない利用者を選択してしまい、病態に影響を与えてしまった。高齢者は基礎疾患も多く、運動量も少ないため一度増えた体重を減らすのも難しい。排便には水分摂取、善玉菌を増やす、適度な運動と休息が必要と言われている。今後も下剤を使わない為のケアは何があるかを検討していけたらと考える。