講演情報

[15-O-H003-04]グリセリン浣腸の実施数減少にむけた取り組み

*水野 敬1、竹森 学1、西川 直輝1 (1. 和歌山県 介護老人保健施設和佐の里)
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入所者のグリセリン浣腸の実施数の減少に向けた取り組みを行ったので報告する。利用者の1日水分摂取量の目標を1Lとし、飲み物と乳酸菌含有の水分補給ゼリーを摂取するように取り組んだ。また医師と連携し、緩下剤の用法用量の変更をおこなった。その結果、取組実施前と比較し浣腸実施数の削減を行うことに成功した。浣腸の実施数を減少させたことは、看護師の業務負担の減少だけではなく利用者の苦痛を軽減できたと考える。
【はじめに】
加齢に伴い腸の動きが低下し、大腸が腸にとどまる時間が長くなることにより便が硬くなるといわれている。自施設でも同様で、下剤を服用後グリセリン浣腸(以降浣腸と略す)・摘便の実施は必須で、看護師の日勤業務の大きな負担となっていた。
 そこで、便秘の主な原因のひとつである水分摂取量に着目するとともに、医師と連携し緩下剤の用法用量を検討し、浣腸実施数の削減ができたので報告する。
【方法】
 認知症専門棟入所者40名を対象とし、水分摂取の現状把握を行った。毎食事お茶の準備はできているものの、配膳時に提供するのを忘れていたり、提供しても飲用を促せていなかったりという状況が散見された。さらに、午後のおやつの提供時間にも水分摂取を促せていないという状況であった。
 1日の水分摂取量を1L以上と目標設定し、毎食時と午前・午後の食間に必ずコップ1杯(約180ml)の水分を提供するよう介護職と連携し取り組んだ。さらに、昼食時に乳酸菌入りの水分補給ゼリーを1日1本(120ml)摂取していただき、腸内環境の改善も考慮した。
 医師とは、緩下剤内服の用法用量を検討した。検討前は、排便が3日なければ3日目の夕食時もしくは眠前にセンノシドを内服し翌日排便がなければ浣腸と摘便を行っていた。検討後は、排便がなければ3日目の朝にセンノシドを内服する。翌日まで排便がなければ再度センノシドを服用し、午後浣腸を実施するという対応とした。
【結果】
 取組前(令和6年3月1日~令和6年3月31日)の日曜日を除く26日間と、取組後(令和6年4月1日~令和6年4月30日)の日曜日を除く26日間を比較した。取組前は入所者約40名に対し、浣腸実施回数は延べ166回であった。1日の最多回数は11回、平均回数は6.38回であった。取組後は、入所者約40名に対し浣腸実施回数は延べ73回であった。1日最多回数は6回、平均回数は2.8回であり取組前と比較しかなりの減少となった。
【考察】
 便秘の主な原因の一つとして水分摂取不足がある。水分摂取不足から便の水分が減少すると、内容量の低下から腸管壁への刺激不足となり腸蠕動運動が低下し便秘傾向となる。便は大腸で水分が吸収されるため、便秘により大腸にとどまる時間が長くなるとさらに便の水分量が減少しその結果硬便となり排便困難になるという悪循環となる。
 今回の取り組みを通し十分な水分を摂取することと、センノシドの内服時期を早めたことで、便が大腸に滞留する時間が短くなり、硬便となることを防ぐことができた。水分を多く含んだ状態の軟らかい便により自然排便がうながされ、浣腸実施数の減少につながったと考える。また、便の性状が軟らかくなったことで、浣腸実施後の摘便が不要となり利用者の苦痛の軽減ができた。今回の取り組みは利用者の苦痛の軽減ができたと同時に看護師の日常業務の負担軽減にもつなげることができた。
【おわりに】
 今回の取り組みは、摘便時に利用者が発した「痛いよ、つらいよ」という言葉にハッとさせられたことがきっかけであった。その気づきにより、利用者の苦痛を軽減することができたと同時に看護師の業務負担の軽減にもつなげることができた。便秘に対するケアに関しては検討する余地がまだまだ残っている。多職種が連携できる老健だからこそ知恵を出し合い、自施設の状況にあった便秘に対するケアを創造していこうと考えている。また、認知症を患っている利用者が発する言葉のひとつひとつにも意味があるということを再認識しケアの質の向上に取り組んでいく。