講演情報
[15-O-H003-07]多職種で排泄状態の改善に向けた取り組みその人らしい生活の実現を目指して
*川本 裕幸1、田代 純也1 (1. 東京都 介護老人保健施設ライフサポートひなた)
排泄状態の改善を目的に多職種で連携し3つのアプローチを行った。ここでいう排泄の改善には2つの条件がある。(1)自己で排泄したことを認識し、他者の介助なく交換することができている状態(2)布パンツ(装着パットまで)その結果、排泄状態の改善の人数が増加した。今回の取り組みがその人らしい生活やスタッフの意識の向上につながったと考えられる。ここに取り組み内容について報告する。
【はじめに】
当施設は1階が通所フロア、2階と3階が各フロア28名の合計56名の介護老人保健施設ある。又、超強化型施設にも分類されている。健育会グループでは排泄状態の改善に向けて全施設で取り組みを行っている。
健育会グループでの排泄状態の改善の定義は以下の通りである。
(1)自己で排泄したことを認識し、他者の介助なく交換することができている状態
(2)布パンツ(パットを使用する場合は装着パットまで)
当施設でも排泄状態の改善に向けて取り組みは行っていたが、なかなか改善の人数が増えていない現状があった。そこで、多職種で連携し、3つの対策を考えてアプローチを行った。その結果、排泄状態改善の人数が増える結果となった。ここに取り組み内容について報告する。
【目的】
排泄状態の改善に向けて多職種で連携しアプローチを行う
【目標値】
2022年4月~2023年3月の期間での排泄状態改善の人数5名
今回の取り組みでは2023年4月~2024年3月の期間で排泄状態改善の人数12名を目指す
【方法】
1 対象 入所利用者
2 期間 2023年4月~2024年3月
3 方法
(1)入所時に介護スタッフより布パンツの依頼を行うシステムの構築
入所時に家族に布パンツへ移行のメリット3点を伝えて、布パンツの依頼を行う
1)肌トラブルの減少 2)快適性 3)その人らしい生活に向けて
(2)入所日より1週間はパット内の尿測の実施、排泄表を基に毎月のフロア会議で話し合いを行う
会議の際の検討内容としては【パットとアウターの見直し、トイレ誘導時間の見直し、トイレ動作(ズボン、パンツの上げ下ろし、汚れたパットを自身で交換できるか)】
(3)排泄の自立に向けたトイレ内の環境の見直し
リハビリスタッフと相談し、新しいパットや汚れたパットを入れるビニール袋の取りやすい位置の設定等を実施
【結果】
2023年4月~2024年3月 排泄状態の改善の人数 5名から17名 目標達成
方法(1)入所時に家族に布パンツへのメリットの説明を行うことで家族の理解も深まり、以前よりスムーズに布パンツへの移行ができるようになった。
方法(2)毎月のフロア会議にて排泄状態の改善に向けた課題を話し合うことで、適切な誘導時間やアウターとパットの選定を行えた。夜間に関しては、睡眠導入剤の関係もあるため、看護師と医師に相談を行いながら、トイレ誘導の時間を見直した。しかし、利用者が夜間の睡眠を優先する場合には、入眠を優先するケースもあった。
方法(3)新しいパットと汚れたパットを入れるビニール袋の置き場所を取りやすい位置に設定。車椅子の利用者でも安全に取れるように環境設定をすることで、自身の交換まで行える利用者が増えた。
(ケース1)
片麻痺で介助を要する利用者に対して、リハビリスタッフに相談しトイレの手すりの位置の検討及び、片麻痺でのズボンの上げ下げの方法について何度も訓練を実施。失禁もなく自身でトイレ動作行えた。排泄状態の改善へと達成。
(ケース2)
入所時より、排泄の動作は自立しているが、安心のためにリハビリパンツを使用していた。居室担当者より本人に布パンツに変更することのメリットを説明。その後、家族に布パンツ持参の依頼を行う。本人より「最初は不安だったけど、紙パンツより暑くもなくて気持ち良い。早く使ってれば良かった。」とクレームにつながることなく、排泄状態の改善へと達成。
(ケース3)
日中は自身でトイレに行かれており、排泄動作も自立している。夜間に関しては、日によって多量にパット内に失禁することもあり、なかなか排尿パターンを掴めず。又、睡眠導入剤も内服している。排泄状態の改善には変更できず。
【考察】
今回の取り組みを通じて、排泄状態の改善に向けたシステムを構築すること、多職種を交えて適切なアセスメントを実施しアプローチすることが大切であると感じた。実際に毎月のフロア会議で検討することでスタッフから積極的に意見を聞くことができており、スタッフの意識の向上にも繋がったのではないかと考えられる。山出貴宏らは「自立支援とは、その人の生活を支援するものであり、目の前の人の生活が少しでも豊かな状態を維持できるように、知識と介護技術を用いて望ましいかかわりを継続していくことが求められる」1)と述べている。誰しも排泄の世話をしてほしい人はいないと思う。利用者の生活が少しでも豊かな状態を維持して、その人らしい生活を過ごせるか。実際に利用者からも布パンツに変更して良かったとの声を聞くこともできており、今回の取り組みでは、その人らしい生活に向けたアプローチができたのではないかと考えられる。しかし、夜間の排泄に関しては改善にできないケースがあった。夜間の排泄に向けたアプローチは今後の課題である。
【まとめ】
3つの対策を講じてアプローチを行うことで、排泄状態の改善へと繋がった。今後も排泄状態の改善に向けた取り組みを継続していきたい。
【引用文献】
1)山出貴宏:介護職が知っておきたい「ほんとうの自立支援」がわかる本 P23 4~6行
当施設は1階が通所フロア、2階と3階が各フロア28名の合計56名の介護老人保健施設ある。又、超強化型施設にも分類されている。健育会グループでは排泄状態の改善に向けて全施設で取り組みを行っている。
健育会グループでの排泄状態の改善の定義は以下の通りである。
(1)自己で排泄したことを認識し、他者の介助なく交換することができている状態
(2)布パンツ(パットを使用する場合は装着パットまで)
当施設でも排泄状態の改善に向けて取り組みは行っていたが、なかなか改善の人数が増えていない現状があった。そこで、多職種で連携し、3つの対策を考えてアプローチを行った。その結果、排泄状態改善の人数が増える結果となった。ここに取り組み内容について報告する。
【目的】
排泄状態の改善に向けて多職種で連携しアプローチを行う
【目標値】
2022年4月~2023年3月の期間での排泄状態改善の人数5名
今回の取り組みでは2023年4月~2024年3月の期間で排泄状態改善の人数12名を目指す
【方法】
1 対象 入所利用者
2 期間 2023年4月~2024年3月
3 方法
(1)入所時に介護スタッフより布パンツの依頼を行うシステムの構築
入所時に家族に布パンツへ移行のメリット3点を伝えて、布パンツの依頼を行う
1)肌トラブルの減少 2)快適性 3)その人らしい生活に向けて
(2)入所日より1週間はパット内の尿測の実施、排泄表を基に毎月のフロア会議で話し合いを行う
会議の際の検討内容としては【パットとアウターの見直し、トイレ誘導時間の見直し、トイレ動作(ズボン、パンツの上げ下ろし、汚れたパットを自身で交換できるか)】
(3)排泄の自立に向けたトイレ内の環境の見直し
リハビリスタッフと相談し、新しいパットや汚れたパットを入れるビニール袋の取りやすい位置の設定等を実施
【結果】
2023年4月~2024年3月 排泄状態の改善の人数 5名から17名 目標達成
方法(1)入所時に家族に布パンツへのメリットの説明を行うことで家族の理解も深まり、以前よりスムーズに布パンツへの移行ができるようになった。
方法(2)毎月のフロア会議にて排泄状態の改善に向けた課題を話し合うことで、適切な誘導時間やアウターとパットの選定を行えた。夜間に関しては、睡眠導入剤の関係もあるため、看護師と医師に相談を行いながら、トイレ誘導の時間を見直した。しかし、利用者が夜間の睡眠を優先する場合には、入眠を優先するケースもあった。
方法(3)新しいパットと汚れたパットを入れるビニール袋の置き場所を取りやすい位置に設定。車椅子の利用者でも安全に取れるように環境設定をすることで、自身の交換まで行える利用者が増えた。
(ケース1)
片麻痺で介助を要する利用者に対して、リハビリスタッフに相談しトイレの手すりの位置の検討及び、片麻痺でのズボンの上げ下げの方法について何度も訓練を実施。失禁もなく自身でトイレ動作行えた。排泄状態の改善へと達成。
(ケース2)
入所時より、排泄の動作は自立しているが、安心のためにリハビリパンツを使用していた。居室担当者より本人に布パンツに変更することのメリットを説明。その後、家族に布パンツ持参の依頼を行う。本人より「最初は不安だったけど、紙パンツより暑くもなくて気持ち良い。早く使ってれば良かった。」とクレームにつながることなく、排泄状態の改善へと達成。
(ケース3)
日中は自身でトイレに行かれており、排泄動作も自立している。夜間に関しては、日によって多量にパット内に失禁することもあり、なかなか排尿パターンを掴めず。又、睡眠導入剤も内服している。排泄状態の改善には変更できず。
【考察】
今回の取り組みを通じて、排泄状態の改善に向けたシステムを構築すること、多職種を交えて適切なアセスメントを実施しアプローチすることが大切であると感じた。実際に毎月のフロア会議で検討することでスタッフから積極的に意見を聞くことができており、スタッフの意識の向上にも繋がったのではないかと考えられる。山出貴宏らは「自立支援とは、その人の生活を支援するものであり、目の前の人の生活が少しでも豊かな状態を維持できるように、知識と介護技術を用いて望ましいかかわりを継続していくことが求められる」1)と述べている。誰しも排泄の世話をしてほしい人はいないと思う。利用者の生活が少しでも豊かな状態を維持して、その人らしい生活を過ごせるか。実際に利用者からも布パンツに変更して良かったとの声を聞くこともできており、今回の取り組みでは、その人らしい生活に向けたアプローチができたのではないかと考えられる。しかし、夜間の排泄に関しては改善にできないケースがあった。夜間の排泄に向けたアプローチは今後の課題である。
【まとめ】
3つの対策を講じてアプローチを行うことで、排泄状態の改善へと繋がった。今後も排泄状態の改善に向けた取り組みを継続していきたい。
【引用文献】
1)山出貴宏:介護職が知っておきたい「ほんとうの自立支援」がわかる本 P23 4~6行